惚れた弱みというのは、本当に厄介なものらしい。左馬刻を見ていると、つくづくそう思う。
世間一般では、『惚れた弱み』といえば何だかんだ憎めない感情として認識される場合が多いと思う。悪い意味で使われることはまあまずない。アイツは俺にとって惚れた弱みだ、だなんてほろ酔い混じりに話されたらば、どこかいじらしさすら感じるし、時として惚気話で出てくるものでもあるんじゃないか。普段威厳があって確固とした芯を持った男であれば、彼女側からしちゃ『そんな人の弱みになれるなんて』と喜ぶだろう。
けれど、俺とアイツの場合は、違う。
最近付き合い始めた俺の恋人の左馬刻。昔同じチームを組んでいた頃から好きで好きで堪らなくて、一度背を向けたときはその感情が跳ね返って余計に苦しかった時期もあったけれど、時を経てまだ自分が恋心を捨てきれていないことに気付いたときには、向こうもまた同じ感情を抱いていて。
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