「今日からお前は坊ちゃんの世話をしろ」
そう言われて連れて来られた部屋のなかにちょこんと座っていたのは、まだあどけない表情をした小さな男の子だった。ふわふわの髪の毛は太陽に透けてきらりと光り、眩い笑顔をこちらに向けた。
「ねえ、お名前なんていうの?」
無邪気にこう問いかけてくるその瞳は輝いていて、酷く庇護欲を掻き立てられる。あまりの輝きにひと呼吸遅れて下の名前を告げれば、元気な自己紹介をかえしてくれた。その子は頑なに、シュウが坊ちゃんと呼ぶのを嫌がった。生まれて直ぐに母親は亡くなり、父親はマフィアの仕事で忙しくしている。ルカにとってシュウは、家族のような存在なのだろう。身寄りをなくして組に引き取られてきたシュウは、ちいさな弟ができたみたいで嬉しくて、それはもう甲斐甲斐しく世話をした。ルカが小学校に行く前の身支度を手伝い、中学から帰るやいなやルカの遊び相手や話し相手になった。シュウは幸せだった。見た目こそ怖いものの組の人はみんな優しくて、そして何よりルカの存在がシュウを更に幸せにしていた。
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