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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。TF主くんが遊星に頼まれて大会に出場する話であり、ルチがそれに対して嫉妬する話です。

    ##TF主ルチ

    誘い「お前に、頼みがあるんだ」
     僕の姿を見つけると、遊星は開口一番にそう言った。彼にしては珍しい、少し緊迫した様子である。不思議に思いながらも、僕はいつものように返事をした。
    「どうしたの?」
    「牛尾さんに頼まれて、来週の大会に出ることになったんだが、タッグの相手が怪我をしたらしいんだ。予定が無ければ、俺のタッグパートナーになってほしい」
     遊星の言葉に、僕は表情が引き締まった。牛尾さんの頼みということは、闇のカードに関わる何かだろう。声を潜めると、僕は遊星に尋ねた。
    「それって、もしかして、闇のカード絡みなの?」
    「そうだ。シティの大会で、闇のカードを使っているチームがいると言われていてな。俺が参加して確かめることになったんだ」
    「そうなんだ」
     WRGPが近づいて、町には闇のカードの噂が広がるようになった。ゴースト事件とは別に、闇のカードというものが出回っているらしいのだ。ルチアーノの話によると、アルカディア・ムーブメントという組織が、闇のカードを町へと広めているらしい。日々巻き起こる事件の対処に、遊星たちは追われているのだ。
     幸い、その日に用事は入っていなかった。ルチアーノも忙しいようで、今週はあまり顔を出せないと言っている。ちょうどいい機会だと思った。
    「分かったよ。僕も協力する」
     答えると、彼は安心したように表情を緩めた。真っ直ぐに僕を見つめると、こちらも真っ直ぐな言葉でお礼を言う。
    「ありがとう」
    「気にしないで。困った時はお互い様だから」
     遊星はいつもこうなのだ。誰に対しても真っ直ぐで、真剣に言葉を交わす。その眼差しで何人の女の子が恋に落ちているのかを、彼は全く知らないのだろう。
    「それで、重ねて頼みがあるんだが」
     そんな事を考えていたら、遊星が言葉を続けた。少し言いづらそうな様子で、こちらの様子を窺っている。言葉の先を促すように、僕の方から尋ねた。
    「どうしたの?」
    「ルチアーノ……いや、イリアステルには、この事を言わないでくれないか」
    「えっ」
     唐突の言葉に、僕は驚きの声を上げてしまう。しかし、考えてみれば当然だ。遊星たちにとっては、ルチアーノは敵対する組織のメンバーなのだから。
    「牛尾は、この事件にイリアステルが関わってるんじゃないかと疑っているんだ。お前を通じて知られてしまったら、対策をとられてしまう可能性がある。お前のパートナーには悪いが、聞き入れてほしい」
    「分かったよ。隠しきれるか分からないけど、気を付ける」
     答えながらも、僕は心配になっていた。ルチアーノは人知を越えた力を持っていて、遠隔で僕の様子を見ることができるのだ。気づかれてしまってもおかしくはない。
    「ありがとう。助かる」
     真っ直ぐに僕を見たまま、遊星はお礼を言う。去っていく彼の後ろ姿を眺めながら、僕は少し不安になった。

     翌日のお昼頃、僕はポッポタイムを目指していた。今日から大会までの三日間は、遊星と二人でタッグデュエルの練習をする事になったのである。かつては一緒に行動していた僕たちも、ルチアーノとタッグを組むようになってからはあまりデュエルをしていなかった。大会当日を迎える前に、お互いのペースを知っておく必要があると思ったのだ。
    「やあ、○○○」
     噴水広場の近くを通りかかったとき、背後から声をかけられた。振り向くと、白い布に身を包んだルチアーノが、真っ直ぐに僕を見つめている。口元は楽しそうににやりと歪んでいた。
    「今日は、少し時間ができたんだ。一緒に遊びに行こうぜ」
     どうやら、いつものお誘いみたいだった。仕事で忙しい日が続いていても、彼は時間を見つけて僕に会いに来てくれるのだ。以前には見られなかった、彼の変化である。
     いつもなら嬉しいお誘いも、今日は少し困ってしまった。これから、僕は遊星とデュエルをするのである。遊星からは口止めをされているから、真実を悟られないようにかわす必要があった。
    「ごめんね。今日からしばらくは、午後に用事が入ってるんだ。遊ぶのはまた今度でいい?」
     窺うように返すと、ルチアーノは退屈そうに表情を崩した。呆れたような、物珍しそうな顔をすると、不機嫌そうな声色で言う。
    「何だよ。僕の誘いを断るのか? つまんねーな」
    「ごめん。この埋め合わせは絶対するから」
     身体の前で両手を合わせると、僕はそそくさと彼の前を立ち去る。隠し事に気付かれないかと、心臓がドキドキしていた。

