怪物と青「こんにちは、あたしの怪物さん」
そう言って隣の少女は無邪気に笑うのだ。
夏真っ盛り。学生にとって至高の夏休みが終わり、今日から新学期だ。今年の夏休みも特に大きなこともなく平凡な時を過ごした。まあ、しいて言えばちょっと遠くに住む叔母さんが妊娠五か月目になったらしくあと半年もしないうちに従妹が増えると知らされたくらいだろうか。私のような人間がその子にとって親戚の中で一番年の近い子になってしまうのは少し申し訳ない。私という人間は、どうしても平々凡々としか言いようがなく特出したものをもたずにつまらない。ただなんとなく毎日を生きて、なんとなく勉強して、なんとなく友達付き合いをする。JKらしく部活のない放課後は意味もなくカラオケに行ってみたりだとか、ゲームセンターでほしくもないぬいぐるみを取ってみたりだとか、友達とプリクラを撮ったりだとか。友達は毎回「うちらめちゃくちゃ青春してんじゃん笑」とか「やっぱうちら三人が最強だわ笑」と言う。私はそれに「そだね~わかる笑」と返すだけ。そんなことは少しも思っていないが、口から勝手にそんな言葉が飛び交う。そんな努力も何もなく小さな嘘が積もってできた影のような存在。私はそんな私が決して嫌いではない。特に好きでもないが。それとなく年をとって、家庭を持って、死んでいけばそれで構わないではないか。私の人生に変質したものはいらない。毎日に代わり映えなんて必要ない、はずだったのだ。新学期一日目、転入生、時計の針がカチ、と動いた。
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