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    今までだったら絶対浮気してる場面で無意識に日向をとって浮気しない侑を書きたかったんですが思ったより甘くならなかったので倉庫行きです

    モブ、最初はもっと食えない女だったんですがあまりにも胸糞すぎて改めた(改めてこれ)

    喉が渇いて、目が覚めた。いつもより固い質感のシーツが肌に触れて、違和感にぱちりと目を開ける。
    「……?」
     見覚えのない天井。辺りを見回すとやはり知らない部屋の中で、心臓がざわめき始める。だって、どう見たって、ホテルの一室なのだ。昨日はテレビ番組の収録があって、少人数で打ち上げをして、それから――? あかん、覚えてへん。記憶の糸を辿りながら、ご丁寧に目立ちやすくテーブルの上に置かれたスマートフォンに目がいった。せや、今何時――画面をつけて、時が止まる。ロックを解除しないままに撮影されたであろう写真を、無情にも画面はちかちかと照らしている。そこに映っていたのは、気の抜けた顔で眠る侑と、いかにも侑好みな金髪の女性の自撮り写真だった。

    「なに、あれ」
    「浮気したんだって」
    「は? 日向が?」
    「そんなわけないじゃん! ツムツムの方!」
     無遠慮な大声を咎める気力もない。気まずそうな日向と、ずんと沈んだ侑の姿は、佐久佐の誤解にもチームメイトが頷ける光景だった。
     足早にホテルを出て、寮へと急ぎ帰った。あんなに渇いていた喉は気にもならなくて、早朝の道を駆ける。それなのに、目的地に近づくにつれ渇きは戻ってきたどころか、どんどん増していく。して、運命のいたずらか、会ってしまったのだ。ランニングから戻る日向に。
     あっ、おかえりなさい。昨日終電逃しちゃったんですか? え、なんか顔色悪くないですか? 侑さん、……侑さん? 言うつもりなんてなかったのに、隠し通そうと思っていたのに、心配そうに詰め寄る日向を前に侑は蹲った。侑さん、侑さんって、背中をさする恋人に、耐えかねて白状したのだ。……起きたら知らんホテルにおった、何も覚えてへん、と。いつの間にか止まっていた手は背中でじんわりと温くて、おずおずと顔を上げたらきょとんとした顔が侑を覗き込んでいた。目が合った瞬間、日向のまん丸の瞳から大粒の雫がぼろりと落ちた。
    「!!!!」
    「あ、あれ……?」
     寮の前でそんな騒ぎを起こしたものだから、気が付いた先輩に回収されたのが今朝のことだ。日向の方は、先輩に泣き顔を見られたのが恥ずかしいらしい。対して侑は、世界の終わりかのような顔から地を這う溜息を吐き出すことしか出来なかった。そんなさなかでも、午後の練習はいつも通りに始まるのだ。自慢の顔面を両手でばちんと叩いて、ロッカールームをあとにした。

    「宮、日向、お前ら社長に呼ばれとるで」
     練習終わりにコーチから言われ、日向と顔を合わせた。しゅんと下がった侑の眉尻を見て、日向がふいと顔を背ける。うっ……あかんこれ、思ったよりダメージでかい。練習中はいざこざを持ち込まないように努めたつもりだけれど、やはりプレイに影響していたのだろうか? いやでも、それだったら社長からではなくこの場で何か言われるはずだ。同じように顔を傾けたのは、話の輪郭を知るチームメイトも同じだった。

    「宮お前、女とホテル行ったな」
    「へっ……」
    「はい」
     びくりと背筋を伸ばした侑の隣で、日向が平坦な声で答える。間違いなく隣から聞こえたはずなのに、初めて聞いた声に感じて、ぞっと体が冷えた。気持ちの悪い汗が体から吹き出す。
    訪れた社長室では、肩を落とした社長が机をねめつけていた。とんとんと叩くそこには、プリントアウトされた記事が数枚。ここからでは内容の確認できないそれを、社長が掴み取って差し出す。受け取って読めという無言の圧力だった。
    「どうすんねんこれ……」

