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    さめはだ

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    さめはだ

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    一二♀前提のタク+二♀
    前日譚

     見知った玄関にちょこんと置かれた、これまた見知ったローファーに嫌な予感がした。他に靴がない、母さんたちは出かけてるらしい。乱雑にスニーカーを脱ぎ捨て、大きく足音を立てながら自室の扉を開けた。

    「おいこーじ!お前なァ!」
    「ああおかえり」
    「ああおかえり…じゃねーよ!なにしてんの?!」

     思わずそう突っ込んでしまうのも無理はない。何で俺のTシャツ着てるんだよ。あんぐり口を開けて驚く姿に「すまない、借りた」と口を開く。白い生足がそのままベッドへむかい腰を降ろした。

     こいつがこうやって俺んちに入り浸るのは珍しくもない。恋愛感情?ないない、ある分けないだろ。コイツの裸見るよりコンセント抜き差ししてる方がまだ興奮するわ。一度着替途中に出くわしたことがあったけど「あ、悪い。服借りるな」だぜ?輝ニ曰く「下着姿見られても別に…拓也だし」だ。こういうときって、例え相手がただの友達でも「きゃあ!」とか言って理不尽に怒るもんじゃねーの?クラスのアニメ好きな奴に借りた漫画の中の女の子はぷんぷん可愛らしく怒ってたぞ。まず前提として、男子高校生の部屋で着替えてる女の子ってのがおかしいだろ。今もどうせ、制服にシワがつく〜とかで借りたんだろうが…せめてズボンぐらい履けよマジで。 
     てかむしろ、こいつには謝ってほしいぐらいだ。めちゃくちゃいいぞってサンプル見せられて、こりゃ最高だわ♡って盛り上がってきたとこで黒髪長髪タレ目が流れてきた瞬間の俺の気持ちよ。興奮返せ、これからってときに叩き落される感じね。そりゃ元気だったムスコも手元でしゅんってなるわ。

     とまあ言いたいことは山程あるけど、言ったところで聞かないことはわかってるからため息だけついて、離れたとこにある椅子へと腰掛けた。

    「んで、今日はなに?」
    「一応報告しとこうと思ってな」
    「報告ぅ?メールでいーじゃん」
    「驚く顔が見たくてな」

     もったいぶるから「生理?」と聞いたら「先週終わったから違う」と返してきた。だから距離感バグってるんだって。別に今更いいけど。

    「いいから、早く教えろよ。気になるじゃんか」
    「彼氏ができた」
    「へぇ〜彼氏かぁ………え、彼氏?!」

     輝一と付き合い出したのか?!聞いてない聞いてない!あいつめ…ついに妹に手ェ出しやがって!せめて報告ぐらいしろってんだ!水くさいなぁっ!

    「……近親相姦かぁ…」
    「きんしんそーかん?」
    「まあ、愛の形は人それぞれって言うし…お前が良いならそれでいいや。輝一にちゃんと幸せにしてもらえよ?」
    「なんで輝一が出てくるんだ?…何か勘違いしてないか」

     え?もしかして相手は輝一じゃないのか…?顔をムッとさせる輝ニをみて、再び口をあんぐりと開けて驚いた。

    「…もしかして、他の男、なのか…?」
    「そうだけど…当たり前だろ」
    「ええぇえええ?!えっえっ輝ニっお前っ彼氏が出来たのか?!」
    「うるさっ……だから最初からそう言ってるだろう」

     相手はちゃんと、ニンゲンのオトコなの?って言葉は言わないでおこう。確実にぼこぼこにされる。

     冗談はさておき、これはまずい。非常に、まずい。しっかりしてるように見えて大概ポンコツな奴だ。そんな輝ニに男子高生なんて、腹を空かせたライオンに生肉を差し出すようなものだろ。すぐにペロリだ。危険だ…危険すぎる。
     
