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    おはつ箱

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    土佐組現パロ。
    年齢操作。名前や呼び方余り変えてないです。距離感バグってる土佐組ですが、腐向けではないです。土佐弁はニュアンスで。
    自身が働いていたガソリンスタンドでの記憶を使っている為情報が古いですが、寛大な心でお読み下さいませ…。
    (作中に出てくる恒例行事は実際に行っていた楽しい思い出だったので、3人に体験してもらいました!)(本当に豚汁の屋台があったんですよ!)

    変わらない日々を12月31日
    今年最後の営業日、店は混雑していた。
    毎度の事ながら、どうして皆ギリギリになってまで車を洗うのか?と、肥前は朝からひっきりなしの洗車依頼にウンザリしていた。
    手洗い洗車の他に機械で洗うドライブスルー洗車もあるが、そちらも大行列だ。
    冬休みと言う事もあり、社員・バイトもほぼ総動員で給油、洗車、整備等を捌いている状況だし、陸奥守は朝からピットに入りっぱなしで殆ど顔を見ていない気がする。店長の南海はレジに入ったり備品や洗車機械の洗剤補充、地下タンクの残量を気にしたりと色々な雑務を抱えて忙しそうだった。
    (あ〜…腹減った…寒いし手は荒れるし…
    早く帰りてぇ…)
    ハッキリ言って肥前は疲れていた。いや、肥前だけではない、何故だかガソリンスタンドは12月が忙しく、25日を過ぎると更に忙しい為皆疲れ切っていた。
    「肥前、これ室内清掃終わったぜ」
    「あぁ、悪りぃな。じゃあ後タイヤワックス塗ってくれるか?」
    「わかった」
    バイトの大学生・南泉が張り切ってワックス用のスポンジを手に取るとその後ろから声が掛かった。
    「やあ子猫、頑張っているみたいだな」
    「偉いじゃないかどら猫。寒くはないか?」
    「南く〜ん!大丈夫?かあいいおてて荒れてない?」
    「げぇ!!あ、兄貴、お頭…ひ、姫まで!」
    完全にそちら側にしか見えない、南泉の身内がそこに居た。これで堅気だとは最初信じられなかったのを思い出す。
    (しかしいつ見てもなんかすげぇな…)
    肥前はその光景をぼんやり眺めるしか他がない。何故なら下手に関わると厄介だから。
    「うははは!坊主達腹が減ったろぅ?ほれ日光の坊主、アレを持ってこい」
    「分かりました」
    じじぃには見えない自称じじぃ、則宗も今日は居る。車から何やら複数のビニール袋を手に日光が戻ると、肥前と南泉は目を輝かせた。
    「寒い中ご苦労だな差し入れだ!」
    漂うスパイスの良い香り…メガネと髭の白いスーツのおじさん、ケ○タッキーだ。
    「すいません。ありがとうございます」
    「うわ〜いいのか⁈ありがとう爺ちゃん!!」
    喜ぶ2人に満足した南泉の身内は、
    「頑張るんだぞ」「南くん、今日すき焼きだかんね〜」「しっかりと勤めを果たせよ」「では邪魔したな、坊主達」
    と、口々に言いながら去っていく。
    関わると厄介なんてすいません。肥前は心の中で素直に謝り車を見送った。



    「おや?肥前くん。それはどうしたんだい?」
    袋をバックヤードに置きに来ると、丁度南海が事務所から出てきた。
    「南泉の家の人が差し入れだって。冷めない内に順番に食おうぜ…もう腹減って力出ねぇよ」
    「そうだね、休憩回そうか。あ、そうだ肥前くん、陸奥守くんの居るピットに少し持って行ってあげてくれないかね?」
    「あ”ぁ?何で俺が…「彼この後まだタイヤ交換1件とオイル交換2件入ってるんだよ。頼むよ、肥前くん」
    「チッ…しょうがねえなぁ…分かったよ」
    「ふふっ、悪いね」
    確かピットには陸奥守と同田貫後は…と人数分に分けると仕方なしにピットへと向かう。


