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    sbjk_d1sk

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    sbjk_d1sk

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    Aisおめでとうございます圧倒的敗者俺!!!!!!!!!どうなってンだよ勤務スケジュール!!!!!!!!


    と言う思いを込めて書いていたかつての駄文。こっちにも載せておきたい勿体無い精神。

    無題 空腹を訴える腹を無視して、胃薬と共に鎮痛剤を流し込んだ。少しすれば薬という神が頭から悪魔を追い払うだろう。神を遣わした偉大なる医療部に感謝を捧げるべく、ドクターはデスクに向き直った。詰み上がったファイルと、散らばった作戦記録と、思いついたことを片っ端から書き殴ったノートが広がっている基礎むき出しな無秩序の箱庭だった。デスクの引き出しから手探りでビスケットタイプの完全栄養食を取り出し、バリッと両手で封を開ける。流し込むように袋から直接口に入れ、噛むのもそこそこに常温に戻ったペットボトルの水で腹に流し込んだ。一息ついてパッケージを見てみれば、ココア味と書かれていた。味も確認せず、味わうこともせず噛み砕いて流し込んだクッキーを、今度は一枚一枚摘んで食べてみる。唾液を吸いみるみる膨らむクッキーは、味はたいしてココアといった感じはしない。カカオの強いビターチョコレートのように少しの苦みと酸味がする。これは若者の口には合わないかもしれないなと一息に水を呷り無理矢理クッキーを胃へと押し流した。
    「またこんなもん食ってるんですかァ?」
    「……いい加減、君は探偵よりも怪盗を名乗った方が儲かる気がしてきたよ」
     偉大なる医療部から齎されるはずだった神の遣いよりも速く現れ、風のように椅子の背の方へと回り込み、するりとクッキーの入っていた残骸をドクターの手のうちからかすめ取るリーの存在などとうに慣れたもので。ついでにゴミ捨てを任せるように爪先でゴミ箱をつついてみるときんいろの瞳が露わになったドクターの顔を吟味するように細められる。証拠と仮説と真相のすり合わせ、浮かび上がった隈、おざなりな身だしなみ、くちゃりとかき混ぜられたままの髪の先。
    「もっとマシなモン食いましょうや。また胃が荒れて点滴引きずることになりますよ。……ああほら、こんなに髪も跳ねて」
     銀杏色をした手袋はいつの間にか取っ払われ、種族的且つ特徴的な膚の色をした、傷の多い節くれだった指がドクターの髪を撫でる。まるで自分の居室のように慣れ親しんだ動作でサイドテーブルを引き、その引き出しの奥の方に追いやられたブラシとボトルを片手で器用に取り出される。すっかり脱力し椅子からずるずると滑り落ちていくドクターの体を子どもを相手にしたような軽々しさで持ち上げ、ぴたりと椅子に座り直し、ついでに背筋を人差し指と中指で逆撫でてしまえばしゃんとドクターの背が伸びる。
     移ろう季節の空にかたちを与え、両手でそっと掬い上げ、一滴も溢すことなく飲み込んだような音のする声が、リーをそう呼んだ。
    「花卉栽培のようだ」
     柔らかで月色をした髪をしなやかながら確かな硬い感触の獣毛のブラシで梳く。頭皮を撫でられるたびに肩の凝りから派生する頭痛特有の重苦しさが溶けていくようで、ドクターはこの時間を少しだけ気に入っている。花から作った髪油で艶まできっちりと保証された髪を梳く。
    「あなたが花なら、おれはとっくにあなたをおれの庭に植え替えているんですがねぇ」
    「私は重宝されたくないんだ。ありのままに生きる、そして強烈な記憶のうちに散りたい」
     道行く人々が愛でた花もいつか散る。春の訪れを告げる花を楽しんだ人達は、春の去り際に花を踏み潰す。どれだけ心待ちにされていても、手塩に育てられても、愛でられても、最後には靴底の裏に貼りつく味のしなくなったガムや剥がれたシールと遜色なくなってしまう。元より消費されるために育まれた存在の終わりを憂うものがどれほどいるだろうか。
    「気分屋で、でも一等美しく朽ちる姿を、遺していきたいんだ」
     夏が一刻も早く春を覆ってしまえばいい。纏わりつく雨が花を押し流してしまうか、茹だるような暑さが麗らかさを飲み込んでしまえばいいのに。花を楽しむ人々よりも、消費される春に同情する。きっと愚かで馬鹿で、人でなしなんだろう。
    「なんて言ったら、庭園を気に入っている子たちには聞かせられないけれど」
    「おれはどんなあなたでも愛します」
     青々した若芽も、蕾を実らせる姿も、花開いて蝶を呼び込む様子も、色褪せて枯れていくまでも。ああでも、種は愛せません。あなたの遺したものには意味がない。
    「刹那のあなただけを焼き付けて、永遠に愛してやりましょう」
     秋色をしたリーの手ですっかり編まれた髪を、億劫そうにドクターが指先でなぞり、鏡を見るまでもなく深く深いため息に苛まれる。
    「そういう話をしていたわけじゃないよ、馬鹿」
     おやァ、などと見え透いた惚け声が鮮やかに染まる耳を擽る。
    「春が嫌いですかい?」
    「……嫌いだったんだけどね。うん、嫌いだったのにさぁ」
     偏頭痛を齎した曇天の雲共を窓から視線だけで見上げ、ドクターは麗らかであたたかで、色鮮やかな季節を惜しんだ。
    「夏、もう来てしまうなあ」
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    sbjk_d1sk

    DOODLEAisおめでとうございます圧倒的敗者俺!!!!!!!!!どうなってンだよ勤務スケジュール!!!!!!!!


    と言う思いを込めて書いていたかつての駄文。こっちにも載せておきたい勿体無い精神。
    無題 空腹を訴える腹を無視して、胃薬と共に鎮痛剤を流し込んだ。少しすれば薬という神が頭から悪魔を追い払うだろう。神を遣わした偉大なる医療部に感謝を捧げるべく、ドクターはデスクに向き直った。詰み上がったファイルと、散らばった作戦記録と、思いついたことを片っ端から書き殴ったノートが広がっている基礎むき出しな無秩序の箱庭だった。デスクの引き出しから手探りでビスケットタイプの完全栄養食を取り出し、バリッと両手で封を開ける。流し込むように袋から直接口に入れ、噛むのもそこそこに常温に戻ったペットボトルの水で腹に流し込んだ。一息ついてパッケージを見てみれば、ココア味と書かれていた。味も確認せず、味わうこともせず噛み砕いて流し込んだクッキーを、今度は一枚一枚摘んで食べてみる。唾液を吸いみるみる膨らむクッキーは、味はたいしてココアといった感じはしない。カカオの強いビターチョコレートのように少しの苦みと酸味がする。これは若者の口には合わないかもしれないなと一息に水を呷り無理矢理クッキーを胃へと押し流した。
    1979