     遊星は、屋内のデュエルコートを予約していた。とは言っても、僕のためではなく、本来のパートナーと組んでいる時から枠を取っていたらしい。その人も、牛尾さんの知り合いで治安維持局の関係者なのだという。
    「お前が来てくれて、本当に助かった。ジャックとクロウには頼めなかったからな」
     デュエルディスクを装着する僕を見て、遊星は何度目かのお礼を言った。気にしなくていいと言っても、彼は何度も感謝を伝えるのだ。彼がこの町で親しまれている理由が、そこに凝縮されている気がした。
    「気にしないで。闇のカードの回収は、僕たちにとっても優先したいことだから」
     それは、僕の嘘偽りない本心である。ルチアーノにとっても、イリアステルのものではない闇のカードが出回っているのはデメリットにしかならないのだ。大会が近づいた今、計画を妨害されることだけは、何よりも避けたいようだった。
     遊星との練習は、何事もなく終わった。道を違えてからしばらく経ってはいるものの、彼は今までと同じように僕に接し、僕を信頼してくれるのだ。彼にとって、僕やルチアーノは対立する組織のメンバーではあるものの、絶対的な悪には当たらないらしい。彼の公平な判断が、今ではありがたかった。
     夕方までみっちり練習すると、商店街で買い物をしてから家に帰った。外はすっかり日が暮れてしまっていたし、身体もへとへとだ。これから自炊をする元気など、少しも残っていなかったのだ。
     自宅が見える場所まで近づくと、リビングに明かりがついてないかを確認する。ルチアーノと半同棲状態の生活を送るようになって、いつの間にかこの癖がついてしまったのだ。今日も恋人の姿が無いと知ると、少し気持ちが重くなる。
     ルチアーノのいない自宅は、妙に広くて静かに感じた。あの尊大にさえ感じる座り方や、耳をつんざくような笑い声が、恋しく感じて仕方が無いのだ。たった数日会えないだけなのに、何年も経っているような気がするのだ。
     夕食と入浴を済ませると、ベッドの中に潜り込んだ。まだ寝るには早い気もするが、特別やることもない。明日も遊星との練習があるから、早めに眠ることにした。
     セミダブルのベッドは、一人で眠るには広く感じた。ルチアーノに会う前は一人で暮らしていたはずなのに、何をしていたのか全く思い出せないのだ。布団の奥深くに潜り込みながら、早くお互いの用事が済めばいいと思ってしまう。
     ルチアーノも、同じ寂しさを感じているのだろうか。そんなことを考えながら、僕は眠りの世界に落ちていった。

