いつもの朝いつものように抱かれた翌日の朝。
珍しく高野さんより早く目が覚めて、いまだに静かに寝息を立てているのをじっと眺める。
スッと通った鼻筋、長い睫毛、しっとりと柔らかい唇…ーー
軽くふにっと唇に指で触れてみたけど起きる気配はない。
「キスしたいな……」
思わずポツリと呟いてからハッとする。
いやいや!何言ってんだ俺!? いくらなんでもこんなこと言ったら起きちゃうだろ? 慌てて布団の中に潜って、寝たフリをする。
昨夜だって沢山したのに、まだしたりないような気分になってくる。
もぞりと布団から顔を出して高野さんの寝顔を見つめていると、余計に変な気分になりそうで、俺はギュッと目を瞑った。
「…キスしてくれねーの?」
「………!?え、あ…高野さん……起きて…っ?!」
まさかさっきの呟きが聞かれていたとは思わず、顔が熱くなってゆく。
すると突然高野さんの腕が伸びてきてグッと身体を引き寄せられた。
そしてそのまま深く口づけられる。
「んぅ……っ」
舌先が絡まりあってゾクゾクする。
何度も角度を変えながら、互いの吐息を飲み込むように貪り合う。
「……っふ、あ……お、きてたなら…言ってくれれば……い、のに…っ」
「さっきまで寝てたのは本当。半分だけな。律からキスしてくれるのかと思って期待してたのに、全然してくる気配なかったからちょっとガッカリした」
少しだけ拗ねたような口調なのが何だか可愛く見えてしまうのは気のせいだろうか。
「い、意識しちゃうんだから仕方ないじゃないですか……それに…しちゃったら俺の方が止められなくなりそう……あ!いや、その、あの……っ」
「お前なぁ……」
はぁ~っと大きなため息をつく高野さんを見て、恥ずかしくて穴があったら入りたい気持ちになる。
だって今まで蓋をしていたのを隠さずにすんだ分だけ、自分の気持ちを伝えることが以前より簡単に出来るようになったのだ。
それは今のようについ口にしてしまうこともあるわけで……。
でもそれを素直に伝えるなんてことは出来なくて、自分で自分が嫌になってしまう。
だけどそんな自分をこの人は優しく受け止めてくれるから、どんどん甘えてしまいそうになる。
「お前のそーいうとこ、いっつも心臓に悪い。」
「何がですか。俺はただ思ったことを言っただけで……っひゃ!」
いきなり首筋を舐められてビクリと肩が跳ね上がる。
「煽った責任取れよな」
「ちょ……っ待ってくださ……朝ですよ?!」
「知らねー」
結局朝っぱらから高野さんに美味しく頂かれてしまった俺は、その後丸一日ベッドの住人になってしまったのだった。