小鳥の唄サンクレッドが室内に一歩踏み入れた途端、鼓膜をくすぐったのはご機嫌なソプラノだった。小鳥のように体を揺らし、桜色の唇で民謡を歌う少女。その姿を見つけた青年は微笑ましそうに目を細める。
お土産のお菓子を恭しく掲げながらアシリアの目の前に行くと、彼女はぴたっと歌を止め、まんまるい両目で神妙そうにサンクレッドを見上げた。数秒の沈黙の後、銀髪の青年はほんの少しだけ呆れたような、吐息紛れの笑みを零す。
「アシリア王女、本日お持ちしましたデザートはウルダハで大流行の逸品でございます」
端正な顔立ちをした青年はまるで執事のような恭しさで傅く。その振る舞いに、王女と呼ばれた少女は鈴を転がすような愛らしい笑い声を挙げた。
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