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    あらた

    @arata00msms

    20↑成人済女性。文字書き。
    現在は原神ヌヴィレット推しで活動。
    CPあり→リオヌヴィ(固定)
    CPなし→ヌヴィレット中心にフォンテーヌキャラや他国のキャラとのお話など。
    旅人は空くんイメージで書いてますが、名前は「旅人」固定です。

    Xのまとめだったり、Xにあげるにはちょっと…という作品置いてます。後日ピクシブにて公開することもあります。
    追放水龍のお話、後ろにお知らせ追加しました。


    🔑
    ⛓🌧の順で誕生月4桁

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    あらた

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    Xにて公開した分のまとめ。なんでも許せる人向けです。

    2024/12/14
    最後にお知らせを追加しました。

    追放水龍 水国サイド空にはまだ白銀の月が輝いている時間。
    夜明けにはまだ遠い。
    己の執務室があるフロアへ足を運べば正面入口に招かねざる客の姿があった。
    「ごきげんよう。あいにくパレ・メルモニアの業務開始時間まで些か早すぎる来訪な上、貴殿との面会予定はここ数日にはなかったと記憶している。職員にも迷惑がかかるのでお帰り願いたく思うのだが」
    侯爵殿。
    フォンテーヌで長く侯爵の爵位を持つ家柄。リオセスリ殿が公爵の爵位を賜らなければこの男がフォンテーヌ貴族で一番の地位にいただろう。
    「最高審判官、いや悪龍ヌヴィレット! 貴様にはフォンテーヌから出ていってもらう」
    侯爵が自信満々に出した書状。
    最高審判官のフォンテーヌ追放とその理由が明記されている。
    それはフォンテーヌ全貴族が同意し、内容に不備が無い限りそれはフォンテーヌにおいてほぼ絶対といえるほどの影響力となる。最高審判官の立場であってもすぐ覆すことが容易ではないほどに。
    全貴族の同意、とあるがリオセスリ殿の元へはこの書状に関しての話は一切いっていないだろう。
    公爵である彼が否、と言えばいくらこの男であっても最高爵位の意見は無視出来ない。
    しかし抜け穴というものは何処にでも存在している。
    外交などによるフォンテーヌ不在時の場合、事後承認が可能となる。が、それにより全貴族の同意が認められない場合は破棄となるだけだ。
    今回はそれが悪手となってしまった。
    メロピデ要塞は治外法権の場。故に事後承認が認められてしまう。
    今限りしか効力が発揮されないこの書状だが、私をフォンテーヌから追い出す事が目的なのだから問題無いのだろう。
    いくら後でリオセスリ殿が反対したとしても彼がこれを知った時にはもう遅いのだから。
    「随分と手間をかけたようで」
    「パレ・メルモニア職員は勿論、フォンテーヌ廷の市民にも未だ最高審判官への支持は高いのでね。狡猾な龍は人心を掌握するのが得意なようだ」
    会話をしている間にも侯爵の手の内の者が私を取り囲む。この程度の包囲、抜け出すことは可能ではあった。
    しかし。
    「……公的書状を用意されている以上、現時点で私がそれをここで撤回させることは難しい」
    自分にとって不利な状況や内容であったとしても私は公平を貫く。
    侯爵もそれをわかっているのだろう。
    「理解が早くてなによりだ。折角なのでエスコートでもいたしましょうか」
    「結構だ」
    杖先で床を叩く音が普段よりもホールに大きく響く。
    自室にも執務室にも入ることは許されず、着の身着のままパレ・メルモニアの扉を抜ける。

