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    ななしのひと

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    ななしのひと

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    突発的に書いた睡煉です。甘い。

    水も滴る強い風が吹き荒ぶ。雨も降っているせいで視界は悪く、隣の男が舌打ちをした音が雨音に紛れて聞こえた。
    春の嵐と突然の雨に襲われたのはつい先程のこと。次の戦に向けた交渉事のため、情報収集に出かけたその帰り道だ。先ほど舌打ちをした煉骨は、頭巾が飛ばされないよう手で抑えている。隣を走る睡骨の前髪も、強風で後ろへと撫で付けられていた。向かい風で目を開けているのも大変な中、行き先に大きな影を見つけ睡骨は口を開く。
    「向こうのでかい欅の辺りに建物が見える」
    「立ち寄れそうか」
    「なんだろうな、ありゃ……使ってなさそうな……。……近くに鳥居が見えるぜ」
    「神社か。ちょうどいい。急ぐぞ」
    二人で雨風の中を走り抜け、どうにか神社へと辿り着く。服はずぶ濡れ、足元は泥が跳ねて水浸しだ。神社に人気は無く、二人は閂を開けて中へと入った。
    「何を祀ってる神社だ?」
    「さあな。それより服をなんとかしねぇと」
    話しながら二人とも服を脱ぐ。半裸の状態で神殿の中を物色し、煉骨が蝋燭を見つけ灯りをつけた。
    「しばらくここで凌ぐ。服も干して少しでも乾かしていくぞ」
    「わかった」
    一息ついて、はあ、と自然とため息を吐く二人。と、煉骨はふとあることに気づいた。
    「睡骨」
    「ああ?」
    「前から気になっていたんだが………」
    じっと見つめる視線。それは睡骨の顔、いや頭部全体に注がれている。睡骨の髪は雨に晒されてたはずだが、いつもと変わらずしっかりと逆立っていた。
    「その髪はどうなってんだ」
    「髪?」
    煉骨の疑問に疑問調で返す睡骨。眉の無い顔立ちの黒目が訝しげに上を向き、そのあとまた煉骨の方へと戻る。
    「髪がどうした」
    「え………あ………いや………」
    思わず口ごもる煉骨。どうしたもなにも、睡骨の髪は善人時と悪人時でまったく違う。色も少し異なるし、質感も違う。どういう原理なのかと前から気になっていたが、本人は全く気になっていないようだ。どうしたと言われると逆に問い詰めづらい。ごほん、と咳払いをし、質問を仕切り直すことにした。
    「………。この雨風でも逆立ったままだから……その、随分しっかりした髪だなと思っただけだ。医者の野郎の時とは違ってるしな」
    「ああ。そういうことか」
    納得いった様子の睡骨に何故かほっとした気持ちになる煉骨。そもそもよく考えたら髪以外に人相も大分違っている。髪のことだけ尋ねるのはあまり意味のないことのような気もして、煉骨はそのまま適当に雑談をすることにした。
    「濡れて髪が下りてきたりしねえのか」
    「あまりねえな。まあ、手で崩せばそりゃ下りてくる」
    「へえ……」
    煉骨の目がきらりと光る。興味深そうな様子で煉骨は睡骨ににじりよった。
    「崩してみてもいいか」
    「あ?なんでだよ」
    「見たことが無ぇから気になっただけだ。駄目なら別にいい」
    「いや、駄目ってことは無えが……」
    目を輝かせながらじっと見つめてくる煉骨に、少し困ったような顔を浮かべる睡骨。はあ、とため息をついて、仕方なさそうに声を出した。
    「まあ……好きにすりゃいいぜ」
    「そうか。なら少し触らせろ」
    煉骨の手が睡骨の髪に触れる。思わずどきっとした自分に、睡骨は内心苦笑した。男に髪を触られるなど、なんともないことのはずなのに。
    すっ、すっ、と逆立つ髪を丁寧に下へと下ろしていく煉骨。全部の毛束の先を下に向け終えると、改めてまじまじと睡骨の顔を見た。
    「へえ………」
    感心したような声を出し、見慣れぬ姿を眺め回す。居たたまれない睡骨は心の中で「どうすりゃいいんだ」と思ったが、どうすることも思い付かない。とりあえず黙ったまま、見られることに耐えていたところで煉骨が口を開いた。
    「髪を下ろした姿も格好がいいじゃねえか」
    一瞬で真っ白になる頭。思いがけない言葉に目が点になる。しばらく固まったあと、睡骨はゆっくり口を開いた。
    「………。そうか?」
    「ああ」
    口元に笑みを浮かべそう言った煉骨。その表情が今度は固まった。何かに気づいたように。
    睡骨は無言でその顔をじっと見つめる。はっとした煉骨は笑みを消し、唇を横に引き結んで無心の表情を作ると、後ろを向いて睡骨に話しかけた。
    「………もう元に戻していいぞ」
    「……おう」
    お互いの顔を見ないまま会話をやりとりをする。雨に濡れて冷えた体も今は寒さが気にならない。背中を付き合わせたままの二人。互いに見えないその顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。
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