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    キツネうどん ケモ耳トキオのもくろみ 続き 完全に落書き 続きも考えていない

    キツネうどん 承ゴウが大きくため息をついた。眉間にはしわが寄り、形の良い眉は八の字にしかめられる。
    細い指先には、一杯のかけそばならぬ、一個のインスタントヌードル。緑色のパッケージのそれは、蓋部の半分に障子窓を模したであろうデザインと、もう半分には黄金色のあげと滑らかなうどんの写真が載っている。
    「つまり、このヌードルを食べると」
    「このようにケモ耳が生えます」
    ノロノロと口を開いたゴウの言葉の先を、トキオのすがしい声が引き継いだ。さながらテレビショッピングの掛け合いのようである。
    トキオが白い指先につまんでみせるのは、まさしく三角形のキツネの耳。白い毛並みはアローラロコンを彷彿とさせる。目の前の現実を受け止められず、ゴウが呻いた。
    「いやいやいや、おかしいっしょ」
    「でも、実際そうなんだよ」
    否定されたと感じたのか、トキオが唇を尖らせる。
    「これを食べてすぐに生えてきてね。あ、痛みはないよ。本当に、ピョコッって感じで」
    尻尾も生えたんだと椅子から立ち上がり、クルリと反転してみせる。ピョコピョコと太めの尾が左右に揺れて、意識的に動かせるものであることを示していた。
    「なあ…。何でこれ、俺の名前が書いてあるの…」
    承諾できない現実からそらしたゴウの目線が、蓋に書かれた文字に止まった。
    「ゴウの分だからだよ」
    「俺も喰うの?」
    「そのためにここに来たんだもの。サトシ君とシゲル君の分もあるよ。せっかくだからみんなで食べようと思って持ってきたんだ。みんなでキツネパーティーって、面白いでしょ?ハロウィンの延長みたいで」
    「ハロウィンは自分で仮装して自分で戻れるけど、それ、戻れてないじゃん!」
    「え?戻れるよ」
    慌てふためくゴウに、トキオはそんなことかと応えると、目線だけで軽く上方を仰いだ。すぐさま白い耳は前方に倒れ込み、銀髪の中に埋もれると、そのまま影も形も見えなくなる。
    「指を曲げる感覚で、耳を折るんだ。尻尾も同じ」
    再び立ち上がり、クルリと回る。服の裾から出ていた尻尾はキレイに消えていた。
    「白状するとね、僕はシゲル君のケモ耳姿が見たいんだ」
    「突然の告白!」
    「だって、絶対かわいいよ!シゲル君のケモ耳と尻尾だよ?こんなチャンス、滅多に無いんだよ!」
    トキオの言葉が流れに乗せて早くなる。なんとしてもゴウを仲間に引きずり込もうという思いの表れだ。杏色の瞳は期待に潤み、頬は紅潮している。
    「その表情で頼めば、シゲルの奴、大抵の事なら聞くんじゃないか?」
    シゲルがトキオに対して抱いている感情は、友情から少し外れたベクトルに向いている。それを知っているゴウが呟くと、トキオがウンザリと顔をしかめた。
    「『さらし者になる趣味はない』とか言われて、嫌われて終わりだって!だから、ゴウとサトシ君が一緒にケモ耳してくれることで、彼のハードルを下げたいんだ!」
    「本当に隠さないな!」
    「ここは協力を仰ぐところだから、腹を割るよ!お願い!」
    興奮したせいか、トキオの頭部からは再び三角の耳が顔を出していた。これは嘘がつけないなとゴウが口元だけで苦笑する。
    「それにさ。ゴウだって、サトシ君のケモ耳姿、見たいでしょ?」
    「え」
    「似合うと思うけどなぁ」
    友人の反応に脈ありとみたトキオがたたみかけると、ゴウの体温が顔を中心に一気に上がった。
    「だ、ダメだ!」
    「なんでぇ?」
    一瞬の沈黙を破ってゴウが叫びトキオが不満の声を上げた。
    「サトシのそんなカッコ、誰にも見せたくない!」
    なおも何かを言いつのろうとしたトキオが、ゴウの震える声に口を閉じた。細く息を吐き出すと、友人の頬を両手で挟んで優しく声をかける。
    「そんな顔、サトシ君に見せちゃダメだよ」
    「ど、どんな顔してたの?俺!」
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