    ガラス越しに白と黒が特徴的な影が愚かで小悪な人間に気づかれることなく、気高く誠実な龍の後ろ姿を見送っていた。


    ――


    フォンテーヌ廷の外。内海へと出ることが出来る場所。
    拘束など一切ないが前後左右を侯爵と彼の共犯者。そして違法マシナリーによって見張られた状態でここまで連れて来られた。
    「違法マシナリーまで用意しているとは。そちらについては後ほど然るべき捜査を受けてもらう必要がありそうだ」
    「違法? 廃棄予定のマシナリーを処理場へ運搬ついでに最高審判官様の護衛につけただけですよ。それに今の貴方に捜査支持を出すことは出来ない、でしょう?」
    自分の思う通りに事が運んでいるのが嬉しいのか愉悦に浸る侯爵の顔が薄気味悪く月明かりに照らされる。
    「ここまでの道案内ご足労だった。これより私はフォンテーヌ廷の外へと出ることになる。見送りは不要だ」
    そう言い切って水の中へ足を踏み出そうとした時、マシナリーがヌヴィレットの行く先を遮る。
    「……邪魔をしないで頂きたいのだが」
    「最高審判官様ともあろう方が、なにか勘違いされているようだ」
    突如、人工的に発せられた眩しい光が視界に入る。
    発生源は小型船からだった。
    「あの書状はフォンテーヌ廷ではなく、フォンテーヌの国からの追放の意味合いで作られていたのか」
    「おや失礼。どうやら内容について互いの認識に一部齟齬があったようだ。しかし最高審判官様が今更書状の内容をその程度で反故になんてしませんよねぇ」
    確かに書状にはフォンテーヌ、としか書かれていなかった。
    フォンテーヌ廷ともフォンテーヌ国ともとれるそれは蛇のように狡猾かつ、私への悪意に満ち溢れた行為に感じられた。
    「……次回からはわかりにくい文面で作成された書状並びに書類は再提出をお願いするとしよう」
    「次回、なんてものは思いますが以後気をつけるとしましょう。それでは最高審判官……いや悪龍ヌヴィレット。今日をもってフォンテーヌ国外追放が貴様に適応される。二度とフォンテーヌに来るな! この化物!」
    侯爵の罵声を聞きながら小型船へ乗り込むことしか出来ないヌヴィレット。


    船がフォンテーヌ廷、いやフォンテーヌから遠ざかっていくにつれ夜空が朝焼けへと次第に変わっていく。
    ヌヴィレットが完全にフォンテーヌ国外へ出ると薄暗い空は雲ひとつない晴天へと変わっていった。
    それはヌヴィレット……水龍自身も無自覚だったのか。龍王として産まれた故の本能だったのか。
    フォンテーヌ全体をおおっていた強大な水元素の気配が薄れていく。


    ――


    朝早い時間にリオセスリの元へ水の上から送られてきた書類が届く。
    大半が近日収監される囚人に関してのものだが、その中に一通の手紙が挟まっているのに気付く。
    手触りの良い封筒はパレ・メルモニアで使用している公用のものだった。封をしているシーリングワックスに違和感を覚え、リオセスリは急ぎ確認すべき書類より先に封筒の封を切る。
    パレ・メルモニアからの公的な手紙は全てヌヴィレットから送られてくる。彼がその際に使うシーリングワックスはいつも彼の法衣と同じ深い青色をした物を使用している。他の色も持ってるが私的な手紙に用いられる。
    あのヌヴィレットが公的な手紙に私用のシーリングワックスを使うなんてことはありえない。
    公私混同はしない人だ。
    封筒には手紙ではなく一枚の書類が入っていた。
    それに目を通したリオセスリは目を見開くと執務室の机を殴る勢いで叩く。
    そんなリオセスリに思わず後ずさりしてしまう看守だが、あいにく今のリオセスリには彼を気遣う余裕は無かった。
    コートを掴み取ると螺旋階段を飛び降りて執務室を出る。早足で向かうのは水の上に向かうリフトだ。
    いつも以上に響く鉄板の上を歩く足音に何事だと看守や囚人がリオセスリを見るがあまりの剣幕にそそくさと逃げていく。
    乗り込んだリフトが上へと起動されたのを確認したリオセスリは先程の手紙にもう一度目を向ける。
    タイプライターの無機質な文字で書かれたいた内容。
    『最高審判官ヌヴィレットを国外追放とする』
    どのような手を使ったのだろう。使われた紙や署名されている貴族や印からしてそれなりに効力のある書類、の写しがリオセスリに届けられた。
    国外追放の決行日は今日になっている。
    だいぶ前から計画されていたのだろう。写しの書類の作成日は1週間以上も前だ。
    公爵の立場上、国に関わる事項はリオセスリにも通達がいかないといけない。だが、事前にこれがリオセスリに届いていたら確実にヌヴィレットを国外追放にさせないように立ち回る。それを見越してわざと遅く届くようにしたのだろう。
    水の下へ手紙を送る手段は限られているので遅くなってしまった、などの言い訳を用意して。
    早く、早く水の上にいかないと。
    ヌヴィレットさんは今どこにいる。
    執務室か自室にいるなら、立て篭もりの手段がとれる。
    すでに今回の首謀者と共にいるなら手荒だが無理やりヌヴィレットさんを拐ってメロピデ要塞に連れ込むか。
    最高審判官相手に誘拐紛いのことをするのに抵抗が無いわけではないが、手段を選んでる場合じゃない。
    いつもより長くかんじるリフトがようやく停止する。
    開く扉を無理やりすり抜けて歌劇場まで繋がる橋を駆け出す。
    ルキナの泉が見えた辺りで見慣れた姿をみつける。
    向こうもこちらに気づいたようでこっちへ走ってくる。
    最強の決闘代理人であり、リオセスリと同様に今回のヌヴィレットへの不当な扱いに異を唱えている仲間。クロリンデだった。
    「ヌヴィレットさんは……」
    そう尋ねるとクロリンデは青い顔をして首を横に振る。
    「執務室にも自室にもお姿は無かった」
    そう言いながら一通の手紙を差し出す。
    上質な紙のそれを開くと慣れ親しんだ筆跡で一文が書かれていた。
    『フォンテーヌを頼む』
    こんな時まで自分のことじゃなく誰かの心配をするのか、あんたは。
    ヌヴィレットらしい文面にらしいなと思う反面、彼を悪意から守れなかった事実に腸が煮えくり返る気持ちになる。
    「っ畜生ぉぉぉぉ」
    近くにいた鳥たちが一斉に空へ飛び立った。
    憎らしいほどに澄んだ青空といつもより若干乾いたような空気にフォンテーヌの国を、民を愛し護ってくれた水龍が国からいなくなったのだとリオセスリとクロリンデは肌でそれを感じた。


