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    くごちゃん

    @9595Kugo

    SPN S1〜S15済 S/D再熱オタク
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    くごちゃん

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    手塚治虫の奇子好きすぎて、S/Dにやって頂きました。モブ視点ですので、お好きな名前を入れてお楽しみに下さい。
    モブが名家のメアリーにお手紙?を書くというS/D オメガバース(α×Ω)非ハンターAUです。

    #SPN
    #S/D
    ##S/D

    お手紙 愛しのメアリー・ウィンチェスター様へ

     奥様があの忌まわしき火事に巻き込まれ、亡くなられてから、随分と月日が経ちました。
     あの頃は四歳だったディーンが、もう十六歳に。生後半年だったサムは、十二歳を迎えました。
     時が流れるのは、本当に早いですね。あっという間でございました。
     可愛らしいお顔だったディーンですが、少年の凛々しさを蓄えて綺麗なお顔へと変わりました。声変わりの時期を迎え、少年が持つ清らかさと、妙に大人びたアンバランスな雰囲気が異性問わず同性を惹きつけているようです。人受けが良いのは宜しいのですが、女の子を取っ替え引っ替えしております。奥様が生きてらしたら、きっと許さないでしょうね。
     奥様は生後半年のサムしか知らないでしょう。十二歳を迎えたサムの身長は低いですが、本当に賢い子供でして、ありとあらゆる成績がAかA+ばかりで私達も鼻が高いです。
    「将来はお医者様か弁護士になれるね」と話しておりました。
     サムの子犬のような目でお願いされると、ついついお菓子を多く渡してしまったりと、甘え上手な一面もございます。そんなサムの世渡り上手な部分は、私達メイドの間で可愛らしいと話題に上がります。
     サムはディーンにべったりとくっついていおりますが、奥様が亡くなられた後の出来事を考えると、サムがディーンにべったりなのも仕方ないのです。

     奥様、今から奥様にとっては辛い話をさせて頂きます。
     そして、私がもう亡くなられた奥様に届きもしない手紙をしたためているのは「ウィンチェスター家」のこの惨状を誰かに知って頂き、手を差し伸べてほしいからです。

     奥様が亡くなられて、旦那様——ジョンは狂ったように「黄色の目の悪魔」を追うようになりました。あの火事は「黄色い目の悪魔」の仕業だと仰るのです。魔物は存在している、あの悪魔と戦う! と、可愛いディーンやサムは二の次になってしまいました。数日、下手をしたら、三ヶ月は家を空けることもありました。何と悲しいことでしょう。
     それでも、そんな旦那様をディーンもサムを愛しておりました。
     思春期のサムは、上記のように頭の回る子供ですから、旦那様に楯突いては酷く叱られておりました。
     けれども、そんな時に絶対にディーンはサムを庇うのです。
     サムにとってディーンは、親であり、兄であり、今思えば、愛慕を抱く存在なのだったのでしょう。ディーンはいつでもサムを深く愛し、庇い、時には喧嘩もしておられました。

    「第二次性調査」を覚えておいででしょうか?
     男女別の他に、オメガ・ベータ・アルファと分かる、あの調査のことです。
     旦那様のジョンも、奥様も共にアルファでしたね。私達はてっきり、サムとディーンもアルファなものだと思っておりました。
     名家のウィンチェスター家ではアルファ同士の結婚が鉄則でございました。奥様は「くだらない」と言っておいででしたね。旦那様には内緒ですが。
     それと、ウィンチェスター家の感謝祭を覚えておいででしょうか?
     ボビー様、エレン様、クラウリー様、ロウィーナ様………錚々たる面々が、我がお屋敷に来てくださいましたね。

     ディーンが十四歳、サムが十歳の頃です。
     いつものように感謝祭を祝っているところに、突然ディーンが「発情期」を迎えたのです。あの場は阿鼻叫喚でございました。
     ウィンチェスターの一族はアルファの方が多いですから、お腹を空かせたライオンの檻においしそうな肉を投げ込んだのと同じです。皆がディーンにあてられ、発情しておりました。
     ボビー様とエレン様が機転を利かせ、誰もが存在を忘れていた第五ゲストルームに一旦ディーンを閉じ込め、感謝祭は一旦お開きとなりました。
     そうです、あの部屋はゲストルームですから、内鍵でのみ開くことができます。

