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    hito

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    hito

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    蘇生後の煉と銀 CPなしです

    カチャ、カチャ、と金属音が洞窟に響く。
    煤だらけになった手で、煉骨は額の汗をぐいっとぬぐった。
    「もう少しだぞ、銀骨」
    「ぎしっ」
    足も腕も無くし、胴体のみで生きる男にそう話しかける。生身の部分が少なくなっても生命に差し障りが無いのは四魂の欠片のおかげだろう。もっとも、残った部分も骨と墓土で出来ているから、生身と言っていいのかは甚だ疑問ではある。
    「足は無くして、代わりに大きめの台座と車輪をつける。それならおれたちを乗せて移動も可能だ」
    「ぎしっ、すごいな」
    「前は撤退する時に連携がとれなくて散り散りになっちまったからな。それも大名のやつらに討たれた原因だった。これなら、お前に乗れば全員まとめて退却が可能だ。撤退なんて、そんなへまをするつもりはねぇが……まあ、対策しておくに越したことはない。慣れないうちは取り回しが大変だと思うが、頼んだぞ」
    「兄貴たちの役に立てるならやるぜ、大丈夫だ」
    「そうか」
    ふっ、と煉骨が笑う。銀骨の素直さはとても好ましい。人としてかわいいのもそうだが、従える弟分としても利点だった。蛇骨もそうだが、わかりやすい人間は扱いやすい。加えて銀骨は改造を施す煉骨を慕っている節もある。一番、信頼を置いていた。
    「装備は背中に大砲と、あとは鋼の糸を仕込むつもりだ。脚部にもつけられそうな火器類を可能な限りつける。腕が無くなって刃物の類は扱えねぇからつけないぞ。接近されたらまずいというのは覚えておけ。緊急時には胴体部分を射出して切り離せるようにもしておく。燃料に限りがあるから飛び続けることは出来ないが、多少は飛行も可能だ。起死回生の一手にはなるかもしれねえ」
    「ぎし……すげえな」
    「やれることはやっておく。後悔はしたくねえだろ」
    「ああ、そうだな」
    煉骨の言葉に銀骨が深く頷く。人間らしい形状を失う改造指針に、なんの疑問も持たない。強くなればそれでいいのだ。銀骨の、強さのためなら人間の姿に拘らないところを、煉骨は生前から気に入っていた。異様な見た目から化け物や人間もどきと呼ばれ、周囲から距離をとられるため、銀骨の周りにはいつも人がいない。それを銀骨が気にしている様子を見たことはなかった。
    「兄貴、頼みがある。いいか」
    「ん?なんだ?」
    「前に死んだ時、おれは体が動かせなくなって死んだ。そこに足軽たちが来て、首をとった」
    銀骨の話す内容を煉骨は黙って聞いている。銀骨の死に際に、煉骨は立ち会えなかった。この話も初耳だ。
    「身動き出来ないおれの首を、笑ってとりにきた奴らの顔は、今でも思い出すと腹が立つ。あんな思いはもうしたくねえ」
    過去を語る銀骨の言葉には怒りが滲んでいた。銀骨が怒ることは珍しい。よっぽど屈辱的だったのだろう。
    「だから、次は自分で死ねるように、体に爆薬を仕込んでくれねえか。動けなくなっても、歯や顎さえ動けば、爆発を起こせるものがいい。頭はきっと、最期までついてるからな」
    「………いいのか?」
    「ああ。自分の死に方は自分で決めたい」
    銀骨の言葉に、煉骨は目を丸くする。
    荒んだこの時代には、様々な人間がいる。下劣な者も、卑怯な者も、いて当たり前の世だ。そんな人間ばかりの中で、銀骨の言葉には矜持があった。見た目は人間らしさを失っても、その心には戦国の世に生きる兵としての信念が、確かに存在している。
    「わかった、つけてやる」
    煉骨がそう呟く。銀骨が嬉しそうに笑った。
    「ぎしっ、ありがとう、兄貴」
    屈託の無い笑顔に、煉骨も微笑を返し、作業を再開する。
    黙々と手を動かす。頭の中は違うことを考えている。
    自分の死に方は自分で決めたい、と言った銀骨。自分の死に方など、煉骨は想像したことがなかった。生き延びることしか、考えたことはない。
    (死に方なんてそんなもん、考える必要は無え。生き残ればいいだけだ)
    生きるためだけに進めばいい。終わりについて考えるなど、その時点で負けているようなものだ。
    (絶対に……おれは生き残ってみせるさ……)
    何を犠牲にしても、何を捨てても、自分の命さえあればいい。
    煉骨は知らない。自身のことだけを考え、生きるための選択をした最期に待つのは、納得の出来ない選べぬ死に方なのだということを。
    まだ、知らない。
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