    最高審判官であり水龍王ヌヴィレットがフォンテーヌからいなくなった日。


    ――


    『星と深淵を目指せ! あら、依頼じゃないのね。取材? いいわよ。最近よく冒険者がフォンテーヌ廷郊外で見かける理由についてね。魔物討伐の依頼が多いのよ。特にヴィシャップ系の討伐依頼が多いかしら。大人しい個体もいたんだけど最近暴れることが多いみたいなの』

    『最近の釣り事情かい? そうだなぁ……水位が下がってきてるせいか、ここらで見かけない魚が釣れることが増えたことかな。これ以上水位が下がるようなら生態環境にも影響が出てくる可能性があるから調査依頼でも出さないといけなくなるな』

    『最近なにか変わったことはないか? ですって。そうね、特別変わったことはないかしら。商売でいうなら涼しげな衣服を求めるお客さんが増えたことくらいね。あとは……縫製や裁断用のマシナリーの調子が少しだけ良くない気がすることかしら。起動にちょっと時間がかかるの。ほんのちょっとなんだけど。酷使したつもりはないんだけど近いうちにメンテナンスでも依頼しないとかしら』

    『最高審判官の長期休暇中について? 公正無私のあの人が個人的休暇予定を他人に話すとでも思うかい。俺なら知ってると思った? 高く買ってくれてるようだが残念ながらまったく。そうだな……パレ・メルモニアには居ないということくらいか。知ってることは。折角の休暇だってのに自室とはいえ職場にいたらあの人のことだ。自室に仕事を持ち込みそうだし、頼る職員だっているだろ。休暇にならないからな。郊外に別邸でもあって、そこでのんびり過ごしてるんじゃないか。……ああそうだ今日も暑いし冷えたフォンタでもどうかい? メリュジーヌにもらったんだが飲みきれないから一本もらってくれると助かるよ』

    『最近あった変わった出来事? 特に思いあたることはないかな。あ、そういえば歌劇場の予約が取りにくいみたい。僕たちもそこでマジックショーをするから歌劇場の予約はよくするんだけどここ最近は審判が多くてそれ以外の用途での予約が取りにくいみたい。僕たちはこうして路上でショーができるけど劇団の人は困ってたみたい。セットの準備とかあるから舞台稽古も公演も出来ないって嘆いてたよ。早く歌劇場が使えるようになると良いんだけどね』


