独り、潜り 迷宮は死と隣り合わせの場所である。迷宮こそ己が墓場と知れ。
冒険者の間では、世界の理のように何度も刻まれていく言葉だ。ある愚かな冒険者は行楽気分で迷宮へ行き骸になり、また、ある人気者は運悪く魔物の糧になった。冒険者に限らず学者にも兵士にも皆等しく死が与えられる場所、それが、それこそが〝世界樹の迷宮〟である。
アーモロードの酒場「羽ばたく蝶亭」では、今宵も吟遊詩人によってどこかの英雄譚が語られる。同じ話も語りで変わるが、素質があるのを贔屓にすれば腕はたちまちに上がるというものである。無頼漢がつまみを奢れば、吟遊詩人は機嫌よく声を張り上げた。
さあさあこれは異国の王子の話、異形となりながら人々の望みを叶え続けたある英雄のお話……!