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    tranquillo

    @fragola_fredda

    🐞🍓中心🍓右shipper/20↑成人済

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    tranquillo

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    恥パ後の🔫+🍓
    捏造120%です

    新パになっても背伸びして振る舞おうとする🍓のことを適切な距離で見守ってくれるのは🔫だといいな、という話

    自由を分け合う子どもでいる方法「オメーよォ、もちっと『子ども』やった方がいいぜ。罰ゲーム受けてるみてーな顔で背伸びして無理したって、誰に褒めて貰える訳でもねェし」
     だってもう、俺たちだけになっちまったしよォ。
     そう言うミスタの顔は、とても穏やかだった。普段の軽薄な調子も無ければ、深刻な心配という雰囲気でもない。明日は雨だから傘があった方が良いかもな、という程度の、世間話のついでのような落ち着き払った言葉だった。
     ミスタの真っ黒な瞳には穏やかな光が浮かび、上機嫌でチョコレートを選ぶことに夢中になっていた。年相応に浮かれている、どこにでもいる男に見えた。先ほどまで中年の男を銃床で殴り倒していたとは、とてもわからない。
     フーゴはその隣で、黙って一緒に板のチョコレートを眺めている。下町の猥雑な街角には、秋の穏やかな日暮れが差していた。

    ◆◆◆
     
     その日、ミスタは常とは違う珍しい部下を連れて、外でトラブルの対処に当たっていた。いま二人がいる裏賭場は、副長である彼が統括する地区にある。本来ならばミスタ直属の部下が呼び出されるのだが、この日は少し毛色が違う人間を連れてきて欲しいと要請があったのだ。
     パンナコッタ・フーゴ。ミスタの指揮下にいる元裏切り者だ。組織に復帰後、週の半分を本部付き内勤として帳簿の管理や細々とした経理を担当して過ごしている。残り半分は時に行動した二人となし崩し的に組み、再編された組織内の内偵調査を行っていた。そのために、裏賭場の金庫番から『話し合い』に同席して欲しいとフーゴが呼ばれたのだ。
     『話し合い』と言えば聞こえはいいが、要は下手を打った債権者から金を回収するための、身体的な恫喝がほとんどである。連絡があってすぐ、ミスタは狭苦しいフーゴの仕事部屋に向かった。
     フーゴが組織に復帰してから約一年、二人は仕事上ではあまり接点のない上司と部下として過ごしている。その二人が久しぶりに顔を合わせた。フーゴの部屋に入った瞬間、微妙な沈黙が流れ気まずい空気になったが、ミスタはあえて無視した。何事も無いかのように経緯を説明し、二人は賭場へ赴いた。
     いまミスタの足元に転がっている男は、普段から派手に遊んでいた有名な上客だ。急激に負けが込んでも自分のツキの無さを認められず、すっかり全てを失って回収不可能と判断されたのだ。短時間で二人は少しだけ過激な『話し合い』を行い、フーゴが売掛の内容を確認する。そしてミスタの少々派手なで、男が隠していた不動産の内容を無事吐かせたのだった。
     問題はその後だった。無造作に銃を腹部に引っ掛けているミスタを見て、男は殺されると思い込んだらしい。泣き喚いて許しを請う。這いつくばる様は巨大な芋虫のようだ。あまりにうるさく、惨めで無様だった。殺しはしない、とフーゴが告げても恐れで一向に耳に入らないらしい。ミスタはフーゴが苛ついて大暴れしねーかな、と少し期待して見守っていた。
     キレ散らかしているフーゴを、ミスタはもうずっと見ていない。ここ最近、本部で見かけるフーゴの姿はミスタには上手く言葉に出来ない違和感があった。廊下ですれ違う度に慇懃に挨拶されると、どうにも気持ち悪い。ミスタが知っているフーゴは、丁寧さとぞんざいな口調が混ざっているかと思えば、突然相手を罵倒するような予想不可能な奴なのだ。せっかく久しぶりに顔を見たのだから、怒り狂ってめちゃくちゃにする見慣れたフーゴで安心を覚えたいくらいだった。
     だがミスタの目の前の部下は、必死の命乞いを淡々と見つめている。苛立ちや嫌悪の感情は全く浮かんでおらず、何を考えているのかわからない。ひどくつまらなそうだった。
     珍しいっつーか、調子狂うぜ。
     フーゴに命じても良かったが、その手間を面倒がったミスタは銃床で男を殴り倒してすっかり黙らせる。そしてどうにも噛み合わないフーゴを連れると、早々に賭場を離脱した。