     その後も、第五ゲストルームの前ではひどく甘ったるい匂いが漂い(と、ご親族がおっしゃておりました。私はベータですので分りません)ディーンを求めて発情した、ウィンチェスターの親族やお客様がゾンビのように部屋の前を徘徊しては、蹴散らしました。
     それに「名家の看板を背負ったオメガは希少だ!」とディーンを売り出そうとするクラウリー様など、本当にあの日は大変でございました。

     親族の前の発情ですから、言い逃れは出来ません。
     アルファ専用と言っても過言ではない、名門高校にディーンは通ってましたから、このままでは学校に行くこともことすらままならない。さて、どうしよう。
     臭いものには蓋をせよ、と本当に旦那様は蓋をしてしまったのです。
     そうです、お屋敷で忘れられた第五ゲストルームにディーンを閉じ込めてしまったのです。
     あまりにも酷い話だと私が抗議いたしましても、旦那様は聞く耳を持ちません。

     ディーンもまだ「第二次性調査」を受ける前で、自分がオメガだと知らなかったらしく、えらく戸惑っておりました。ですが、彼は気丈に振る舞い、発情で息も絶え絶えになりながらも、サムを慰めておりました。
     発情期が終わるまでは、学校も通えず、存在を忘れていた部屋から一歩も出てはいけないのに。
     そうは言ったって、どうせ一週間や二週間だと思っていたメイドもたくさん居りました。
     私もそう思いたかったのですが、一週間、二週間、一ヶ月、半年………ディーンはあの部屋から出してもらえることはありませんでした。

     そして、ここで私の責任でございます。
     ディーンと一週間と三日、離れたサムが「ディーンに会いたい」と駄々を捏ね始めたのです。
     サムは成長期だというのに、ディーンとお屋敷内で離れて暮らすことを寂しく思い、食事が喉を通らなくなっておりました。あの、ステーキ二枚はペロリと平らげるサムがです。
     今まで文字通り、ディーンと「寝食共に」過ごしていたサムにとっても、辛く苦しいものがあったのでしょう。それはディーンにとっても同じでした。
     第五ゲストルームは、元々お客様の為の部屋ですから、キングベッドに豪勢なバスルームにトイレと生活の一式は揃っております。あの部屋だけで生活することは可能なのです。食事以外は。
     一日三回、ベータのメイドが食事をお持ちしても全く手をつけられていないことが多々ありました。ふっくらとされていた頬がやつれ、元気がなくなるディーンを見るのは本当に心が痛みました。
     発情期中はご飯も碌に食べられません。発情期が終わり、少し落ち着いた一週間と三日後。
     悲嘆で痩せゆく二人に耐えられなくなった私は、「発情期は会わない」ということを約束に、旦那様が寝静まった夜に会わせることに致しました。

     それはそうと、ディーンの初めての発情期はそれはそれは壮絶なものでした。
     一度始まってしまったものは抑制剤を飲んでも良くなりません。発散しなければならないのです。ですが、アルファの精でないと、オメガは発散出来ません。周りにアルファは沢山おりますが、親族をあてがうわけにいきません。パートナーが居ないオメガの発情期は拷問のようなものと聞いておりましたから、ディーンは本当に苦しかったに違いありません。
     私達が掃除や洗濯で部屋にお邪魔する度に、ディーンは身体を丸くさせ、苦しみ喘いでおりました。
     フラットシーツ、コンフォーター、ブランケットとありとあらゆる、身体に掛けられるものをベッドの上にかき集めた疑似巣の上で、発情に苦しんで真っ赤な顔でボロボロと泣いているのです。甘ったるい匂いは分かりませんが、(重ねて申し上げますと、私はベータです)艶やかな空気を纏った、絢爛な瞳が真っ赤に染まっているのを何度も見ました。
     それなのに「サムには『俺は元気だ』と伝えてくれ」と泣きながらお願いするのです。
     こんな姿ばかり見ていると、サムに会わせてやりたいと思うのが人の心というものではないでしょうか?

