【χαμένο παιδί】新しきアゼムが早速行方をくらませた。
強烈な頭痛を引き起こす知らせをエメトセルクの耳に届けたのは他でもない、先代アゼムその人であった。
アゼムの座に推挙したのも、アーモロートへ連れてきたのも他ならぬこの方なのに、何をどうすれば見失うというのだろうか。
元々刻まれがちな眉間の皺を更に深くして、エメトセルクは溜息混じりにならぬよう極力穏やかに問い返す。
「……それでなぜ、[[rb:私 > わたくし]]に行方をお尋ねになるのですか」
彼女が何をやらせたいかなど知れたことなので今更問うても仕方のないことなのだが、ほんのささやかな抵抗だ。白いローブを纏った先代アゼム――ヴェーネスは口許を美しく綻ばせて微笑む。
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