    「はぁ〜だれたぁ…なんでこがに忙しいんじゃ…なんで余裕持ってこないんかのう」
    「んな文句言ったって仕方ないだろ?世の中はやっと休みなんだからよ」
    「わかっちょるけんど…あぁーー‼︎腹減ったぜよ〜」
    「あーー‼︎うるせぇな‼︎っもう文句言ってないで手ぇ動かせよ終わらねぇだろうが‼︎」
    肥前がピットに近づくと、陸奥守と同田貫が疲れからか言い合いが始まっていた。
    「おい、南泉の家から差し入れだとよ」
    こちらの声に気付いた2人が振り向き、手にした物を見て笑顔を見せる。
    「お、まじかよ、サンクスって言っといてくれ」
    「ありがたいにゃ〜お〜い!和泉守〜差し入れぜよ〜」
    奥で工具を片付けていた和泉守がガチャンバタンと音を立ててから顔を出した。
    「差し入れだぁ?ありがたいね〜お、チキンじゃねぇか!」
    「店長が上手く休憩回せとよ」
    「おん。わしはまだ作業があるきに、2人で順番に入ったらいいがよ」
    「いいのか?じゃあ正国ジャンケンしようぜ」
    「いやお前先入れよ。俺まだ次のタイヤ交換の準備あるからよ」
    「んじゃ悪いけど先貰うな!肥前ありがとよ!南泉にも伝えといてくれな」
    肥前から袋を受け取り和泉守は再び奥へと引っ込んでいった。役目は終わった、俺も腹が減った、そう思い戻ろうとする肥前に陸奥守が
    「のう」
    と声をかけた。
    「なんだよ」
    「今年も行く、でえいが?」
    「あぁ、あの人楽しみにしてるからな…寒いけど仕方ないだろ」
    「おん、そうじゃな」
    肥前の返事に嬉しそうに頷くと、じゃあの、と言って作業に戻って行った。


    21時。閉店時間。
    終わった、今年の仕事がやっと終わった。
    あれから何台もの洗車をこなし、手が空けば給油を手伝い、重たい灯油のポリタンクを運び、何回も洗濯した拭き上げタオルを畳み…本当に良く働いたと思う。今日の自分は誇っても良いと自画自賛する肥前は、缶コーヒーを片手に事務所の椅子で天井を見上げていた。
    「…〜ぁ、疲れた…」
    「お疲れだね肥前くん」
    閉店処理をする南海が声を掛ける。
    「っとに、何で年末ってこんな忙しいだよ…毎年毎年…」
    「本当に不思議だねぇ…日本人特有の気質と言うか、年内の事は年内にと言うただ成らぬ執念さえ僕は感じるよ」
    「確かに何が何でもってのは俺も感じるよ…本当不思議だよな…」
    所謂サービス業と言う職業柄、年末年始GWお盆、最近ではSW(シルバーウィーク)なるものまで増え、カレンダー通りの休みなど全くの皆無な世界。行楽地に向かう家族連れや友人同士、カップルを見送る日々…学生時代の友人達と休みも合わず、気がつくと大体スタンド内の者達とつるんでいる。
    そして今日のこの大晦日、いつからか恒例になった行事も…。
    「店長〜お疲れ様でした〜!また来年も宜しくっス!」
    「あぁ、南泉くんお疲れ様。今日は本当にありがとう。ご家族にもお礼を言っておいてくれるかね?」
    「分かりました!じゃ、肥前お先〜」
    「おう、お疲れ」
    南泉が挨拶をすませ帰って行くと、入れ替わりで同田貫と和泉守もやって来た。
    「んじゃ店長、肥前、お先ッス」
    「あ〜今日も良く働いた〜‼︎それじゃ俺ら帰るんで!じゃな、肥前」
    「2人ともお疲れ様。おや?陸奥守くんは?」
    「在庫確認してる。手伝うって言ったんだけどお前ら上がれって言うんで」
    「多分もう直ぐ終わると思うぜ?あ〜早く帰って歌仙の蕎麦食いてぇなぁ。じゃ、また来年もよろしく!」
    「そうなんだね、ありがとう。来年もよろしくお願いするよ」
    「おう!」
    「ウス」
    「じゃあな」
    2人が出て行き、事務所内には静寂が戻ってきた。缶コーヒーも飲み終わり、手持ち無沙汰になった肥前が椅子から立ち上がる。
    「なぁ、なんか手伝う事あんのか?」
    「ん?あぁ…じゃあそこの12月分の仕入れ伝票を纏めておいてくれるかい?」
    「ん、分かった」
    カタカタ…パラパラ…黙々と作業を続ける2人は会話もなく音だけが響く。幾分か経った後、
    「終わったにゃ〜‼︎」
    と、扉を勢いよく開けながら、陸奥守が事務所に入ってきた。
    「お疲れ様陸奥守くん。在庫確認もありがとう。何もなかったかね?」
    「おん、大丈夫じゃ。そっちはもう閉め作業終わったがか?」
    「あと10分程で…肥前くんの方はどうかね?」
    「俺はコレ纏めてダンボール入れたら終わりだ」
    「ん、優秀優秀」
    「それじゃワシは着替えて車のエンジンかけとくかのぅ。冬場はなかなか暖まらないきにね」
    「ん、分かった」
    「すまないね。終わったら僕達も支度して向かうから」
    「そんじゃ下で待っちょるぜよ〜」
    ヒラヒラと手を振りながら陸奥守は事務所を後にした。