     二人は再会を始めると、みるみるうちに元気になっていきました。
     サムもまたステーキ二枚はペロリと平らげ、ディーンも食事を残さず召し上がるようになりました。旦那様が外出の際は、日がな一日、二人で部屋に閉じ籠っておりました。
     サムの「二人で会う際には部屋に誰も近付けないで欲しい」という言いつけ通り、二人で会う際には部屋に誰も近寄らないようにしておりました。
     旦那様が戻られた際には、お屋敷内にある内線で電話のベルを鳴らして知らせる。これが私達と二人のお約束でした。

     そんな生活が二年は続きました。そう、今です。
     ディーンは十六歳、サムは十二歳となりました。
     始めは、学校に通えなくなったディーンにベータかオメガの家庭教師をつけておりましたが、(まだ発情期が安定していないディーンにアルファをつけるのは危険ですので)皆がディーンに触れたがり、壊れていってしまうのです。
     外界と触れないことで、激しい疲弊もないディーンの肉体は赤子のように艶やかで、少年が青年に変わる蠱惑的な魅力が相まって、不気味なほど美しいのです。
     どうしようか考えあぐねていると、頭の良いサムがディーンに教えるというのです。
     その考えにディーンも旦那様も賛成するものですから、尚更、二人は部屋に籠り切るようになりました。
     
      そんなある晩です。
    「黄色い目の悪魔を追っていた」という旦那様が突然帰られると、顔を大きく顰めました。
     屋敷中に甘ったるい匂いが広がっているというのです。
    「何だこの匂いは!」と怒り狂う旦那様が匂いの元を辿ると、ディーンの部屋に行き着いたのです。旦那様は、こっそり作っていた外鍵でディーンの部屋を開けました。

     そこには兄弟で愛し合う二人が居たのです。
     疑似巣じゃなく、サムの脱いだワイシャツやスラックス、サムの部屋にあったシーツで作られた本物の巣の上で、です。
     呆気に取られた私達を尻目に、旦那様はサムをディーンから引き剥がして言いました。
    「お前達は兄弟でセックスしているのか? 頭がおかしいのか?」と。
     怒り狂った旦那様がサムの頬を思い切り殴り、肩で息をしながらサムを叱り飛ばしました。
     ディーンは発情期が来ていたのでしょう。濡れた眼で発情に息を弾ませながらも、必死にサムを庇います。
     ところがサムは獣のような眼差しでキッと旦那様を睨むと「ああ! おかしいさ! 大体、ディーンを閉じ込めたのは父さんだろ? この家は狂ってる。僕も狂ってる。僕は一生兄貴を愛し続けるよ。なんなら結婚したっていい」と笑いながら言ったのです。
     このあとは、ディーンが初めて迎えた発情期のように壮絶でした。
     怒り狂った旦那様が何度もサムを殴ろうとするのを私達で必死に止め、裸のサムに部屋に行って鍵を掛けるように言いつけました。
     それからというもの、旦那様が何度もサムを部屋に閉じ込め、ディーンに会えないようにさせても、こっそり抜け出してディーンに必ず会いに行くのです。
     そして今までの私たちの約束だった「旦那様が帰ってきたら電話のベルを鳴らす」ということも、サムはもうしなくて良いというのです。例え、父に罵倒されようが、僕がディーンを愛することは変わらないから、と。

     奥様、助けて下さい。この家はガラガラと音を立てるように崩れていっております。
     旦那様は浴びるように酒を飲み、サムは悪魔だと罵るのです。
     私は時々、奥様が生きておられたら少しは違ったのでは? なんて考えてしまいます。
     閉じ込められたディーンを不憫に思った私が、あの時会わせたのがいけなかったのでしょうか? それならば、責任は私にございます。しかし、どうしても、どうしても可哀想に思えたのです。
     この手紙が本当に奥様に届いて欲しいはずがありません。
     天使に囲まれ、天国で安らかにお眠りになったままで居て欲しいからです。
     私達メイドは、旦那様や坊ちゃま達の言うことを聞くことが前提ですから、どうすることも出来ません。
     サムとディーンを引き裂くのは簡単ですが、人目に触れぬよう、ウィンチェスターの名に傷がつかぬようと、二年も屋敷の部屋に閉じ込められたディーンのことを考えると、サムと会わせないことは大変酷な気がしてならないのです。
     奥様、いや、誰でも良いのです。この家をお救い下さい。
     そして、ウィンチェスターの男達三人に、どうか幸せと正しき道をお導き下さい。

     メイド長の〇〇(好きな名前を入れて下さい)より。
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