「ぜっっったい、嫌だからな!!!!」
麗かな春の澄んだ青空に大きな声が響き渡る。
ここは一年中穏やかな気候に恵まれ、豊穣の国として名高い春の国、それを治める一族の住む王宮である。
「ネロ、私だってあなたを冬の国に1人で行かせるなんて心配でしょうがないのですよ。でもこれも春の国のため。どうか受け入れてくれませんか?」
春の国を治める現女王であるシャイロックは、困ったように眉を下げ、実の妹であるネロに優しく語りかける。
「断る!冬の国なんて、絶対に行きたくない。」
「どうしてもですか?」
「だって、シャイロックも知ってるだろ?あの国がどんなに野蛮で恐ろしい国か。」
「確かに危なっかしい国ではありますが、このまま放置しているわけにもいきません。」
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