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    phron42

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    phron42

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    反応いただいて嬉しかったので、一年半前くらいに書いたもの出します
    眠っているラツキーを見つめるレイジ口〜の一人語り レジ→ラキって感じです

    ###レジラキ

    ため息と溶けゆく境界線 つるりとした顎をしていると思った。眠っているときはひどく静かだとも。当たり前か。真っ白い肌とシーツの境界線が見えないようで見える。ぱらぱらと散らばった星の色の髪の毛を梳くと、シャンプーの匂いが鼻腔を擽った。なんとか、という名前の匂いだったはずだ。なんとかブーケ。名前は忘れてしまった。ラッキーのために買ったものだったから。
     眠っているときというのは無防備なものだと思う。ラッキーは眠りが浅いタイプだそうだから、もしかしたらこんな風に近づいていれば気づかれて驚かれてしまうかもしれないけど。それでも、こんなに近くにいてもぱっと目を開けて、その瞳に映ることがないのだ。そう思えばやっぱり無防備だとは思う。眠りが浅くても、起きるまでは何をされているかもわからないのだし。視覚が担う情報は案外多いのだ。
     飽きもせずに眠っているラッキーの横顔を見つめる。すうすうと規則的な寝息を立てているその姿は、あどけなくて幼い。泡みたいな子だと思った。触ればぱちんと弾けて消えてしまいそうな。
     実際、今のこの状況だって夢のようなものだと思っている。ぷかぷか浮かんでいるシャボン玉のように美しいのに、儚い。いつだってこれから覚めてもおかしくないのだとも思っている。そういうものだった。
     眼球がぶるぶる震えて煙るように長いまつ毛も一緒に震える。夢を見ているのだ。何の夢を見ているんだろうか。僕の夢だったらいい。僕が暖かいところに一緒にいて、辛いことなんて何も考えなくてよくて、おいしいものでお腹がいっぱい。夢なんてそんなものだ。
     わざと、胸のあたりに頭を置いてみた。とくんとくんと心音がして、生きていることを感じた。飽きもせずにラッキーの顔を見つめる。つんと高い鼻に、まん丸くて赤くなった頬っぺた。赤ちゃんみたいでかわいいな。僕よりも背が大きいはずなのに、僕よりも弱かったはずの六番目のこども。
     ぐっと目を瞑る。このまま眠れたら幸せだった。ラッキーの心音と僕の心音がだんだん重なっていって、一つになっているみたいだった。赤ちゃんのころ――生まれたときよりずっとずっと前、みたいな。
    「……レイジロウ?」
     どうしたんだよ、と寝起きで舌のもつれた声が聞こえる。どうやらラッキーは起きたようだった。
    「……ううん、何でもないよ」
    「そう? ……うわ、真夜中じゃん。早く寝よう」
     そっとラッキーが微笑む。変わらないはずなのに変わった笑顔。変わったのはラッキーじゃなくて僕だったのかもしれない。こんなのは、ただの現実逃避か。
     ベッドの隣を開けてもらう。ラッキーの隣に当たり前に僕が受け入れられている事実は変わっていなかったようで、愚かにもそれに薄暗い喜びを覚える。よかったなあ。
     冷たくなったシーツと毛布の間に身体を滑りこませて、隣にいるラッキーをぎゅうと抱きしめた。体温が上がっている。眠っていたのだから当然だった。
    「なんか、変な夢見た……」
    「どんな夢?」
    「え~……あったかくて、ふわふわしてて、おいしいもんいっぱい食ってた気がする」
    「一人で?」
    「ううん、おまえもいっしょ」
    「……そう。ならいいや」
     冷たい床からすくい上げられて、今は暖かいところに一緒にいる。その事実だけでいまはいいかもしれないと思う。
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