英語力アップの話。「…今何と言ったんだ」
類が司に向けて放ったその言葉は、紛れもなく英語で、とても流暢なものだった。
「フフ、言ってしまったら司くんの為にならないだろう?」
「むう…よし、一言一句翻訳してやるぞ!待っていろ!類!」
「楽しみだねえ。頑張ってね、司くん」
その日の晩、部屋に篭って猛勉強する司。類からもらった、彼のセリフを控えたメモと電子辞書や英語の参考書との長時間のにらめっこの末、やがて全文を自分なりに読み解き、類の言っていたことを理解し、目を見開く。
「〜〜っっ…!?類のやつこんな恥ずかしいことを…ッ…!」
恥ずかしくなると同時に、自分の英語力の無さが故にその場でそれに応えられなかった悔しさも募る。
「(だが…いい機会だ。この言葉に応えられる英語を学んで類を驚かせてやろう)」
翌日。
「司くん、あの言葉、理解できたかい?」
「……ああ。類。……」
たどたどしく、片言ではあったが、類の言葉に応えるために必死に学んだ英語を披露する司。
「えっ…司くん、それって…」
「どうだ、類。何か間違っているところはあるか?」
自分の言った言葉を理解するだけでなく、それに応えてきた司に驚く類と、勉強の成果を出せたことに高揚し、ドヤ顔になる司。
「…素晴らしいね。完璧だよ、司くん…!ありがとう…!」
感極まった類は、司にひしっと抱きついた。
「どわっ!…類のおかげで英語力が上昇している実感が湧く。オレの方こそ感謝しかないぞ。ありがとう、類」
その意を込め、司も類を抱きしめ返す。
「フフ、それは良かったな。司くん、……」
至近距離でお互いを見遣りながら、類が流暢な英語を放つ。それは、先程の司の返答に対する返答だった。
言い終わった後、しばらくの間。
瞬時に繰り出された英文はまるで外国人と話しているかのようで、頭の整理が追いつかなかった司は、類を見上げながらぽけらんとするしかなく。
「…………今何と言ったんだ」
「おやおや…これはまた、お勉強かな」
こうして司の英語力はやや偏りもありつつ、少しずつ上がっていくのだった─────。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
光ステ後のエリア会話で類くんが司くんに英語を抜き打ちチェックする(未来進行形のあれ)ってやつあったけど、定期的にやってて欲しい……っていう妄想からの小ネタでした。終われ。