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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。香水に興味のあるルチの話。ルチの好物に香水が入ってるって話は好きなので何度もします。

    ##TF主ルチ

    香水 ずしりと重い袋を受け取ると、僕はその店舗の外に出た。袋の中には、スポーツ用の軽食やサプリメントが入っている。定番のプロテインやゼリー飲料に、羊羮やバーのようなものまである。僕には分からないサプリメントの袋まで、ルチアーノは籠の中に入れていた。
     袋を両手で持つと、僕は通路の中央にある椅子に向かった。別の店舗の紙袋にビニール袋を入れると、倒れないようにバランスを取りながら椅子の上に立てる。受け取ったばかりの袋を置く僕に、ルチアーノが怪訝そうに眉をしかめた。
    「どうしたんだよ」
    「トイレに行きたいから、これを見ててくれない?」
     僕の答えを聞いて、彼は納得したような顔をする。僕と行動するようになってしばらく経つが、彼は排泄という概念がよく分かっていないらしい。理屈では理解できても、実際の感覚が分からないのだろう。
    「ああ、排泄か。とっとと済ませろよ」
     乱暴な口調で答えると、ソファの上に腰を下ろす。どかりと重そうな音がして、表面のクッションが深く沈んだ。
     ルチアーノに背を向けると、僕は小走りでトイレを探した。別に急いでいる訳ではないが、早く戻らないとルチアーノの機嫌が悪くなるのである。彼の前世にあたる人物が街で両親を失っているから、彼も心配でたまらないのだろう。あまり心配ばかりさせるのもかわいそうだから、できるだけ早く戻ることにしていた。
     そうは思うものの、僕は迷子になっていた。ショッピングモールは広いから、すぐには場所が分からなかったのだ。天井から吊るされた看板を頼りに、モール内をくるくると回る。
     用を済ませて戻る頃には、かなり時間が過ぎてしまった。小走りに人の間をすり抜けて、荷物を置いていたソファの方に戻る。
     ようやくたどり着いた時、そこにルチアーノの姿はなかった。周囲を見渡すが、それらしき人影はどこにも見当たらない。背筋に冷や汗が走った。
    「ルチアーノ?」
     小さな声で呼びながら、僕はショッピングモールを歩き出す。いったい、彼はどこに行ってしまったのだろう。僕が帰ってこないことを心配して、探そうとしているのかもしれない。それとも、しびれを切らして帰ってしまったのだろうか。彼の感情が分からないことが、僕の不安を加速させる。
     しばらく探し回ると、赤と白の後ろ姿が見えた。真っ直ぐに伸ばされた長い髪が、後でひとつにまとめられている。決して見間違えることのない、ルチアーノの後ろ姿だった。
    「ルチ…………」
     声をかけようとして、僕はふと足を止める。彼が立っていたのは、香水を販売する店舗の前だったのだ。僕の預けた紙袋を抱えたまま、ガラスケースの奥を見つめている。そこには、おしゃれな小瓶に詰められた香水が並んでいた。
     僕は店内を見渡した。ガラスケース以外にも、箱に収められた香水が並んでいる。男性向けのものらしく、パッケージはシンプルでシックだった。ひとつを手に取ると、ひっくり返して値段を見た。ケースの外のものはそこまでお高くはないようで、二千円ほどのシールが貼られていた。
     箱を戻していると、不意にルチアーノが振り向いた。僕を視界に捉えると、表情を変えずに近づいてくる。感情が読めなくて、僕の背筋に緊張が走った。
    「遅かったな。ずいぶん待ったぜ」
     淡々とした口調で、ルチアーノは僕に言葉を告げる。うっすらと笑みを浮かべているところを見ると、怒っている訳ではなさそうだった。小さく息をついてから、彼に向かって笑いかける。
    「ごめんね。トイレの場所が分からなくて、ちょっと探してたんだ」
    「全然帰ってこないから、忘れられたのかと思ったぜ。ほら、行くぞ」
     何事もなかったかのように僕の手を取ると、お店の外へと出ていく。あんなに真剣に見ていたのに、香水のこの字も告げなかった。不思議に思って、ついつい質問を投げかけてしまう。
    「あのさ、香水、見なくてよかったの?」
