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    isma_thenoir

    主に、ドラゴンズドグマ(DD2・DDON・DDDA・DD1)の二次創作で漫画やイラストを描いて投稿しています。
    時々その他の二次創作も上げるかもです。

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    isma_thenoir

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    ドラゴンズドグマ二次創作小説
    覚者イスマくん×エリノア馴初めのお話
    クエスト逢瀬の代償の後の話です。
    小説と言えるほどのものではないですが、こんなことがあった…というメモ程度に。

    #ドラゴンズドグマ
    dragonsDogma
    #二次創作小説
    secondaryCreativeFiction

    ドラゴンズドグマ「エリノアep_01」 エリノアは一人怯え震えていた。
     それは数日前の晩のことだった。領王エドマンは王妃の部屋を訪ねたかと思うと、虚ろな表情でエリノアに近付き、ベッドに押し倒すと彼女の首を掴み、締め殺そうとした。その時、領王が発していたレノアという女性の名。おそらく前王妃のことだろう…その女性の面影をエリノアに重ねたのか、まるで何かに取り憑かれたかようにエリノアを襲ったのだ。
     あの時の領王は、正気ではなかった。何を考えているのか分からない。それでなくとも、政略結婚で嫁いた先の領王は、まるで彼女には無関心で、ただ鳥籠のような離れの塔に閉じ込めているだけ。ドラゴンを退けた英雄とは呼ばれているが、エリノアがこちらの国へ来てから会話すらまともにしたことがない。どんな人物なのか彼女には知る由もなかった。
     嫁ぎ城に来て間もないエリノアの不安や寂しさを和らげてくれたのは、覚者と呼ばれている一人の青年だった。
     初めて会った時から、エリノアはずっと彼のことが気になっていた。王妃という身分ではしたないとは分かっている。しかし、侍女のマーベルに相談したところ、お友達になるくらいはいいのでは、と許してくれた。
     マーベルの計らいで、もう一度会えることになったのに、どうしてこんなことになってしまったのか…後悔しても仕切れない。
     あの晩、領王に襲われた時、助けてくれたのは他でもない彼だった。領王が王妃の部屋を訪ねてくることなどない。夜遅くになら、人目を避け彼と話すことができる…そう思っていたのに。その日に限って領王は現れたのだ。

     「この者…以前私が少し優しくしたのを勘違いして、このように部屋に忍んで参ったのですわ!かのように無礼な田舎者…牢につなぎ、鞭打って思い知らせてやってくださいませ!フェステ、そこにいるのでしょう?兵を呼びなさい!不届き者が、ここに…!」

     誘い招き入れたのは自分の方なのに、咄嗟のこととはいえ、助けてもらった彼に、あのような仕打ちをするなんて。しかし、彼をあの場から逃す為には、その方法しか思い付かなった。牢屋に連れていかれた後、すぐに助けに行こうとしたが、フェステが牢へと繋がる階段の前にいて邪魔をされ、刑の執行に間に合わなかった。

    「おやおや、これはこれは王妃様、先程はどうも…こんな所に何の用ですかな?まさかまさか、むち打ちの刑を命じた貴女様が、自らその罪人をお助けになると?……いやはやそんなことは有り得ませんですよねぇ…万に一つ、そのようなことがあったと分かれば、領王様の逆鱗に触れ、あの罪人は死刑…!いや、それでは生温いと、見せしめに公開処刑なさるかもしれませんなぁ…あ〜恐ろしや恐ろしやぁハハハ…」

    「───っ…」

    (そんな…)

     直ぐに救い出すことができず、助けに行けた頃には、彼は鞭打ちにされた後だった。彼は、エリノアを咎めることなく、小さく頷いて、早く地下牢から離れるよう告げるだけだった。
     もう嫌われてしまったに決まっている。きっと彼が会いに来ることも二度とないだろう…エリノアは、孤独と恐怖と後悔と、深い悲しみに陥っていた…。


     しかしその頃、当の覚者イスマは、領都グランソレンの城門を潜り、エリノアがいつもいる王妃の庭園へと向かっていた。
     もし彼女がいれば、挨拶くらいは出来るだろうと思ったのだ。
     エリノアがあの時、自分を牢獄送りにした時どんな心情だったか、彼女の立場を知っていれば、想像に難くない。
     自分を陥れることが目的なら、わざわざ牢獄にまで助けには来なかっただろう。あの時の言葉や涙に偽りがあったとは思えない。王妃はきっと自分を責めているに違いない、そうイスマは思っていた。
     あの時の傷は既に癒えている。だから元気な姿を見せて、鞭に打たれたくらいでは大丈夫だと、気にしないで欲しいと、安心させてあげたかった。例え自惚れだったとしても、彼女のことが気掛かりのまま、領都を離れるのは憚られた。
     しかし、王妃の庭園にエリノアの姿は無い。きっと城の離れの王妃の部屋にいるのだろう…。
     イスマは庭園からふと王妃の部屋がある塔の方へ視線を向けた。すると、その渡り歩廊に小さな人影が揺れているのが見えた。