    〝一般女性の告白! 宮侑のリアル
     〇月〇日、編集部に写真付きで情報が提供された。以下は、提供者のAさん(21・大学生)への取材の記録である。
     Aさん(以下A):昨夜のことなんですが、居酒屋で宮選手をお見かけして声をかけました。話の流れで、ホテルに行くことになって。あまり酔っていらっしゃらないように見えたのですが、ホテルに着くなり眠ってしまわれました。
     ――その後、宮選手は起きられたんですか?
     A:はい。揺すって起こしました。でも寝ぼけてらしたようで、別の名前を呼ばれたんです。恋人と間違えたんですね(笑)
     ――それが、例の?
     A:はい(笑)翔陽くん、と。その時点では、後輩と仲が良いんだなあとしか思わなかったのですが、その後に服の上から体を触られました。それで、私を見て、翔陽くんやない、と。翔陽くんやないなら要らん、とそっぽを向いて、寝てしまわれましたね。
     ――なるほど、それでお二人がお付き合いされている、と。その後は?
     A:何もないです。記念に写真(ページ右上)だけ撮って、帰ってきました。〟

     ――トップに書かれた文字は、宮侑♡日向翔陽 熱愛発覚!
    「日付変わった瞬間にアップされるて……お前ら明日囲まれんの覚悟せえよ」
     頭に血が上って体がぐらりと揺れる。日向まで巻き込んで、たった一日でとんでもない事態になってしまった。無罪と有罪がいっしょくたに襲ってきたような怒涛さに、脳がプスプスと悲鳴を上げる。
    「しょ、しょよくん、ほら俺、浮気してへん」
     顔を真っ赤にした日向が侑の脇腹をどすっと突いて、侑の口から呻きが漏れた。
    「ホテル行った時点で浮気ですからね!」
     今日初めて、日向と会話をした気がした。怒った顔で睨み上げられたって、かわいいだけだ。安堵で体の力が抜ける。絶対にクロだと思った。無意識下で据え膳を食わない自信が、全くと言っていいほどない。意識の外でも日向しか求めない体に、いつしかなっていたのだ。サムがこれ見たら、びっくりするやろなあ。侑を作り変えた当事者は隣でぷんすこと湯気を出している。おれ、怒ってますからね! 騒がしくも耳に馴染む声の中に、向かいから発される、いやほんまに付き合っとるんかい……、と消沈した言葉が消えていった。怒っている方が、ずっといい。今朝みたいな泣き顔よりはずっと。
    「宮」
    「ハッハイ」
    「俺も、ホテル行った時点で浮気やと思うわ……」

    「おはようございます! お二人とも、今朝の記事は読まれましたか? お付き合いされているんでしょうか?」
    「はい」
    「でも記事には……えっ?」
    「せやから、はい、付きおうてます」
     コテの電源を入れてから、テレビをつける。画面に映るすました顔は、スマートフォンの待ち受け画面に設定されているのと同じ顔だ。――耳が真っ赤なことを除いては。
     居酒屋でこの顔を見かけたとき、運命だと思ったのだ。だいぶ酔っていたようだし、チャンスだとも思った。首尾よくホテルまで漕ぎつけて、いざ、というとき。とろとろと見つめる侑の目が、別の誰かを見ていることに気が付いた。だって、今日会ったばかりの人間を、そんな目で撫でられるわけがない。熱の籠った目で、一時でも視線が合えば好きになってしまいそうな――何なら既に手遅れな、そんな目で。呼んだのだ。翔陽くん、って。それからふわりと体に触れて、違う、だから、要らないのだと。
     不必要とされた苛立ちよりも、男に負けたショックよりも、なぜか湧き上がる多幸感が勝った。うわ、うわ、そっか。翔陽くんなんて名前、私は、一人しか知らん。そうなんや。宮侑、日向くんの前ではあんな顔すんねや。ぶわりと立ち上った熱に、頬を両手で覆った。それはそうと、ささやかな仕返しはしたくて、こっそり写真を撮った。愛しの翔陽くんに怒られたらええ。乙女のたわわなボディを、男と間違えた罪は重いのだ。
     きれいに巻きあがった髪を、軽く遊ばせてうんと頷いた。昨日受け取った封筒から直に支払いをした、少々お高めのバッグを持って立ち上がる。思い出とすら呼べない記憶の証は、これで十分だった。一夜の夢さえ見られなかった、ただのファンなのだから。自然と鼻歌をふふんとうたって、テレビのリモコンを手に取る。画面いっぱいに映った顔は、あれだけ集めた写真フォルダのどこにもない表情だった。
    「記事になった女性とのことは、日向選手は何と?」
     一度日向を見た侑が、へにゃりと顔を緩ませた。

    「墓ん中でも、許してくれへんのやて」
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