ケモ耳尻尾キツネうどんの効用で生えたゴウの尻尾は真っ黒で、太さこそあるものの僕のそれのようにカールしてるわけではない。重力に負けたかのように、椅子のすき間からはみ出して力無く垂れている。
「ゴウのスケベ」
人払いのすんだ部屋の中、僕は低い声で不満を告げた。頬杖をつき、全身で苛立ちを表現する僕に対し、スケベ呼ばわりをされた当のゴウは頭を抱えて机に突っ伏している。液体なの?ってくらい真っ平ら。
「…ちがう…」
何かに叩きのめされたゴウから、掠れた声が絞り出された。黒い尻尾が力無く揺れる。
「じゃあ、どうしてこんなことになってるんでしょうねぇ」
こんなこと。とは、今の状態。
ゴウの「トキオと二人だけにして」というお願いのもと、ようやくまみえることの出来たケモ耳尻尾のシゲル君はサトシ君と一緒に部屋を出た。…というか、ゴウを心配して付き添いたがるサトシ君をなだめすかして連れてった。
1995