来年も… 冬の冷え切った凛とした空気。吐く息は白く夜の闇に浮かぶ。
「くそっ、さみぃな」
暁人の隣でKKが両手を擦り合わせている。手袋をしていても、指先が冷えてしまう。
「あったかい格好しなって言っただろ」
「してるよ。着込んでも寒いもんは寒い」
口元が隠れるくらいに厳重に撒かれたマフラーの下から憮然と答えたKKの鼻は赤みを帯びていた
「お前は寒くないのかよ」
「寒いよ。寒いけど、KKほどじゃないかな」
厚手のダウンを着たKKとは違い、暁人はチェスターコートにマフラーをゆったりと巻いている。真冬にバイクを走らせる暁人にとって、バイクに乗っている時の斬りつけるような冷たい風に比べれば、人が密集している今はそこまで辛い寒さではないのだろう。
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