     ◆◆◆
     
     「オメー、珍しくキレなかったな。あんなぎゃあぎゃあ泣き叫んでたのに」
     薄暗い路地から抜けた二人は、人影の少ない大通りを歩いていた。裏賭場から車を置いている路上駐車場まで距離があるのだ。石畳に細かなゴミが詰まっている通りはお世辞にもきれいとは言えず、ネアポリスにはよくある光景だった。
    「別に……僕だっていつも見境なく暴れる訳では、」
    「すげェつまんねーって顔で見てたじゃん。俺は器のデケェ副長様だから別に怒らねーし、いいけどよォ。仕事熱心じゃないフーゴなんて珍しいぜ。悩み事でもあんのか?久しぶりに顔合わせたしよ、話してみろよ。部下の悩みを聞くのも仕事のうちだしな」
    「いえ、そういう類のことでは無いので。ご心配をお掛けしました」
     淡々と会話を打ち切ろうとするフーゴとミスタの間には、明らかに距離があった。昔なら肩を組んで歩いても嫌がらなかったじゃねーか、とミスタは少し傷ついた気持ちになる。
    「……あのよォ~~、今は誰もいねぇし、いい加減タメ語で話そうぜェ?オメーのその態度、マジで慣れねーんだわ」
     フーゴは少し悩んだ様子で沈黙していたが、恐る恐るといった様子でミスタを見遣る。
    「……本当に呆れないって約束してくれるか?」
    「勿論だぜェ~。ミスタお兄さんに話して見ろよ」
    「その……せっかく外回りに出たから、帰りにチョコレートでも買って帰ろうかなって……そういうことを、考えてた」
    「……そんだけ?」
    「そうだよ。だから言っただろ」
     拍子抜けしながら、ミスタはフーゴを見る。夕暮れの金色の光の中で、フーゴの前髪が俯いて揺れていた。不機嫌さが滲む少し猫背気味のその姿に、ミスタは内心でこういうフーゴを見るのは久しぶりだな、と柄にもなく感慨を覚える。
    「可愛いとこあるじゃねーの、フーゴ。心配して損したわ。つーか、オメーってそんな甘いもの好きだっけ?」
    「そういうわけじゃないけど……前もときどき買って帰ったこと、あっただろ」
     ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に、フーゴの横顔は少し穏やかなものになる。懐かしむような顔。そういえば昔もそんなことがあったな、とミスタは唐突に思い至った。まだ誰も欠けていなかった頃、確かにそういうことがあったのだ。
     今日と同じように、ミスタとフーゴで管轄地区のトラブルを収めに行った帰りだった。フーゴが少し買い物がしたいと言って離れたかと思うと、菓子を買って戻ってきた。
     それは、この国の個人商店ならどこでも扱っている板チョコレートだった。ミルク缶の絵が描かれたレトロな青い包装紙。スイス産を謳っていて、フレーバーの種類が多いのが特徴だった。三枚まとめ売りで、どの種類を選んでも価格は変わらない。子どものお小遣いで買える、ありふれたものだ。あのとき、フーゴは六枚購入していた。
     見慣れたそれらを土産に二人が事務所へ戻ると、すぐに目敏いナランチャが紙袋の中身を察して飛んできた。さらにピストルズも加わって、早く食べさせろと騒ぎ出したのを覚えている。アバッキオが呆れていたんだったか。
    「そーいや、オメーがたまに外回り行くとチョコ買って帰ってくるときあったな。いつだったか、じゃんけんで決めて大騒ぎだったよなァ。今日みたいにアホを締め上げて帰ってきたときでよォ。俺、どれ選んだんだっけ」
     回想するミスタの言葉を受けて、フーゴはやっと顔を上げ目を合わせた。すみれ色の瞳が夕日に輝いている。そこには眩しいものを見るような穏やかさと、確かに過去への痛みが同居していた。
    「あのとき、ミスタは最初に勝ち抜けたよ。『ヘーゼルナッツ入りミルクチョコ』を選んで、ピストルズたちに『アーモンド入りホワイトチョコ』をあげた。そうしたら、ピストルズたちがミスタの選んだ方が食べたいって騒ぎになって」
    「あ~‼ あったあったッッ。んで、No.3はやっぱりNo.5に横取りされて泣いてよォ」
    「そう。それで騒いでるうちに、二番目に勝ったナランチャがクッキー&クリームを選んで、馬鹿みたいな勢いで全部食べ切って」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ。あのとき、僕は本当はクッキー&クリームが食べたいと思って買ったんだ。でもナランチャが先に選んだから、後で少し貰おうと思ってたのに。……なんだか怒るのはガキっぽいし」
