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    Nmkjr_B

    @Nmkjr_B

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    当時の熱意を尊重し、過去作品の誤字脱字、言葉や文法の誤りはあえて修正していません。

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    Nmkjr_B

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    何かしらの影響を受けて書こうとした現パロの焉時?
    書きかけでこの後どうしようとしたのかも忘れてしまったので供養。

    2020.06.01作

    ##焉時

     コーヒーの味がしない。円の緊張も他所に、店内にはゆったりとした聞き疲れのしないジャズが流れている。円はカップを口に運びながら、ちらりと向かいの席に座る女を見た。オーダーメイドの人形である、といわれても、あっさりと信じてしまいそうなほど端正で中性的だ。よくよく彼女を眺めるか、ある程度の観察眼がなければ、少年か、少女かと、すぐにはその性は見抜けないだろう。ある種、生物的なあるいは理化学的な境界が曖昧な人間なのだと円は感じた。
     好きで注文したのであろうホットチョコレートを、彼女は無表情で少しずつ飲んでいる。その視線はすぐ隣の窓の外だ。何か意図があるのか、ぼんやりと見ている様子ではない。しかし、時計を見たり、連絡をしたりする素振りはなかった。あまりに変わらぬ表情に、彼女との付き合いを苦く思う者はいただろう、と円は他人事のように感じた。
     と、いうのも、彼と彼女に接点ができたのは二十分前のことだ。円が大学からの帰路を歩いている途中、猛スピードで走ってくる自転車に女が轢かれるところを、間一髪で彼が助けた。轢かれかけていたことにも驚かず、彼女はお礼にと、円を高級店が並ぶ通りの有名喫茶店へと連れてきたのだ。身の危険を感じなかったこと、遠慮も過ぎてはかえって失礼になるということも相まって、彼は一度は断ったものの、固辞もできず、大人しく今の席へとついていたのだった。
     何か懸念していたことに納得したのか、女は口を開いた。
    「……もう少しお礼がしたいな」
    「いや、あの、お気持ちだけいただきます」
     円がそう言うと、彼女は目をぱちくりとさせる。
    「私からすると、これだけだとお礼に満たないんだけどな」
     円は
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