人形遣いの孤独つやつやとした完璧な美しい肌。絹のような髪。神秘的な瞳。欲望を吐き出さない無機質な口。人形というものは本当に素晴らしいと思う。音楽と同等の美しさを秘めている。
僕は人間じゃない。いわゆる能力者ってやつだ。こういう生まれつき能力を持つものは怪奇と呼ばれ、忌み嫌われてきた。そんな怪奇の僕の能力は何でも人形にできる力。そしてそれを操る。
人間なんて醜くて汚くて下劣な生き物だ。そんな生き物、みんな人形に変えてしまえばいい。
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【今日は…どの子にしようかなぁ…】
最近お気に入りだった人形ちゃんが壊れてしまった。能力で人形にしているといえど、元は人間。本体が死んでしまうとあっけなく壊れてしまう。だから今日は代わりを見つけにきた。
【…あの子可愛い。…あの人かっこよくてタイプだなぁ…まじ迷う。】
今日は一段といい素材が集まっていた。カフェのテラスでぼーっと参道を眺めていると、ひときわ目立つ者がいた。
【何あの子…めっちゃ綺麗…】
すらっと高い背丈に長い手足。きれいな金髪はタレ目ですこしおっとりしている彼の顔によく似合っていた。太陽光に反射され、キラキラと輝く人間。
【…ほしい…欲しい】
この子がほしい。絶対欲しい。それは僕が初めて抱いた恋心だったのかも知れない。
僕はフラフラと彼の行く方向に歩みを進める。彼は通りを抜け、路地に入ったところで歩みを止めた。
【…、?】
「ぅーーやばい…道に迷った…」
どうやら道に迷ったらしい。抜けているところも可愛いな……って…そんなわけ無い。
【あー…おにいさん。どこ行きたいの…?】
「え…えっと…この駅で」
少し期待をした顔で僕に歩み寄る。そんなに近づいたら危ないのに…
【捕まえた…♡】
「はぇ…ちょ…」
彼はすごく暴れる。生きがいい人間って感じ。
僕は彼を抱きしめ、口を塞いだ。そして、身体を指でゆっくりなぞっていく。そうするとどんどん彼の身体は人形独特の美しさが出てくる。
「は…は…やだ…やだ…」
【ごめんね僕、怪奇なんだ。君のこと頂くね】
「…や……だ…や……」
最後に仕上げのキスを落とす。こうすることで彼は完全に人形になってしまった。
愛おしい僕の人形。これからよろしくね