    「あれは…」

     目を凝らすと、それはエリノアだった。良く見えないが、俯いている。
     どうしたんだろう…泣いているのだろうか?
     エリノアのその様子にイスマは釘付けになった。
     次の瞬間、彼女は歩廊の小壁体の間から身をのりだす。

    「‼」

     飛び降りるつもりなのか。塔の高さは二十メートル近くある。下は崖と海、命の危険がある。

    「待て…‼」

     イスマは叫んで庭園を突っ切って走った。

    「……!」

     エリノアがこちらに気付いて目を見開く。

    「戦士…さま…?」

    「動かないで…そこでじっとしていて!」

     エリノアの瞳には大きな涙の粒が溢れていた。
     イスマはエリノアの元へ走った。幸いまだ朝も早く、城内は人がほとんどいなかった。
     早まらないでくれ、間に合ってくれ、そう願って必死に階段を駆け上がっていく。
     息を切らして渡り歩廊に達すると、エリノアはまだそこにいてくれて、安堵した。

    「戦士様…どうして……」

     その時、海風が強く吹き小柄で軽いエリノアは煽られてバランスを崩した。

    「────っ!」

     間一髪の所で、イスマはエリノアの腕を掴み引き降ろした。
     エリノアは顔を隠してうずくまり、嗚咽をもらして泣いていた。

    「ケガは…?」

     石の塀で擦れたドレスが少し破れてしまっていた。何処か怪我をしていないかと心配になった。
     エリノアは何も言わず、首を左右に振るだけだった。ケガはないようで安心したが、酷く憔悴した面持ちで泣き崩れる彼女にイスマは掛ける言葉を失ってしまった。
     今にも壊れてしまいそうな細い体をそっと支え、エリノアを見つめたまま、イスマは苦しい表情を浮かべた。

    「…わたくし、怖いのです。ドラゴンも領王様も…皆…みんな…」

     エリノアが絞り出すように、掠れた声で言った。

    「領王の手から助けてくださったあなたにまで、酷い目に合わせてしまいました…もっと、他に方法があったかもしれないのに。自国のことが頭に過ぎって…。
     ドラゴンをも退けたことのある領王を相手に争いになったら、あなたはあの場で斬り殺されるか、生き延びたとしてもいずれ死刑になってしまう…それで咄嗟に、あの時はあの方法しか思い付かなかったのです。
     直ぐにでも助けに行きたかったのです…ですが、間に合わなくて…過ぎたことを、こんな言い訳のようなことしか言えない、私自身も許せなくて…」

     イスマは自分のことのように胸が痛んだ。その小さな肩にはあまりにも重く感じられた。それと同時に、自分が犯した過ちにも気付いたのだった。
     イスマは、静かに切り出した。

    「…見て、ほら、俺は大丈夫だよ。覚者だから、鞭に打たれたくらいではどうということはない。君があの場でああ言うしかなかったのは承知しているし、下手に俺を庇えば、あなたにも、あなたの国にも危険が及んでいたかもしれない。 
     それより…フェステに後をつけられていたことに気付かなかった…俺が迂闊だった。あなたの立場を知っていながら、危ういことをしているって分かっていたのに…。王妃の機転がなければ、俺は死んでいたかもしれない。…助けられたのは俺の方なんだ。」

     イスマのその優しい言葉にエリノアの胸はぎゅっと締め付けられた。悔しさと、嬉しさで…。そして、ああ、もうこれで彼が私に近付くことは金輪際ないのだ、とも思った。

    「本当に、ごめんなさい…」

    「……………」

     震えの止まらないエリノアを、イスマはそっと腕に包み込む。
     マーベルさんはこんな時にどこへ行ってしまったのか…幸い辺りには誰の姿もない。
     彼女が落ち着くまで、しばらくそうしていた。


    「…俺には、あなたの願いを叶えることは出来ないかもしれない…。だけど、この息苦しい城を出て、連れ出せる方法なら無い訳じゃない…。」

    「…………?」

    「あなたが俺に命令を…依頼をしてくれればね。」

     その言葉に、エリノアはようやく顔を上げた。

    「護衛の名目で、一時だけなら…」

     イスマと目が合う。穏やかなその瞳に安心感が溢れる。
     海風が収まり、カモメ達も戻ってきたようだ。

    「外には美しくて心が安らぐ場所がいくつもあるよ、そこへ連れて行ってあげる。
    だから、今みたいに誰にも言えなくて辛くなったら、俺を呼んで。…一人で泣かないで。」

    「戦士様…。」

    「いいね、これは約束だよ。」

     その言葉はエリノアにとって、あまりにも優しかった。イスマの真剣で穏やかな表情と声色に、エリノアはまた、瞳に大きな涙を浮かべた。
     そして華奢な手で顔を覆うと、小さく頷いた。

    「ありがとうございます…戦士様…」

    「イスマでいい」

    「イスマ…ありがとう、イスマ…」


     それから、イスマは時々城へ訪れることがあれば、必ずエリノアの元へ顔を出し、旅先で摘んだ花を旅の土産話と一緒にプレゼントしたり、時には短い時間談笑をすることも増えた。彼女とマーベルだけの時は、名前で呼びあっても構わないということになった。エリノアは、いつしかイスマと会って、城の外へ出掛けることが、唯一の心の安らぎとなっていったのだった…。

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