    「‼︎さみぃ〜‼︎‼︎」
    暖房が効いた店から出ると、外は一段と冷え込んでいる。肥前は足早に陸奥守が待つ車に近づくと勢い良くドアを開け、助手席に滑り込んだ。
    「相変わらず肥前のは寒がりやにゃあ」
    「うるせーよ。寒いもんは寒いんだよ」
    エアコンの吹き出し口に手をやり暖をとりながら隣を睨む。
    「いらちじゃの〜。あれ?店長はどういた?」
    「鍵の閉め忘れないかチェックしてる…お、出て来た」
    店の従業員入り口から南海が丁度姿を表した。
    「あ〜腹減った…早くなんか食いてぇ」
    「わしもじゃ…今年も豚汁あるかのう?」
    「あれは毎年出てるだろ。俺はもう口の中がたこ焼きだよ…いや、じゃがバターもいいな…」
    「しょうまっこと肥前は食いしん坊じゃな」
    大晦日の恒例行事とは、少し離れた大きな神社へ初詣(2年参り)をする事だ。その地域では有名な神社で大晦日の夜は参拝客も多い為、様々な屋台がまるで祭りの様に立ち並ぶのだ。いつからか、この大晦日の夜に、3人で必ず行く事になっている。
    きっかけは何だったか、確か南海の何気ない一言だった気がする。最初は寒くて寒くて来年はぜってー来ないぞ、と肥前は思っていたのだが、なんとなく、本当に自然に3人の決まり事になっていた。
    「いやぁお待たせ。遅くなって申し訳ないね」
    後部座席に乗り込んできた南海が2人に暖かいお茶のペットボトルを差し出しながら言う。
    「全然待っちょらんよ。それじゃ向かうきね」
    陸奥守がハンドルを握り、3人を乗せて車は走り出した。



