おんなじ性欲周期付き合い始めてから最近知ったこと。
どうやら俺と小野寺は性欲が高まる周期が同じらしい。
交際と同時に週末同棲から始め、徐々に泊まる日数を増やし一緒にいる時間が増えたことによって分かったことだ。
付き合って3ヶ月も経てば、お互いの身体のことなんてある程度分かるようになってくる。
そしてこの生理現象も同じタイミングで起こるということが分かってきたのだ。
「……たかの、さん……」
小野寺が情欲を含んだ瞳で見上げてくる。
人差し指で俺の唇にそっと触れるのは行為を重ねるうちにお決まりとなった無言の合図だ。
「……いいのか?」
「……はい」
こくりと小さく首肯する小野寺を抱き寄せる。始めは戯れのように口付けて少しずつ深く、舌を絡めあっていく。
「んっ……ふぁ……ぅん……っ!」
キスの合間に漏れる吐息のような声に煽られてどんどん夢中になってく。
そのままベッドに押し倒して貪るように何度も角度を変えては口腔内を犯していく。
「んん……っ!」
小野寺の腕が俺の背中にしがみつくようにして脇の下から回される。まるでもっと深いところまで欲しいと言われているような気がした。
ゆっくりと唇を解放するとつーっと銀糸が引かれる。
(好きな相手と性欲周期が同じってのは最高だよな)
ぼんやりとそんなことを考えながら服を脱がせ合いお互い一糸纏わぬ姿になる。
もう何度見たか分からない裸体なのにいつ見ても綺麗だと思うし、これから抱けると思うだけで興奮してしまう自分がいる。
「小野寺……」
ぎゅっと抱きしめると華奢な身体がぴくりと震えた。
素肌同士が触れ合う感覚が気持ち良くてそのまましばらく抱き合っていると腕の中の体温が少し上がったように感じる。
「あの……高野さ……」
「うん?どうかした?」
恥ずかしそうにもじもじしながら何か言いたげにしている様子が何とも可愛くて頬を撫でていると意を決したようにこちらを見上げてきゅっと目を瞑った。
「今日はその……えっちな下着つけてます……」
「……は?」
予想外過ぎる言葉に思わず間抜けな声が出る。今こいつ何て言った?
「た、高野さんの好みに沿うかは分からないですけど……あの、け…倦怠期防止っていうか……その、そういう雰囲気作りの為に着けてきました……」
顔を真っ赤にして必死に伝えようとする姿が愛しくて堪らない。
ああ、もう!こいつは本当に……。
「お前それ反則だから」
俺は心の中で白旗を上げつつ目の前の恋人を押し倒した。
**
「で、何処で買ったのそれ」
「つ、通販サイトです……男性同士で…そういうことする用の勝負下着、みたいなの売ってて。せ…性器のサイズだけ測って、オーダーメイドで…腰の後ろで紐結んで、そのまま挿れられるようになっているんです」
こんなことを言わせてしまって申し訳ないと思いつつも正直かなりエロい。というかエロすぎる。所謂ほぼ性器を布で覆っているだけの紐パンのようなものだ。その性器を覆っている布も先端は吐精できるように穴が空いていて、そこから手を突っ込んで弄りまくるという仕組みになっているようだ。
「やばいくらいエロいな」
「うぅ……やっぱりちょっと変ですよね……」
「いや全然変じゃないけど。むしろすげぇ嬉しい」
「本当ですか?高野さんが喜んでくれたなら……頑張って注文した甲斐がありました……」
ほっとしたように微笑む小野寺を見て下半身が熱くなるのを感じた。
(やばい……このままじゃ暴走してしまいそうだ)
俺に喜んでほしいから、とただそれだけのために色々調べてくれたのだろう。健気過ぎて可愛いすぎてどうにかなりそうだ。
「律……」
耳元で囁いて軽く口付けるとふるりと身体を震わせる。そのまま舌を差し入れると応えるように舌を絡めてきた。
「んっ……ふ、ぅ……んんっ!」
