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    sbjk_d1sk

    @sbjk_d1sk

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    DONE記憶を失って転生したリー先生と、連続する魂を持つドクターの鯉博。一部過去作から抜粋。
    オーニソガラムの亡骸 星の予言、星の花。星の光を探して、星屑と閃きを眺めて。



    「いらっしゃい、リー家の子」
     他人のテリトリーに足を踏み入れるのはいつだって、適度な緊張感と警戒心を必要とする。リーは詰めていた息を白色にしてそっと吐き、吐いた分の吸い込んだ空気が纏う花の香りにまたため息をついた。両親と比べ未発達な細く頼りない尾が揺れ、薄く柔らかな鰭が風にあそばれる。
     かつては龍しかいなかったという閉鎖的な集落はすっかり姿を変容させ、龍の数こそ多いものの昔に比べれば様々な種族が住み着くようになった。それにより貿易は一層栄え、利便性は改善し、知見や見解が広がったことで価値観も開放的な方向へと進んでいった。少年が足を踏み入れた家は、しかしそうなる以前――もう百年以上も前だ――に建てられた、異種族にまだ偏見や差別の考えがあった頃にその嫌う異種族に説き伏せられて建てられた家らしい。家屋自体は然程大きくはないが手入れが行き届いた庭は非常に美しく、季節の花や草木が目に鮮やかで、門扉を潜った直後だというのに足を止めて眺めてしまうほどだ。そのせいだろう。前を歩く冬空のようなその人が振り返り首を傾げた。
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    DOODLE鯉博。超短文。
    十月二十五日 楓 月が真上よりも西に傾き、ぽつぽつと周辺の住宅が完全な消灯を迎え始めた頃、端末を鳴らしたのはドクターだった。リーが端末に耳を当てて通話に応じる。夜遅くという自覚があるためか、きっと自室か執務室であろうに吐息交じりの囁き声が鼓膜を擽った。
    『夜遅くにごめん、起こした?』
    「いいえ、まだ起きてましたよ。どうかしましたか?」
     リーが抑えることなく普段通りの声量で答えれば、ドクターの安心しきったため息が聞こえた。そこからはドクターも普段通りのよく通る声音で話し始める。澄んだ声色が悲しみと悔しさのあわいで揺れている。
    『明日誕生日なのに、直接祝えなくてごめんね』
     リーはきょとりと僅かに目を見開き、壁にかけてある紙のカレンダーを見た。そこにはあと数十分で訪れる明日に赤い丸が記されており、几帳面な字で「午後はお休み!絶対!」とも書かれている。もうそんなことに喜びを覚える歳でもないが、子ども達が祝ってくれるということに意味があり、その行為自体には素直に嬉しいと思える。血が繋がっているわけでもない自分のために、せっせと準備をする子ども達を見られることこそが最も尊いプレゼントだろう。
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    CAN’T MAKE自分にとってはグロまではいかないのですが、人によっては軽度~中等度のグロになるかもしれません。常に捏造です。
    亡失のオネイロス 夜より生まれ、同胞は眠りと死。



     ドクターを含めたロドス上層部の人間に有事が起こった場合、その状況説明はロドス本艦にその瞬間に駐在しているオペレーターのみに伝えられ、ロドス本艦外にて活動中のオペレーターや企業には、契約にて特別措置がとられていない限り伝えられることはない。ロドスにとって弱みとなってしまう材料をむやみにまき散らさないためにも。つまるところ、箝口令を敷くのだ。

