桜流し 獅子神敬一が死んだ。
四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。
村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
「——は?」
「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
「……いつだ」
「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
「そうか」
「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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