🐈の日「わあ〜〜〜〜〜!!」
忙しい練習の合間をぬって、4人で猫カフェに行こうと言い出したのは果たして誰だったのだろう。
そんなことはどうだっていいけれど、それにしても。
「こはねの奴、テンション上がりすぎじゃねえか?」
「一番今日を楽しみにしていたのは小豆沢だからな、仕方ないだろう。」
4人で固まる必要もないので、それぞれおやつを持って近づいたり、逆にむこうから近づいてくるのを待ったりと、思い思いの方法で猫と触れ合う。
「こはね、カメラ持ってきてたけど使わないの?」
「うん!いきなり、大きなカメラを向けちゃうと猫ちゃんもびっくりしちゃうでしょ?それにせっかく来たからまずは遊びたいなって思って!」
「なるほどね〜!確かに来たんならたくさん遊んであげたいよね!そういえば、おやつ追加で買ってきたから一緒にあげない?気になる子にあげようよ!」
「わあ!ありがとう、杏ちゃん。じゃあ、あの黒猫ちゃんにあげたいな。」
「よし、行こう行こう!ゆっくり近付いて…」
「わ…!杏ちゃんのを食べてくれてるね。私のも食べてくれた!」
杏とこはねは2人で黒猫におやつをやっているらしい。冬弥は白猫を膝の上に乗せ、ずっと撫でている。というか、撫でさせられている。
俺はというと、寄ってきた奴を片っ端から構っている。気まぐれなやつらだから、離れてはまた寄ってくるということを繰り返している。
そうして過ごしていると、こはねがカメラを構え始めていた。
カメラを構えるこはねの横顔は真剣そのもので、フライヤーの写真を撮る時もこのくらい毎回真剣な顔付きなのだろうと想像すると、素直にかっこいいなと思った。
あいつ曰く、覚悟を決めた日。ただの弱虫だと思っていたが、底知れぬ何かを見た日から、あいつの色々な顔を見る度に、面白いなと思わされてばかりだ。
そんな顔をふと写真として残したくて、スマホのカメラを構えた。カシャと音がなって、自分の見たままのこはねが画面に写真として保存された。
俺が撮ったとは気づかないまま、杏とこはねは猫を被写体にしつつも、楽しそうに遊んでいる。
「随分と楽しそうな顔をしているな、彰人。」
「……俺そんなに楽しそうな顔だったか?」
「ああ。まあ、少し意地の悪そうな顔だと言われればそうだが、それにしても楽しそうという言葉が似合う顔だった。」
「ま、間違ってねえよ、それで。」
冬弥が言うなら、本当に楽しそうな顔をしていたのだろう。自分がやっていたことの説明をしながら、猫と戯れる杏とこはねの様子を時折、写真に収め、たまにはこんな日があってもいいのかもしれない、そう思った。