    「はぁ〜、相変わらず凄い人やにゃあ〜」
    鼻の頭を赤くした陸奥守が声を上げる。
    いつもの駐車場がいっぱいで、グルグル探し回りやっと止めた所から、3人は歩きながら神社へと向かう。もう23時は過ぎていると言うのに、陸奥守が言う通り道は参拝客で凄い人集りだ。この日ばかりは頑張って起きていたのか、子供の姿もチラホラ見受けられる。
    どの集団も寒そうだが、表情や纏う空気が何故か暖かそうにも見えるのはどうしてだろうか?
    境内の一角に設置された簡易テントに丁度空いた席を見つけると、3人はそこに腰を下ろす。
    「参拝してから屋台を見るかい?それとも先に何か食べようか?」
    普段余り感情を表に出さない南海も、この日は明らかにソワソワと楽しそうにしている。
    「もう俺腹減り過ぎて駄目だ。0時なんて1番参拝混んでんだから後にしようぜ」
    「そじゃな、先にゆっくりして少し人が履けてからお詣りするかのう」
    「それがいいね。さて、何から食べようか」
    「わし、豚汁買うてくるきに!2人も食べるろう?」
    「僕も頂こうかな…肥前くんは何をたべるんだい?」
    「あ?俺はたこ焼きとお好み焼きと…適当に買ってくるからあんたはここに居てくれよ。おい陸奥守、俺も豚汁頼む」
    「わかったぜよ〜」
    返事をしながら人混みに消えて行く。
    「陸奥守くんは本当にこの豚汁の屋台が好きだね」
    「まぁ、美味いからなぁ…じゃ、俺も行ってくるけど、あんた何か食べたいのあんのか?」
    「ん〜…僕のはまた後で良いから、と言うか僕も行かなくて良いのかね?」
    「せっかく席が取れたんだから、あんたに居てもらわないと困るからな。大丈夫だよ」
    「すまないね」
    「ん、じゃあ行ってくる」
    そう言って肥前も屋台の群れに消えて行った。
    1人になった南海は、周りをキョロキョロ見渡しながらこの1年、いや、ここ数年を思い返していた。慣れない店長と言う業務だが、陸奥守や肥前に本当に助けられている。性格も年齢も好みもまるで違うのに、3人で居る事が凄く心地が良く、気を許している自分がいるのだ。それこそ家族よりも…現に自分が数年前にたった一言「夜に初詣って楽しいのかい?僕はそういう経験がなくて…」と言った言葉を受け、その年の年末に連れ立ってから決め事の様に毎年の恒例となっている。自分から「もういいよ」と言えば良いのに、なんだかこの行事が無くなるのが寂しいと思って甘えているのだ。今迄出会った友人にさえ抱いた事の無い感情に、南海はくすぐったくなり、1人笑みを浮かべる。
    「お?何か楽しそうじゃな〜何か面白い事でもあったがか?」
    白い息を吐きながら、器を持った陸奥守が戻って来た。
    「あぁ、ありがとう陸奥守くん。いや、何でもないよ」
    「そうか?なんじゃえらいニコニコしとったから何かあったのかと思ったぜよ」
    「いやまぁ…あったと言えばあったがね」
    「なんじゃ⁇教えてくれんかのぅ」
    ニヤニヤしながら陸奥守がこちらを見る。
    「大した事では「おい、テーブル開けてくれ」
    南海が言いかけた所に肥前も戻って来た。来たのだが、両手に凄い荷物だ。
    「おんしそれどんだけ買うてきたんじゃ!」
    「す、凄い量だね肥前くん…」
    「腹が減ってんだよ俺は。目に付いたの手当たり次第に買ってきた」
    「たこ焼きにお好み焼き、焼きそばも。フランクフルトに…なんじゃこれ?肉巻きおにぎり?」
    「こちらにはじゃがバターに串焼きも入っているよ」
    2人が袋を覗いてその品数の多さに驚いている。
    「冷めない内に食うぞ」
    「あ、あぁ…」
    「…そじゃな」
    空腹の肥前の気迫に負け、一度上げた腰を再び下ろし袋の中身をテーブルに広げた。