     翌日は、いつもよりも早く目が覚めた。前日に早く眠ったおかげで、生活のリズムが早くなったのだ。遊星が気を効かせて練習時間を午後からにしてくれたから、出かけるまでには時間がある。押し入れからカードを取り出すと、使えそうなものがないか探してみた。
     何気なくテレビをつけると、朝の情報番組が流れている。僕が学校に通っていた頃に見ていた番組は、今も放送されているようだった。昔はこんな規則正しい生活をしていたのだと、感慨深く感じてしまう。
     午後になると、僕は遊星の待つデュエルコートへと向かった。今日はルチアーノも忙しいようで、町で声をかけられることもない。発掘したカードでデッキを調整しながら、夕方までみっちり練習を繰り返した。
     こうしてデュエルをしていると、なんだか、昔に戻ったような気分になる。ルチアーノに出会う前は、僕も遊星たちと一緒にデュエルをする日々を送っていた。遊星の仲間としてゴーストを倒したこともあったし、牛尾さんの捜査に協力することもあった。あの頃は、自分がポッポタイムの一員になると信じていたのだ。
     家に帰っても、リビングの電気はついていなかった。今夜も、ルチアーノは忙しい夜を過ごしているのだろう。用事があるのはお互い様なのに、そのつれない態度を不満に思ってしまう。
     いつの間にか、僕はルチアーノのものになってしまった。生活は彼に支配され、彼の都合に合わせて行動することが当たり前になってしまったのだ。一人の夜が続くと、何をしていいのかわからなくなってしまう。
     ルチアーノが僕の前に現れたのは、遊星との練習が始まって三日目の夜だった。家に帰ると、リビングの電気がついていたのだ。急いで室内に向かうと、ルチアーノがソファに腰を下ろしていた。
    「おかえり。久しぶりだね」
    「ただいま。一人で過ごして、寂しくなかったかい?」
     にやりと口元を歪ませると、ルチアーノは余裕の表情で言う。からかっているような口調に、少し唇が尖ってしまう。子供に心の余裕で負けているようで悔しかった。
    「寂しかったよ。ずっと会いたかった」
     悔し紛れにそう言うと、彼はソファから立ち上がった。僕の正面まで歩み寄ると、両手を広げて抱擁する。余裕綽々な態度を取っているけれど、やっぱり寂しかったのかもしれない。
    「明日は用事がないから、君の相手をしてやってもいいんだぜ。君だって、ずっと一人でいたら遊び足りないだろ」
     僕の背に腕を回しながら、ルチアーノは耳元で囁く。甘ったるい響きに、身体がじわりと熱を持った。彼の誘いは嬉しいが、断らざるを得ない。僕には、遊星との約束があったのだ。
    「ごめんね。明日は大事な用事があるから、遊ぶのは明後日でいいかな?」
     ルチアーノは顔を離すと、ちらりと僕に視線を向けた。眉は潜められているが、機嫌を損ねた様子はない。小さく息をつくと、吐き捨てるように言う。
    「そうかよ。寂しがり屋な癖に、わがままなやつだな」
     ルチアーノにだけは言われたくないセリフだった。僕たちの関係において、寂しがり屋でわがままなのは彼の方なのだから。
    「で、その用事ってのはどんなものなんだよ。僕に言えないようなことなのか?」
     会話の流れを作るように、彼は言葉を続けた。痛いところを突かれて、僕は返答に困ってしまう。できれば、追求しないでほしいところだった。
    「言わないでって言われてるんだ。後でちゃんと話すから、今は許してほしい」
     仕方なく、僕は素直に言葉を返す。こう見えて彼は聞き分けがいいから、隠さずに話せば受け入れてもらえると思ったのだ。心の隅で祈りながら、彼からの返事を待つ。
    「隠し事かよ。まあいいや。その時が来たら白状してもらうからな」
     祈りが通じたのか、それ以上の追求はしなかった。両腕を離すと、僕の前から離れていく。許されたことに安心しながらも、少しの寂しさを感じてしまった。

     その夜、僕たちは愛を交わした。数日ぶりの逢瀬だから、僕もルチアーノも熱が籠ってしまう。お互いの身体を貪るように、全身に指を這わせていく。満足するまで堪能した頃には、すっかり夜が更けていた。
    「ルチアーノ」
     布団の中に身体を横たえながら、僕はルチアーノに声をかけた。盛り上がってしまったことが恥ずかしいのか、彼は僕に背中を向けている。赤くて長い髪が、僕の前でさらさらと揺れた。
    「なんだよ」
    「愛してるよ」
     真っ直ぐに思いを告げると、彼は恥ずかしそうに身じろぎをする。何度か衣擦れの音を立てた後に、小さな声でこう答えた。
    「知ってるよ」
     簡潔な返事が愛おしくて、僕はルチアーノの頭に手を伸ばす。子供らしい熱い体温が心地よかった。

    「おい」
     翌日の朝、僕はルチアーノに叩き起こされた。お腹の上に乗られると、顔を何度も叩かれる。頬に伝わる衝撃で、嫌でも目が覚めてしまった。
    「おいってば!」
     布団を被って抵抗すると、今度は耳元で叫ばれる。甲高い声が耳を刺して、頭がくらくらした。
    「あとちょっと……」
    「なに言ってるんだよ! 今日は用事があるんだろ。とっとと起きな!」
     その言葉で、僕はようやく飛び起きた。そういえば、今日は遊星と大会に出場するのだ。ゆっくり眠っている場合ではなかった。
    「そうだった。ありがとう」
     急いで洗面所に向かう僕の姿を、ルチアーノは呆れ顔で見つめている。小さくため息を付くと、ぼそりとこんなことを呟いた。
    「全く、僕がいないと何もできないんだな。子供みたいなやつだぜ」
     ルチアーノがいなければいないで、僕はちゃんと起きられるのだ。言い返したい気持ちにもなったが、時間がないから言わなかった。