     イスからおり、移動して輝ニの横へと腰掛ける。二人分の体重をのせたベッドがぎしりと音をたてた。

    「輝ニさん、今から俺の言うことを復唱してくださいね?」
    「ん?ああ、わかった」
    「"男はみんな狼だ"、ハイ!」
    「?なんだそれ」

     いいから!と細い肩を掴んだ。俺の神妙な面持ちにたじろいだあと、ゆっくり口を開く。

    「おと、こはみんなおーかみだ」
    「もう一度!"男はみんな狼だ"、セイッ!」
    「なんだよホント…おとこはみんなオーカミだ、これでいいか?」

     不安だ…こいつ、ホントにわかってんのか?いーや絶対わかってないね。俺の前で愛想なんか皆無な目をぱちくり動かし、むしろ怪訝な顔を浮かべてる。

    「…なんかあったら、俺か輝一にちゃんと言うんだぞ?」
    「はあ?なんで………うん、わかった…」

     真剣な俺をみてグッ息を飲んだあと、首をたてにふる。腑に落ちてないとこはありそうだけど、やられっぱなしでいるような女じゃねーしまあ大丈夫か…

     

     まさかこのあと、あんな出来事がおこるとは思わない俺は、さてとと声を出しながら立ち上がりこいつに履かせるズボンを取りに行く。なんか話いい感じに締めれたんじゃないか?

     俺よりも輝ニが履いてる気がするスウェットをチェストの上段から引っ張って、ベッドの方へと放り投げる。


    だからお前は!なんっで俺の前で着替えるんだ!パンツ見えた!全然嬉しくねぇ!!

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    Replies from the creator

    さめはだ

    DONE成長拓2♀
     これが何度目のデートなんてもうわからない。ガキの頃からの付き合いだし、それこそ二人で出かけた回数なんて数えきれないぐらいだ。良く言えば居心地の良さ、悪く言えば慣れ。それだけの時間を、俺は輝二と過ごしてるんだしな。やれ記念日だやれイベントだとはしゃぎたてる性格はしていない。俺の方がテンション上がっちまって「落ち着け」と宥められる始末で、だからこそ何もないただのおデートってなりゃお互いに平坦な心持になる。

     でもさ……。

    『明日、お前が好きそうなことしようと思う。まあ、あまり期待はしないでくれ』

     ってきたら、ただの休日もハッピーでスペシャルな休日に早変わりってもんよッ!!



     待ち合わせは12時。普段の俺たちは合流してから飯食って、買い物したけりゃ付き合うし逆に付き合ってももらう流れが主流だ。映画だったり水族館だったり、行こうぜの言葉にいいなって返事が俺たちには性が合ってる。前回は輝二が気になっていたパンケーキだったから、今日は俺が行きたかったハンバーグを食べに行った。お目当てのマウンテンハンバーグを前に「ちゃんと食い切れんのか」と若干引き気味な輝二の手元にはいろんな一口ハンバーグがのった定食が。おろしポン酢がのった数個が美味そうでハンバーグ山一切れと交換し合い舌鼓を打つ。小さい口がせっせか動くさまは小動物のようで笑いが漏れ出てしまった。俺を見て、不思議そうに小首を傾げる仕草が小動物感に拍車をかけている。あーかわい。
    1780

    さめはだ

    DONEモブ目線、成長一二。
     鍵を差し込んで解錠し、ドアノブを回す音が聞こえてきた。壁を隔てた向こう側の会話の内容までは聞こえないが、笑い声混じりの話し声はこのボロアパートじゃ振動となって伝わってくる。思わずついて出た特大のため息の後、「くそがァ…」と殺気混じりの呟きがこぼれ落ちた。

     俺の入居と入れ違いで退去していった角部屋にここ最近新しい入居者が入ってきた。このご時世にわざわざ挨拶に来てくれた時、俺が無愛想だったのにも関わらずにこやかに菓子折りを渡してくれた青年に好感を持ったのが記憶に新しい。

     だが、それは幻想だったんじゃないかと思い始めるまでそんなに時間はかからなかった。


    『あッ、ああっ…んぅ…ぁっ…!』

     
    「……」

     ほーら始まった。帰宅して早々、ぱこぱこぱんぱん。今日も今日とていい加減にしてほしい。残業もなく、定時に帰れたことを祝して買った発泡酒が途端に不味くなる。…いや、嘘です。正直、めちゃくちゃ興奮してる。出会いもなく、花のない生活を送っている俺にとってこんな刺激的な出来事は他にない。漏れないように抑えた声もたまらないけど耐えきれず出た裏返った掠れた声も唆られる。あの好青年がどんな美人を連れ込んでるのかと、何度想像したことか…。
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