食欲となんちゃらは紙一重 ぐぅぅぅぅう。そんな地響きのような音が教室中に響き渡る。
皆が何だ何だと騒ぐ中、音の犯人の目の前に居る桐生三輝が声を掛ける。
「おょ〜?杉ちゃん、朝ご飯食べ損ねたのん?」
「……………………」
あのけたたましい音の正体は、杉下京太郎の腹の虫が鳴いた音であった。
桐生の質問には答えず、杉下は顔を顰めてある一点を見つめていた。
視線の先には、楡井、蘇芳、そしてその二人と何やら話しては顔を赤くしたり叫んだりしている桜の姿。
ぐうぅ。またしても杉下の腹が鳴る。
「……………………チッ」
どうもアイツを見ていると腹が減る。そう気付いたのはここ最近だ。初めはアイツを視界に入れると腹が立つので、それでカロリーを無駄に消費して腹が減っているのだろうと思っていた。だが最近はどうだ。特にイラついた経緯は無くとも腹が減る。今日だって朝ご飯はしっかりと食べてきた。茶碗に山盛りの白米を平らげてきたのだ。なのに腹が減る。どう考えてもおかしい。
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