りょうけんさん花粉症にしたった……っくしゅ
控えめな、子猫がするようなくしゃみの音がして、一同は振り返った。
そして二度見した。
っくしゅ、くしゅ、くしゅ。
今度はその音が連続して生まれる様を見てしまった。
音の主は口元をハンカチで押さえる清楚な乙女……では無い。
顔立ちこそ整っているが、わりと図体がでかくて声も太くて態度も尊大なはずの、男だった。
春。
満開の桜のもと、ビニールシートを敷いて各々足を伸ばす。
事の発端は、遊作が「花見をしたことが無い」と呟いた事だった。
すぐに草薙が泣きながら準備を整えて、その場にいた尊と常連さんとそのお供も連れて近所のお花見スポットに直行してしまった。
草薙本人はさっさと施設の許可証を貰って、弟の仁と共にキッチンカーで出店している。
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