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    sakurattihikari

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    sakurattihikari

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    魔王城内部の書庫とジーヴルとジャルデンのなんか
    勝手に人の子借りたりしてるぞ しかし扱いごめんな現在進行系
    ジャがちょっと潮風感じる

    紙と木、あるいは皮でできた書物。それらを収納する壁によってつくられた、静けさの籠もる少し冷たい空気の立ち込める空間。男は、己の踵が床を叩く音を耳にしながら、その足を奥へと進めた。
    魔王城内に作られた、本の収蔵と管理のための空間である書庫へ、ジーヴルは訪れていた。人に用事があったためである。しかしその人というものが、領内の見回りなどを請け負う、基本的にどこにも留まらないといった職分なもので、同じ軍に属していても、会う機会というのはそう多くはない。そのためそんな彼が比較的よく訪れるらしいこの書庫に、ジーヴルは珍しく自ら足を向けた。
    書庫にもいくらかの魔物たちはいるが、城内の各所や他の地域に比べれば少なく、静かな方だと感じる。それは喧騒の有無か、存在の騒がしさの有無か。少数人が集って大声をあげているよりも、大人数の静寂を浴びている方が鬱陶しく感じることもあるのだ。少なくとも現在の書庫の様子とは、片手で数えられるほどの数の個体だけがおり、それらは静寂を好んでいるらしいのだった。
    書庫はそこそこな広さがあり、端から端までくまなく探そうとすればそれなりに長く時間を要する。時間を無駄にすることはジーヴルとしては本意でなく、可能な限り避けたい行為であった。しかし幸運なことに、ジーヴルは目的の人物の存在を、この空間に確かに感じ取っていた。迷わず、その足を一方に向けて動かした。

    道中、目線をたまに通路の脇にずらすと、丁寧に並べられ壁をなしている本棚の背表紙たちが視界に入る。それらの中には、自身の“主”であるエルベの屋敷の書庫で目にしたタイトルもいくらか見て取れた。大体の本はこの壁に収まっていて、かつ彼の書斎で見たものよりも多くの本が収蔵されているのだろうと思うと、その総てを読破してしまいたい気持ちが静かに沸き立つ。それ自体は時間さえあれば可能であろうが、今彼が身につけているかなり度の強い眼鏡の存在を思い出すと、その気も少し削がれるのだった。エルベの“従者”として人の肉体を持ったあと、明かりも殆どつけず、少し埃っぽい空気と闇に満たされた書斎で数日にかけて本を読み続けていると、仕立てたばかりのジーヴルの肉体はあっという間に悲鳴を上げた。エルベの苦笑いとともに介抱されながら、人間の身体は弱すぎると散々悪態をついたジーヴルは、エルベから「必要だろう」と渡された眼鏡を常に身に付けなければならない状態になってしまった。

    書庫の奥へ進むと、見覚えのある人影が目に入った。
    幼い肉体の獣人。小さな耳が頭上部に位置する、橙に寄った赤みの強いブラウンが印象的な少年。簡単に観察すると、困ったように何かを探しているようだった。
    ジーヴルは“なんとなく”そちらに足を向けると、

    「そこの(*図書館のねずみを示す呼び方*)、少しいいか」
    「…え?僕のこと?」
    「そうだ。ひとつ聞きたいことがある。」
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