「難しい顔してますね」一真はそう言い、光之介の隣に腰を下ろす。光之介は煙草を灰皿に置くと、一真に調査資料を差し出す。「今回の事件、お前はどう思う?」
光之介から渡された資料には、一枚の写真が載っている。写真の中では、一人の男性が微笑んでいる。年齢は30代後半くらいだろうか。端整な顔立ちをしている。しかし、どこか違和感があった。
「なんか、上手く言えないんですけど、嘘っぽいというか……笑顔が偽物みたいっていうか」一真は言った。
この男の名前は、宮前清之。とある会社の社長だ。表向きの顔は誠実そうな人物に見える。だが裏では、違法薬物の販売や人身売買などに手を出しているという噂もある。
「ばかにできないからな。お前の勘」
光之介の言葉を聞きながら、一真はもう一度写真を眺める。すると、あることに気が付いた。
それは、男の右目の下に小さなホクロがあることだった。一真の脳裏にある人物が浮かぶ。
それは、宮前の秘書である女性のことだった。
「センセー、これ……」一真は呟いた。
その時、外から誰かが勢いよく入ってきた。息を切らしている。走って来たようだ。
光之介と一真はその姿を見て驚いた。
そこに立っていたのは、宮前の秘書の女性だったからだ。彼女は乱れた呼吸を整えると、真剣な表情で言う。
「宮前が殺されました」