山猫は美氏風力階級の最上階で眠る。「おや。まだそれを使うの?」
青い筆記体のドラッグストアで、ミスタが無造作にカートに投げ込んだ黒いスプレーを見遣り、ヴォックスが含むような言回しをしたので、孔雀色の瞳をパチパチとさせてちょっと首を傾げた。
「もうすぐ無くなりそうだし。ん?なんかあったっけ?」
「今使っているのが無くなったら、私とメゾンに行くと約束していたよ」
あーそうだったっけ。とクリスマス商戦に乗ったカラフルなコフレやグルーミングギフトのセットの箱やらバッグやらがぎっしり並んだ棚を眺める振りをして、僅かに機嫌を損ねた金色の瞳から目を逸らす。
特に拘りがあった物でも無くTEENの頃からの習慣。約7ポンドの嗜み。
『ミスタ、お前の纏う物を私に贈らせてはくれないか?』なんて言われていたっけ。
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