    「オメー、そんな細けーこと覚えてんのかよォ~‼ あのときは一つも興味ないって感じだったじゃねーか。根に持つタイプかァ、フーゴちゃんは。食べ物の恨みは怖えなァ~~」
     大仰に自分の肩を抱いて怖がるミスタの様子に、それを見たフーゴは小さく吹き出す。
    「だって、覚えてるんだから仕方ないだろ。……三番目のアバッキオは買ってきた奴に権利があるだろうが、って僕に気を遣って順番を譲ってくれて。だから僕は定番のミルクにした。アバッキオは『ヘーゼルナッツ入りダークチョコ』を選んだかな。ずっと笑って見てたブチャラティは、最後に残ったホワイトチョコだったよ」
     かつての仲間の思い出を語るフーゴを目にするのは久しぶりだった。いや、フーゴが戻ってきて以来、ほとんど初めてだったかもしれない。二人の間に漂う空気からは余所余所しさは消え失せて、すっかりあの頃と変わらないものに戻っていた。その様子に気を良くしたミスタは、改めて最初の質問をする。
     「そうだな、フーゴちゃんはそーいうとこある可愛い子だったわ。つーか、俺らにもチョコ買って来てくれるくらい、甘いもの好きだったかァ? いつも机にチョコ隠してるジョルノならわかるけどよォ~」
     ミスタは今や全てを統べる年下のボスを思い浮かべた。執務室の引き出しにも、通学鞄にも、チョコレートをこっそり忍ばせているのをミスタは知っている。
    「……別に、ジョジョみたいにそこまで好きなわけじゃないよ」
     フーゴも同じ事を思い浮かべているのか、少し困った顔をすると、迷うような素振りを見せた。
    「何かあんの?」
    「……絶対、笑うなよ」
    「笑わないって。優しいミスタおにーさんだからなァ、何でも聞いてやるよ」
     あえてミスタは真面目な顔でフーゴを覗き込む。その仕草にフーゴはどこかが痛むような、歪な表情を見せて目を逸らした。心なしか、歩く速度も遅くなった気がした。
    「その……子供の頃に祖母と買い物へ行くと、いつも買ってくれたのがこのチョコレートだったんだ。……ときどき、無性に懐かしくなって。それに、初めて僕が買って帰ったときからずっと、みんな何も言わなかったし」
     いつものはっきりとした物言いではなく、歯切れの悪い調子だった。俯いたまま、長い前髪に隠された表情はよく見えない。それでも、ミスタはフーゴが今この瞬間にとても大事な話をしていることはわかった。
    「このチョコ、種類が色々あるでしょう? 三枚選べって言っても、僕はなかなか決められなくて」
    「何でだよ? オメーが食いたい奴を選べばいいだろーが」
    「もちろん今なら、自分の好きなのを選べば良いってわかるけど。……その頃は、チョコなんて買って貰うのは如何にもガキだって兄たちに馬鹿にされるかなとか、色々余計な事を考えてて」
     ミスタは、フーゴに兄がいることは時の報告書で知った。そもそも、フーゴから自身の家族のことを聞くことすら今が初めてだった。家族のことを語るフーゴのまとう空気は、気難しいギャングではなく、寄る辺のない子どものそれと変わらない。
    「それに、僕はお菓子を買って貰える資格があるほど出来ているだろうか、とか。……その頃はいつも勉強に追われてたから。別に、祖母は僕に何も求めない人だったのに。そういう、下らないことばかりに気を取られてたら、うまく選べなかった」
     今から思えば、祖母の好きな味を選べば一緒に食べられるからそっちを早く選べばよかったし、どうせ何をしたって兄たちからやっかまれたんですけどね。
     フーゴは淡々としているが、過去を語るその表情が曇っていることに本人は気づいているのだろうか。
    「でもギャングになってからは、チョコレート一つ選ぶも苦じゃない自分になれた気がして。……だからあの頃は、みんなのために選べるのが嬉しくて、ときどき買って帰ってたんだよ」
     組織に戻ってきて以来、いや、ブチャラティたちといた頃でも、こんな素直なフーゴを見たことは無かった。ミスタは珍しいものをみた、と不思議な感動に襲われる。そして同時に、初めてフーゴに対して憐れみにも似た感情を抱いた。
     コイツってまだまだ子どもなんだよなァ。チョコレート一つで、自由に選べる喜びがあるって噛み締めてるような。仲間との思い出を、後悔と共に大切にするくらいには、割り切ることが出来ない子ども。
