蛇の釣果 ダ江のほとりには一人の漁師がいる。
茅ぶきの小屋を結び、一日中川を眺めて暮らすその漁師は、いつも小高い巌に座って釣り糸を垂らしていた。得物は白い釣り竿一本きりで、石づくりの柄は他の漁師が使うものと比べて奇妙に短かった。得物はともかく、釣りの腕はなかなかのもので、日暮れのころには一尺あまりの竹籠が魚でいっぱいになった。しかし、漁師はいつも、わずかな魚を籠に残し、その余はみな川に還してしまうのだった。手元の二、三匹もみずからは食らわず、市でわずかばかりの銭に替える。その銭も晩酌の酒代に費やしてしまうので、漁師のふところは素寒貧が常だった。
寝起きする茅ぶき小屋には、何年も使われていない様子の古びた小舟がかけてあり、その他には何も置かれていなかった。およそ人の住む家とは思われないぼろ小屋を見て、ダ江の漁師連中はこんな冗談を言いかわした。
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