〇.七ミリメートル 隣の体温が消えたとき、レイジロウは目が覚めた。目を開ければ、隣にいたはずのラッキーはいない。確かに強く抱きしめたはずなのに、と疑問に思いながらぼうっとしていると、暗闇に目が慣れたようでぼんやりと影が浮かんできた。時間は深夜の一時。ベッドサイドに置いてあるデジタル時計の電気が毎秒点滅しているのが視界の隅にとらえられた。
ベッドの横に置いてあるスリッパはレイジロウのもの一つだけ。ラッキー用のものは、足が生えてしまったのかどこかに無くなってしまったようだった。
まさか、こんな夜中に外に出た、とか? レイジロウは不安になって、部屋にあるクローゼットに向かう。そこには確かにラッキーの服が一揃いあったし、コートやジャケット、パーカーなど簡単に羽織っていけるものもそのままだ。ただ、ここ以外にだってラッキーの服は置いてあるし、まだ玄関だって確認していない。レイジロウに黙って部屋を出ていくとは思えなかったけれど、確認するだけしてみよう。そう思ってレイジロウはそうっと部屋から出ていった。
3170