ストリートピアノ その日、僕たちはシティの隣にある大きな街を訪れていた。中央市街にある大型のドーム施設で、アマチュア向けのデュエル大会が行われるのである。どうやらそれなりに由緒がある大会らしく、賞金も地域の小規模大会とは桁違いだった。こうしたお金も僕たちの貴重な収入源だから、わざわざ電車で出向くことにしたのである。
目的の街までは、電車を乗り継いで一時間ほどの距離だった。大会は朝早くから始まるから、僕たちは前日から泊まり込むことにした。ルチアーノのワープ機能を使えば一瞬なのだけれど、それだとあまりにも風情が無いと思ったのだ。それに、こうした小さなお出かけだって、僕たちにとっては貴重なデートの機会なのだ。
そんなこんなで、大会前日のお昼過ぎに、僕たちは隣街を目指して出発した。片手に大きなキャリーケースを引きずりながら、繁華街の人混みを掻き分けて駅へと向かう。看板を見て行き先を確認すると、ルチアーノの手を引きながら電車に乗った。手を繋いだまま車内を歩く僕を見て、彼は不満そうに鼻を鳴らす。
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