その1 「逃げる」ヨレンタは、異端の罪で処刑されそうだった所を親切な人に助けてもらった。
助けてくれたのはヨレンタより少し大人に見える、異端審問官だった。
少年のあどけなさを残す親切な彼はきっと殺されてしまうだろう。
馬で逃してもらい、何処へ向かえば良いか分からないまま、ヨレンタは当てずっぽうに馬を走らせた。
「C教って何だと思いますか?
僕は"生き方"だと思います。」
名前も知らない彼に言われた言葉が、ヨレンタの頭の中でぐるぐる回った。
生き方……。
そんな不確かなものに、私は殺されかけたの?
お父様が異端審問官?
オクジーさんとバデーニさんが異端と判明した……?
6日前に、彼らと一緒に食事をした時にお父様が来たという事は、つまり……。
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