    自分のデスクでここ数日の取材メモを読み返す。
    特ダネがあるわけでも事件性があるわけでもないので記事に使うことはないだろう。
    けれども、何かが引っかかっていてまた取材メモを書いた手帳をパラパラとめくる。
    「シャルロットー! これから新しく出来た孤児院について取材にいくんだけど一緒に行かないか」
    「んー……あんまり気乗りしないかなぁ」
    「そう言わずにさぁ! 良い写真を撮れる記者はみんな出払ってるんだよ。お願いします、シャルロットさまぁ〜」
    拝み倒してくる同僚に、仕方ないなぁと重い腰を上げて愛用の写真機を手に後をついて行く。
    外に出ればからりと乾いた風が頬をなでる。今日も暑くなりそうだ。
    フォンテーヌでは珍しいくらいの晴天。
    そういえば雨が最後に降ったのはいつだった?


    ――


    「んん〜っ ずいぶんと長くフォンテーヌを離れていたものだ」
    数ヶ月ぶりのフォンテーヌ。短い期間のはずだったけど思いの外長い期間離れていたようで久しぶりの自国の空気に安心感を覚える。
    この数ヶ月、フリーナはスメールへと行っていた。
    水の娘を是非演じて欲しいとお願いされたので移動時間も含めて国外公演の為に劇団員と共に長期間の旅へ。
    最初は外国に……と渋っていたフリーナだが
    「いい機会だから行ってくると良い」
    と言われ、思い切って海外公演にとフォンテーヌの地を飛び出した。
    後押しをしてくれた彼の為にとスメールの水を持てる範囲いっぱいに持って帰ってきた。
    ちょっと、いやかなり重いし嵩張ったけど彼の喜ぶ顔……まあそこまで表情が変わるわけじゃないけど嬉しそうな姿が見られるならいいか。
    しかし、それにしても……
    「フォンテーヌは水の国と聞いていたんで、もう少し涼しいと思ってました」
    隣で物珍しそうにフォンテーヌ廷へ向かう船からの景色を眺める褐色の女性。
    砂漠を越えるフリーナや劇団員を気遣って護衛にと付き添ってくれたディシア。彼女のおかげで行きよりもずっと楽に港まで着くことができた。
    ちなみにディシア自ら護衛を買って出たわけではなく、彼女と仲の良いお嬢様からのお願い故だけどもそれは割愛しておこう。
    「そうだねえ。水に囲まれてるからそういう印象を抱かれるけど湿度とかは結構あるよ。雨も多いし」
    「雨……そういえばフォンテーヌには雨の日のおまじないみたいなものがあるとお嬢様が言ってましたね。確か『水龍、水龍、泣かないで……』でしたか」
    「……ああ、フォンテーヌの民なら一度は口にする言葉だね。けどこんなに良い天気なら水龍の機嫌は好調なのかもね」
    水龍、という言葉を聞いてガイドをしているメリュジーヌの耳が一瞬ピクリと跳ねる。
    いつも楽しそうに説明をしてくれる彼女だけど今日はどこか気落ちしているように感じられる。
    そしてフォンテーヌに入った時から感じる違和感。
    雨が多い国だから晴天なのは珍しいとは思わなくはなかったけれども。それよりも気になったことがある。
    肌から、神の目から、感じる空気中の水元素が不足しているような気がする。
    テイワット大陸にある七国は元素龍の持つ元素の影響が反映される。元素龍王がテイワット大陸を支配していた時の名残なのだろうか。
    モンドでは勢いに差はあれど常に風が吹いている。
    稲妻では落雷が落ちる頻度が多いと聞いたことがある。
    フォンテーヌは水との結びつきが強い。雨が多い国との印象を受けているが……それに関しては表情は乏しいし感情だってまだ勉強中だというのにそのくせ繊細な心を持ってる水龍が雨という形で泣いてるせいなのだから。
    本来の権能を取り戻してからはそこまで不安定には……まあ時によるけど昔よりは減ってたはず。

    ヌヴィレット……君になにかあったのかい?



    お知らせ
    本格的に追放水龍の話を執筆します。
    今まで書いてた分ほぼ書き直しすることになりそうです。
    完成したらポイピクとピクシブにて公開予定。
    紙媒体も視野にいれております。加筆修正のついでにちょっとした後日談を入れたいなぁ、と。
    仮タイトル『瑠璃の片割れは杖を曳きて』
    ページ数未定。配布予定も未定。
    紙媒体手元に欲しい人いましたら反応あると助かります。完成できるように頑張りますので
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