     ミスタは、どうしようもない運命や別離に相対してもそういうものだ、と受け入れる覚悟が子どもの頃から不思議と出来ていた。何故、と問われてもわからない。ミスタとはそういう男だからだ。終わってしまったものは仕方がない。そのときに出来ることをして、自分にとってラッキーな方を選ぶだけだ。でも、フーゴは違う。自分に出来ることを無限に試算するくせに恐れに囚われ、選ばなかった方をずっと後悔し続ける。そういうフーゴの不器用さを、ミスタは自分にはない優しさだと受け取った。
     俺は下に兄弟はいねーけど、弟がいたらこんな感じなんじゃあねーかな。なあ、ブチャラティ?
    「おっ、ちょうど買えるじゃん」
      不思議な感慨に浸っていたミスタは、目敏く通りの向かいに商店を見つけた。フーゴが止める間も無くミスタはすたすたと渡ってしまう。軒先を覗くと、期待通りあの青い包装紙のスイスチョコレートが棚に並んでいた。
    「もォ~~、黙って勝手に行くなよ。君だって、曲がりなりにも責任のある立場に……」
     慌てて追いかけてきたフーゴが呆れた様子でミスタを咎める。だがミスタはそれに耳を貸すこと無く、不意に振り返るとフーゴに腕を回して肩を組んだ。
    「オメーよォ、もちっと『子ども』やった方がいいぜ。罰ゲーム受けてるみてーな顔で背伸びして無理したって、誰に褒めて貰える訳でもねェし」
    「ミスタ!」
     突然のことに驚いたフーゴは鋭く名前を呼ぶ。しかし、見上げたミスタの顔はいつになく真剣でフーゴは口を噤んだ。
    「だってもう、俺たちだけになっちまったしよォ。行き場のないガキの俺たちを拾ってくれたブチャラティや、アバッキオ、ナランチャのことを話せるのは、長くいたお前が一番だし」
     そういう話は、ジョルノじゃ駄目なんだってオメーもわかるだろ?
     肩を組んで見下ろすと、ミスタからはフーゴのブロンドの頭しか見えない。だが、その表情はきっと感傷に染まっていることを知っている。
     「ジョルノはまだカタギの学校に行ってるから、一応は子ども扱いされるだろ? でもフーゴは一番の古株だったしよォ、オメーを唯一子ども扱い出来たブチャラティはもういねぇし。俺たちはもう国で一番のギャングなんだぜ、悲しいとか辛いとか簡単に言えねーじゃん。だいたい、本当だったらオメーはまだ免許も取れねーお子様なんだっつーの」
     まっ、俺は最高にイケてる大人だけどよォ。
     ミスタの言葉を神妙に聞いていたフーゴだったが、最後のミスタの茶化しに小さく笑う。ミスタには、それがフーゴなりの心痛を抑える仕草だとわかった。
    「君ね……子ども子どもってそんなに言わなくても、」
    「良いんだよ。だってもう、馬鹿なガキだった頃を覚えてるの、俺たち二人だけになっちまんたんだしよォ」
    「……そうだね。僕も、ミスタと思い出を話すことが出来なかったら、彼らと過ごした頃のこと、きっと忘れてしまう」
     俯き気味だったフーゴが顔を上げて、真っ直ぐにミスタの顔を見つめた。そこには、今まで感じていた壁や距離は無かった。すみれ色の瞳は夕暮れの茜色の光でことさらに輝いて見える。ただ無言で、ミスタに対する信頼と感謝が浮かんでいた。ミスタはそれを確認すると、大仰な仕草でフーゴの背中をばちんと叩いて肩から手を話す。フーゴが低く呻く声がした。
    「素直でよろしい。いいぜ、優しい優しいミスタおにーさんが、可愛いフーゴちゃんにチョコレート買ってあげちゃう。俺とフーゴとジョルノ、ちょうど三枚で良いしな」
    「ピストルズの分は無くていいのか?」
     恥ずかしさもあるのか、不貞腐れた顔のフーゴが問う。ミスタはその表情を見て、やっぱり自分たちは他人行儀な関係より、こういうふざけた関係がよっぽど似合うと思った。
    「それは俺達の分をちっと分ければ問題ないだろ~?」
    「いいのかなァ~。後で喧嘩になっても知らないよ」
    「大丈夫だって!」
    「俺はイケてる大人だし、アバッキオを見習ってダークチョコでも食おうかな。オメーも好きなの選べって。一番食いたいやつだぜ。おっ、ストロベリー&クリームあるじゃねェーかよォ!ホラ、可愛いフーゴちゃん、早く選んでくれよ」
    商店の軒先でふざけあいながら、二人はああでもないこうでもない、とチョコレートを選ぶ。それはどこにでもいるような、痛みも希望も分け合う十代の穏やかな横顔だった。
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