以前よりも小野寺が素直になった事によってこういう行為も躊躇わず出来るようになった。
ベッドの下に隠してあるローションを取り出し手にたっぷりと出すと小野寺の後孔へと指を入れた。
「ひゃっ!?」
まだ解れていないそこにいきなり2本の指を入れると驚いたのかびくんと身体が跳ねる。
「すぐ触れて良いなこれ。ほんと、男同士の性行為のしやすさに特化してシンプルな作りの下着だよな」
「あっ……あぁっ!やっ、あ……っ!」
そのまま奥まで挿入すると小野寺が背中をしならせた。
「ひっ、んっ!」
2週間ぶりに触れたそこは以前とは比べ物にならないほど柔らかくなっている気がする。
「もしかして、自分で慣らしてきた?ここ柔らかいんだけど」
「そ、それは……」
「うん?」
「…………お風呂場で少しだけ……触ったりして……」
消え入りそうな声でそう言う小野寺の顔は羞恥に染まっていた。
(なんなんだよ、マジで)
可愛すぎんだろ!と叫びたい気持ちを必死に抑える。
そして同時に、早く繋がりたいという欲求が一気に高まった。
「ごめん、もう限界だわ」
「え……?あぁ……ッ!!」
指を引き抜いて代わりに自身を宛がうとゆっくりと押し進めていく。
「くっ……」
相変わらずキツい締め付けだが前回よりはスムーズに入っていく。
「全部入ったぞ」
「はい……」
小野寺が嬉しそうにはにかむ。
「動いていい?」
「どうぞ……」
「……動くからな」
「…ふふっ…もう、なんですか急に」
「なんか、ちゃんと確認しとかないといけない気がした」
「……高野さんの好きに動いていいですよ」
「今日は優しくしたい気分なんだけど」
「俺は、高野さんと二人で気持ちよくなれるなら……す、少しくらい激しくても嫌じゃないし……むしろ…その…」
恥ずかしそうに言い淀んで視線を逸らす小野寺の額に軽く口付ける。
そのまま瞼、頬、鼻先へと順番に口付けて最後に唇に触れるだけのキスをした。そして耳元で囁く。
「言って?むしろ、なに?」
「……高野さんを、より近く感じられるから……好き…です…」
「……あー…もう……お前ほんとなんなの。そんなこと言われたら歯止め効かなくなんだろ」
「ずっと俺の中は高野さんでいっぱいで……今はもっと高野さんで満たされてます。だから、歯止めが効かなくたって、いいんですよ?」
「お前って奴は……」
いつも優しくしてやりたいと思っているのに、時折こうしてまるで俺の理性を試してるんじゃないかと疑いたくなるくらい煽ってくる。
「だって……高野さん優しいけど、たまには強引な時もあるじゃないですか……それがちょっと嬉しい時もあるっていうか…こんな風に余裕がなくなったりするのは俺だからなのかなって思ったら優越感みたいなものがあって……」
そこで恥ずかしくなったのか一旦言葉を切ると今度は俯いてぼそりと呟いた。
「それに、その方が求められてるみたいで安心します……」
ああもう本当にこいつは……。
普段はあんなにもツンデレ全開なくせにこういう時は妙に素直というか可愛いことを言い出すから困る。
「……後悔すんなよ?」
「しませんよ。好きな人と触れ合う心地良さを教えてくれたのは高野さんでしょう?性的な事でも、そうじゃなくても…高野さんだから嬉しいし…求められたいって思うんです……」
そこまで言うと小野寺は恥ずかしさが限界に達したようで耳まで赤く染めたまま黙ってしまった。
「律……好きだ」
名前を呼ぶと嬉しそうに微笑んでくれる。
額や頬に口付けを落としていきながらそっとベッドへ押し倒す。
「俺も…好きです……政宗さん」
照れた様子で告げられた名前に思わず笑みが零れる。
そしてもう一度深く口付けた後、小野寺に引き寄せられて俺たちは互いの熱を求め合った―――。