高野さん切れ「珍しいな。小野寺の方から襲われんの」
「…良いでしょう別に。どうせこのフロアにいるのは俺と高野さんだけですし」
編集長席のデスクに浅く腰掛けて、椅子に座っている高野さんを見下ろしながらそっと肩に手を置いて噛みつくように口付けた。
「アンタがいつもしつこいくらい触るせいで……足りないんです。責任取ってください……」
高野さんの目をじっと見つめながらそう告げると、一瞬驚いたように目を丸くして嬉しそうに笑った。
「ふうん…責任って、どんな風に?」
「っ……!そんなこと言わなくても分かるでしょう!?」
くっくっと喉の奥を鳴らして笑う高野さんは本当に意地悪だ。分かっていてわざと聞いてくるんだから。
恥ずかしくて耳まで真っ赤になっているだろう顔を見られたくなくて俯いたら、高野さんの手が伸びてきてそのまま強く抱きしめられた。
「ごめん、ちょっといじめすぎたな。でもお前が悪いんだぞ?そんな可愛い顔するから」
優しく髪を撫でられて額や頬に触れるだけのキスをされる。たったそれだけのことなのに気持ち良くてうっとりしていると、高野さんの顔がゆっくりと近づいてきて唇が重なった。
「んぅ……ぁ、ふ…」
角度を変えながら何度も舌を差し入れられ絡め取られていくうちに身体中から力が抜けていってしまう。
息苦しさに胸を押し返そうとしたけどびくともしないどころかますます腕の力が強くなって、気がついた時には高野さんの膝の上に跨るように座っていた。
「た、かのさ…ンッ!」
やっと解放されたと思ったのも束の間、今度は首筋に強く吸いつかれて思わず声が出てしまう。慌てて手で口を塞ごうとしたけれどそれより早く手首を掴まれてしまい叶わなかった。
「なあ、どこまで触って欲しい?」
「え……?な、に……」
「まだ会社だから手加減はしてやるけど、どこまで責任とってやったらいい?」
「っ……!」
ニヤリと笑ってシャツの釦を外す仕草が何とも色っぽくて目が離せない。
ああもう駄目だ、俺は今日もこの人に翻弄されてしまう…
「……高野さんの、したいところまで……」
恥ずかしさで小声になりながらも何とか答えたら、高野さんは満足そうな表情を浮かべて俺を抱き寄せた。
釦を外され半分脱げかけて腕に引っかかったままのシャツはそのままに、高野さんの舌が首筋を這って鎖骨へと下りてくる。同時にスラックスの中に手を突っ込まれ下着越しに触れられる感覚がくすぐったいようなもどかしいような不思議な感じがした。
「ひゃ……っあ……!ちょ、待っ……」
「待たない」
制止の声を無視して直接握りこまれたかと思うとゆっくりと擦られる。待ち望んでいた高野さんの手の感触にどんどん体温が上昇していった。
「あ、あ……っや、きもちい……あっ」
「……小野寺、ここ好きだよな」
「……高野さんが触るとこは……全部好きです……」
そう言うと高野さんの動きがピタリと止まってしまった。どうしたのかと思って見上げたら顔を赤くして固まっている姿が目に入る。
(あれ……なんか変なこと言ったかな……)
不思議に思って首を傾げると高野さんは大きく溜息を吐いて頭を抱えてしまった。
「お前なあ…会社でそんな我慢できなくなるような事言うなよ……」
「じゃあ帰ってからなら言ってもいいんですか?」
「……」
「なんですかその微妙な間は」
「……まあいいか。今はとりあえずお前のこと可愛がることに専念するわ」
「その代わり、帰る時の体力くらいは残しといてくださいよ」
高野さんの首に腕を回してキスをする。
たまにこうやって呆気にとられる高野さんの顔が見れるのは悪くないかもしれない。