     ポッポタイムの前では、遊星が待ち構えていた。僕の姿を捉えると、安心したように片手を上げる。
    「間に合ったみたいだな。これから会場に向かう。ついてきてくれ」
     そう言うと、彼はDホイールに乗る。しばらくハイウェイを駆け抜けて、大会の会場へと向かった。
     目的地は、シティの中央に位置するデュエルドームだった。彼が参加するのは、ここで月に一度開催されている定番の大会らしい。正式な大会ではなく、賞品もそこまで豪華とは言えないから、競技を始めたばかりの参加者が多いのだという。僕と遊星が並んで歩いている姿を見て、参加者が驚いた顔をしていた。
     僕の心配をよそに、大会は何事もなく進んでいった。僕たちは淡々と勝利していったし、闇のカードを操るものも現れなかった。僕が参加したことで、犯人が隠れてしまったのかもしれない。壇上で表彰板を受け取りながらも、僕は少し申し訳ない気持ちになっていた。
    「今日は助かった。これで、犯人もこの大会には姿を現さないだろう。牛尾にもいい報告ができそうだ」
     僕の方を見ると、遊星はそう語る。安心している様子の彼に反して、僕は不安で仕方なかった。
    「大丈夫? 僕が参加したから、犯人が隠れちゃったとかじゃない?」
    「闇のカードを操る者は、必ず姿を現すとは限らないんだ。お前のせいではないだろう」
    「そうかな。なら、いいんだけど」
     不安な気持ちを抱えたまま、僕は会場を後にする。丸一日かかったから、すっかり夕方になっていた。オレンジに染まる空を眺めながら、家までの道を駆け抜けていく。
     リビングには、まだ電気がつけられていなかった。今日は、ルチアーノも自由に行動できる日だったはずだ。いつもと同じ時間に帰っているなら、電気がついていてもおかしくない。少し不思議に思いながらも、家の敷地へと入っていく。
     玄関の鍵を開けると、静かな廊下を歩いていく。電気をつけようとスイッチに手を伸ばした時、背後から声が聞こえた。
    「お帰り、裏切り者」
     振り返ると、部屋の中に人影が見えた。薄暗い部屋の中に、白い布を靡かせたルチアーノが、窓を背にするように佇んでいる。逆光で表情の隠れたその姿に、本能的な恐怖を感じた。
    「僕に隠れて、不動遊星と大会に出てたみたいだな。堂々と密会だなんて、大胆なことをするじゃないか。お仕置きがほしいのかい?」
     何も答えられない僕に、彼は淡々と言葉を言葉を続ける。いつもの彼からは考えられないほどの、静かで冷酷な声だった。その語調から、怒っていることがはっきりと伝わってくる。
    「違うよ。これは密会じゃなくて、頼まれた仕事をこなしてたんだ。ルチアーノに話せなかったのも、犯人を捕まえるためだったんだよ」
     しどろもどろになりながらも、なんとか説明しようとする。今回の件には明確な理由があるのだ。話せば分かってもらえるかもしれないと思った。
     しかし、僕の目論見は外れた。ルチアーノはにやりと口角を上げると、淡々とした声色で続ける。
    「それくらい知ってるよ。君がこそこそしてるから、ちょっと調べさせてもらったんだ。闇のカードを操る犯人を追うために、牛尾が指示を出したらしいな」
    「そこまで知ってるなら、どうして……」
    「君が、僕を信用しなかったからだよ。君は、僕のことじゃなくて、不動遊星の言葉を信じた。これは、僕への裏切りなんじゃないのかい?」
    「それは……」
     口を開きかけて、自分に返す言葉が無いことに気がつく。彼の言う通りだ。僕は、自分のパートナーよりも、遊星の言葉を信じた。彼にとっては、それは何よりも大きな裏切りに思えたことだろう。
    「ごめん……」
     素直に謝ると、ルチアーノは小さく笑い声を上げた。いつものような明るいものではなく、背筋が凍るような暗い笑いだ。不安と恐怖で胃の中が重くなる。
    「明日は、君とは遊んでやらないからな。一人で考えて、きちんと反省しな」
     冷たい声で宣言すると、彼は僕の前から姿を消した。その後ろ姿が寂しそうに見えて、僕はようやく気がつく。忙しくて会えない間に寂しい気持ちをしていたのは、僕だけではなかったのだ。当のルチアーノ本人も、寂しくて仕方なかったのだろう。
     彼は、その事を知らせたかったのだろう。明日になれば、きっと僕の家を訪れてくれる。その時にどうやって謝ろうかと、僕は思考を巡らせたのだった。
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