夕暮れ。遠くガラディオン湾の向こうに沈んでいく陽光が、リムサ・ロミンサに停泊する船のマストを赤く照らしている。
船着場のすぐ横にある開けた造りの酒場のカウンター席へ腰を下ろし、ウェドは酒の入ったジョッキをのんびりと傾けていた。
悪くない報酬の仕事が思ったより簡単に片付いた。故になんとなく時間を持て余し、結果船乗り達がロープを巻いたり荷を担いで行ったり来たりしているのを眺めながら周囲の会話に聞き耳を立てている。
酒場は情報の宝庫だ。次の仕事の目処を立てるのにも、捨ておけない"仕事"の影を見逃さないという点でも役に立つ。
…ウェドにとって難点といえば、長居をし過ぎると女性から断れない誘いを持ちかけられたりすることくらいだろう。相手が男なら気が乗らなければ理由をつけなくともさっさと捲けば良いが、女性から声をかけられては無碍にすることはできない。
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