     複雑な地形と安定しない気候のなかで、少数精鋭を全員前線に押し出した作戦を決行中の事だった。当時のドクターの護衛まで指揮官権限で投入した、その瞬間の持てる総力だ。当初は荒野を渡る護送任務の道中を襲った敵勢力の鎮圧で終わるはずだったそれが、気が付けば混戦状態になっていた。原因は野生のバクダンムシだ。本来はそこに生息が確認されていなかったバクダンムシは数か月前に起こった天災によって住処を追われ、慣れない新たな巣でストレスが溜まり、文字通り一触即発の爆弾そのものになっている。護送任務についていたドクターを含めた誰もが想定外の第三勢力に混乱している。そしてそれは敵も同じだった。
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    CAN’T MAKEすれ違いラブコメに挑戦しようとして大失敗しました。
    キメラ 身長は可も不可もないが、不摂生と体質から肉付きはよろしくない。顔つきはとびきり美人でも可愛らしくもない。肌の色素は薄いが、顔色が悪い方が目立つ。宝石のような瞳でもないし、髪に自信があるわけでもない。頭脳は大勢に褒められたり恐れられたりなど非凡であるものの、経歴はほぼ白紙の記憶喪失。職業は、ロドス作戦部部門長にして戦争屋。あんまりである。
     ドクターは、そもそも自身が善良なる者と同じ盤上には決して立てないことを理解していた。同族はおらず、何者にも当てはまらないということは、何者でもないかもしれないということだ。唯一特出した頭脳はあれど、愛嬌という点ではかえって無用の長物だ。
     故に、ドクターは他人に嫉妬をしないと決めている。嫉妬ではなく、羨望に留めることを常に意識している。羨望も立派なネガティブ感情だが、それくらいは許してほしい。だって仕方がないだろう。ふわふわの耳も、艶やかな羽も、輝かしい光輪も、しなやかな尾も、妬んだところで手に入らない。何者でもない自分がそれらをアクセサリーとして付与できたら、どんなに良かっただろう。
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    DOODLE食事の所作とか綺麗なんだろうけどそれはそれとしてその骨格からしてでかい口をがっぱりと開けてほしいだけの話。119番より先に緊急蘇生を→ピニャータの順番で続いていますが、ピニャータだけでも問題なく読めると思います。ピニャータでこの鯉博の友愛拗らせ具合を説明しています。単体で読みづらく書いてしまい申し訳ございません。
    手塩にかける「リー、買ってきたよ!」
    「はい、よくできました」
     龍門の街、賑わう真昼間。これだけ明るく大通りに面していればマフィアだのヤクザだののトラブルに巻き込まれる確率は限りなく低い――無い、とは決して言いきれなかった――と思われる。ちらりと周りのテラス席に座る他の人間を観察してみるが、地元客がほとんど、友人関係六割、家族連れ三割、恋人関係一割といったところだろう。視線を目の前の人、ロドスのドクターと呼ばれる、しかし今は探偵事務所の子どもたちと変わりない無邪気さで笑う人に戻す。お気に入りの白地に橙色がアクセントの大きなパーカー、黒いスラックス、華奢な下肢のラインを際立たせる黒光りした無骨なブーツはアンバランスに見えるのに、ご機嫌な鼻歌を奏でるたびに踵を鳴らす姿が可愛らしい。
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    CAN’T MAKE龍に対して公式には一切存在しない妄想と幻覚と捏造と理想と願望の闇鍋料理
    パイロキネシス・2「ドクターの希望でCT検査も行いましたが、問題ありません。全治二週間の打撲です」
     リーが戦闘終了後に勢いに任せて告白した結果、心の準備など全くしていなかったドクターに警棒で殴られ軽く脳震盪を起こした末に気絶したという話は、流石に比喩ではあるが音速を超えたのではないかと錯覚できるほどの速さでロドスを駆け巡った。ドクターは医療部からの内線を切ると、執務室で静かに手を組み、心の中で頻く頻く懺悔した。その噂を意図せずとはいえ流したのがドクターだったからだ。
     だって、仕方ないじゃないか。懺悔の後に言い訳をするのもどうかと思うが、そう思わずにはいられない。龍特有の性質と言えばそうなのだが、それにしたって、正気か狂気か彼が運命だとドクターに言い寄った。彼が好まないらしい本能に従ったなどと。リーのプライドのためにも、本能云々を伏せ「ただの告白」と報告するしかなかった。しかしこうしてどこから漏れ出たのか噂として広まってしまった今、実はそんなに大差ないんじゃないか?プライドはどちらにせよ傷つくんじゃないか?ということに気づいてしまい、ドクターは粛々と懺悔をしている。
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    CAN’T MAKE龍という種族に対して公式にはない捏造と幻覚と理想と妄想しか詰まっていないので検索避けしています。
    パイロキネシス・1 ドクターの龍という種族への第一印象は「圧がすごい」であり、非力であるが故に「恐ろしい」ことこの上なかった。ドクターの中の代表的な龍種といえばチェンであり、今でこそ難なく会話ができているがやはり第一印象には「圧」があった。ドクターの同族がいるかどうかは不明だが、少なくともチェンから感じた龍の気配はドクターにとっては「圧倒的な上位種」のものだった。近寄りがたく、声をかけることは躊躇われ、目を合わせることは不敬であるのではないかとさえ思ってしまう。龍は、暴力的なまでの威圧感に満ち溢れていた。
     炎国の貴族階級、あるいはそれに連なるものたちには龍が多い。というのはやはり龍が他種族とは一線を画する存在だからだろうか。今現在テラに存在する彼らの血がどれほど龍の純血なのかは把握できないが、高貴であればあるほど、龍の家系は太古よりその血の純度を保とうとし、異種族を受け入れず閉鎖的になっていく。そのせいか龍は驚くほど人口が大きく変動しない。フィクションを目にしているようで、ドクターは統計を調べた際に「そんなバカな」とまで口にした。
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    CAN’T MAKE友愛の期間を煮詰めすぎている鯉博、ネタ消化話。タイトルに意味はないです。
    ピニャータ 弊ロドスのドクターはドクターの時は中性的な口調、プライベートの時はやや女性よりの口調になります。以前のふせったーに投げた無駄に長い話の続きみたいなものですが、読まなくても問題ないと思います、多分。




     黒はすべての色を混ぜた色なのだという。なにものにもなれない色が本来は何色でもあり、かつてなんだったかはもう誰にもわからない、というのは面白くもあり、自分のようだとドクターは親近感のようなものを感じている。ドクターであることを望んで、少なくともロドスが掲げるなにもかもが終わるまではドクター以外にはなれないだろう。かつての自分もドクターであったのは確かだが、それ以外のかつてはなにも知らない。透明なドクターは、黒く塗りつぶされた過去への扉を抱いている。しかし悪い気分ではない。どうやら散々で、あまり良いとは言えなかった人格を持っていたらしい過去と決別できるというのは、新たな人生を歩むことができるということだ。後ろ髪を引かれる思いがないかと問われればもちろん嘘になるが、その罪の意識にどっぷり囚われる必要はないのだと、あなたはあなたなのだと言ってくれた彼がいる。故に、彼と過ごす日々のうちはドクターではない人間であることを、鏡に映るひとりを許してあげようと思った。
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