ちーとど ア、千早っておかしくなっちまったんだ。
バカなところもあるが、賢い男であると思っていた。藤堂は後ろで繰り広げられる会話を他人事のように聞きながら、髪をほどき、ハーフアップに結びなおした。
夏休みももうじき終わる、八月の終わり頃。外はようやく暗くなったが、かといって夜の涼しさが訪れるわけでもなく蝉は五月蠅い。部室の大型扇風機を消せば、拭いた汗も一気にぶり返すだろう。
振り返れば、山田はもう帰りたそうな顔で窓の外を見ており、要は難しそうに眉の間を狭めていた。清峰は相変わらず何を考えているのか分からない顔でグリップを握り、千早だけが、にこにこと釣った目を細めている。
「……ごめん、もう一回言ってもらっていい? ワンモア」
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