     僕の言葉を聞くと、彼はあからさまに足を止めた。くるりとこちらを振り返ると、ちょっとだけ不機嫌そうに言った。
    「あんなの、暇潰しに見てただけだぜ。香水なんて持ってても、何の役にも立たないからな」
     そう言う彼の仕草に、少し違和感を感じた。何がと聞かれたら上手く答えられないが、様子が変であるように感じたのである。彼と一緒の時を過ごしてきた僕だから分かる、些細で確かな変化だった。
    「本当は、気になってるんでしょ? 大丈夫だよ。秘密にしたいなら、誰にも言わないから」
     僕が言うと、彼は恥ずかしそうに頬を染めた。やっぱり、香水が気になっていたようである。僕の勘も鋭くなったものだと、自分で自分を褒めたかった。
    「誰にも言うなよ」
     道を戻ると、再びガラスケースを覗きこんだ。その姿に釣られて、僕もケースの中を覗き込む。そこには、見慣れない小瓶と箱がずらりと並んでいた。
    「ひとつ、買ってあげようか?」
     彼の様子を見ていたら、不意にそんな言葉が零れていた。香水は大体五千円くらいで、買えない価格ではない。何よりも、彼が興味を示したものというのが気になったのだ。
    「香水をプレゼントするつもりか? どんだけキザなんだよ」
     呆れたように言いながらも、彼はガラスケースを一瞥する。目ぼしいものを見つけたのか、指先でその中のひとつを指差した。
    「これがいいの?」
     尋ねると、恥ずかしそうに頷く。なぜだか知らないが、香水を買うことを恥ずかしく思っているらしい。不思議に思いながらも、僕はレジに取り付けられた呼び出しボタンを押した。
     数分の間を置いてから、店員らしき男性が走ってくる。ガラスケースの中を指差すと、ルチアーノの選んだ香水を伝えた。
     袋に包まれた箱を受け取ると、隣のルチアーノに手渡す。箱を受け取る間も、彼は顔を伏せたままだった。借りてきた猫のように大人しい姿に、少し違和感を感じてしまう。
    「それにしても意外だったな。ルチアーノが香水に興味があったなんて」
     ショッピングモールからの帰り道に、僕はそんなことを呟いた。隣を歩いていたルチアーノが、びくりと身体を震わせる。鋭い瞳で僕を見上げると、怒ったように言った。
    「だから、言いたく無かったんだよ!」
     突然の怒りに、僕は大きく目を開いた。彼がそんな反応をするとは、少しも思わなかったのだ。びっくりして、ついつい足が止まってしまう。
    「どうしたの……?」
     尋ねると、彼は恥ずかしそうに下を向いた。感情的になってしまったことに、言い様の無い恥ずかしさを感じたのだろう。
    「だから、言うつもりは無かったんだよ。香水が好きなんて言ったら、君に子供っぽいと思われるだろ。そんなのは嫌だったんだ」
     ぽつぽつと言葉を紡ぐように、ルチアーノは語る。彼の言葉の真意は、僕にはよく分からなかった。香水を好きなことが、どうして子供っぽいことになるのだろう。どちらかと言うと、大人びているように感じるのだが。
    「どうしてそう思うの? 香水が好きなんて、大人っぽいって思うけどな」
     そんな能天気な言葉が気に入らなかったのか、ルチアーノは鋭い瞳で僕を見た。苛立ったような声色で言葉を続ける。
    「だからだよ。大人びたものが好きなんて言ったら、背伸びしてるって思われるだろ。それが嫌だったんだ」
     彼の言葉を聞いて、ようやく僕は納得する。ルチアーノは、そんなことを考えていたのだ。子供の外見をしているからこそ、子供らしく見られることを気にしてしまうのだろう。
    「僕は、そんなこと気にしないよ。ルチアーノが子供じゃないことは、僕が一番よく分かってるから。僕の前では、素のままの姿を見せてほしい」
     そう言うと、彼は恥ずかしそうに顔を伏せた。横から覗き込むと、頬がほんのりと染まっているのが見える。怒らせてしまったかと思ったが、そうではないようだった。
    「こんな人前で、恥ずかしいこと言うなよ」
     照れたように顔を伏せながら、ルチアーノはそんなことを言う。その姿の方が、さっきの言葉よりも子供っぽく見えた。
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