    ゴーン…ゴーン…
    除夜の鐘が鳴り響く境内の一角で3人は黙々と箸を進めていたが、
    「わし、もう腹いっぱいじゃ…」
    「僕ももう良いかな…後は肥前くんがお食べよ」
    「…いや、流石に俺も腹いっぱいだ…買い過ぎたな…」
    明らかに買い過ぎの量をなんとか7割程腹に納めたが、もうこれ以上は入らないと箸を置く。
    「後は持って帰るかのぉ。しかし肥前のははしゃぎすぎぜよ」
    食べきれなかった分を仕舞いながら、陸奥守が唇を尖らせ文句を言う。
    「⁈‼︎はしゃいでなんかねーよ!!変な事言うんじゃねぇ!!」
    「明らかにはしゃいどるやろ!買い過ぎって自分で気が付かんか?」
    「だから腹減ってたって言ってんだろ⁈馬鹿かお前は」
    「馬鹿は肥前じゃ」
    「!!てめー!!「…ふっ、あはっ!あはははは!!」
    今にも掴みかかりそうな肥前と仰け反った陸奥守の間から、南海の大きな笑い声が聞こえてきた。珍しく大口を開けて笑う南海に2人はぽかとして動きが止まる。
    涙まで流し目元を拭いながら笑い続ける姿に、なんだか釣られて口元を緩めてしまう。
    「なにがそんなに可笑しいんじゃ」
    「…笑うとこなんてなかったろ」
    今だに笑い続ける南海に非難の目向ける2人に
    「あっ、あはは、す、すまないね、あははは」
    と、ずらした眼鏡を直しながら南海が謝るが、笑いはまだ収まらないらしい。
    「いや、ね、2人が居てくれて、本当に僕は感謝しているよ。ふふ…毎日が楽しくてね…ふふふ…ありがとう」
    笑いながら突然感謝の言葉を向けられピシッと固まる。
    「な、なんじゃいきなり」
    「き、気色悪い事言うなよ…」
    ジワジワと赤くなる頬は寒さのせいか、それとも照れなのか、居心地が悪くなった2人は頬を掻いたり頭を掻いたりと落ち着かない。
    「さっき僕がニコニコしていたら陸奥守くんが聞いてきただろう?」
    「そうじゃな」
    「こうやってここに一緒に来てくれる様になったのも、仕事で大変な時も2人が居てくれたおかげだなと考えていたんだよ。僕は昔から人間関係ってやつを築くのが下手でね…。だから、本当に心から君たちに出会えて良かったなと思っているんだよ」
    シン…と冷えた空気に南海の言葉が落ちて行き、さっきまで騒がしかった周りの音が少し遠く聞こえる。余りに真っ直ぐな瞳と言葉に、ここは茶化す場ではないと息を飲む。
    「…そんなん言うたらワシだって2人と居るんが楽しいし…毎日面白いぜよ!」
    陸奥守がニカっと笑い返すと
    「うん…」
    と、南海が嬉しそうに微笑む。
    そのやり取りを見ていた肥前は、あーとかうーとか頭を掻きながら
    「…お、俺だって…悪くねぇと思ってるよ…」
    と呟き、拗ねた様に横を向いてしまった。
    「うん、うん…ありがとう2人共…」
    何かを噛み締める様に何度も南海が頷く。
    すっかり沈黙してしまった3人だったが、陸奥守が何かに気付き
    「あぁ!!」
    と大声を上げ立ち上がる。
    「んだよ」
    「どうしたんだい?」
    「もう新年迎えちょる!とっくに!明けましておめでとうじゃ!早くお参り行くぜよ!」
    スマホをズイッと近づけると、ゴミと持ち帰る分の袋を手にし席を立つ。
    「あ!ちょっと待てよお前!ほらあんたも行くぞ」
    「え?あ、あぁ」
    歩き出した陸奥守を追う肥前。並び立った背を見つめて南海は声を掛ける。
    「陸奥守くん、肥前くん」
    「なんじゃ?」
    「なんだよ」
    振り返る2人に
    「今年も、…これからもよろしく頼むよ」
    にっこりと微笑んだ。
    「おん!よろしくじゃ!」
    「あぁ、よろしくな」

    肩を並べ3人で歩く。肥前と陸奥守は賽銭を幾ら入れるか言い合い、南海は終わったら甘酒をいただこうよと話す。
    年齢も好みもまるで違うのに、今年の願い事は全く同じだった。
    【これからも変わらず一緒にいられます様に】
    口に出さないささやかな、けれど大切な願いは神様だけが知っている。
    いつかは何かが変わっていくだろう。だが、この愛おしくも騒がしい日々が少しでも永く続いて行けばと手を合わす。



    「おみくじ引いて帰るかのぅ」
    「あ、僕甘酒貰ってくるよ」
    「いや待て、あんた甘酒でも酔うだろ。さっきもダメだって言ったろ」
    「大丈夫だよ」
    「あ、ちょっと、おい!」
    スタスタ歩き出した南海を肥前が追いかける。
    「ふはっ!本当騒がしいのぉ」
    その姿を見て陸奥守は噴き出す。
    あぁ、この気持ちに何て名前を付ければ良いのか。ムズムズとこそばゆい感覚に緩む口元が抑えられない陸奥守は、堪らず2人に向かって駆け出した。
































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    年齢操作。名前や呼び方余り変えてないです。距離感バグってる土佐組ですが、腐向けではないです。土佐弁はニュアンスで。
    自身が働いていたガソリンスタンドでの記憶を使っている為情報が古いですが、寛大な心でお読み下さいませ…。
    (作中に出てくる恒例行事は実際に行っていた楽しい思い出だったので、3人に体験してもらいました!)(本当に豚汁の屋台があったんですよ!)
    変わらない日々を12月31日
    今年最後の営業日、店は混雑していた。
    毎度の事ながら、どうして皆ギリギリになってまで車を洗うのか?と、肥前は朝からひっきりなしの洗車依頼にウンザリしていた。
    手洗い洗車の他に機械で洗うドライブスルー洗車もあるが、そちらも大行列だ。
    冬休みと言う事もあり、社員・バイトもほぼ総動員で給油、洗車、整備等を捌いている状況だし、陸奥守は朝からピットに入りっぱなしで殆ど顔を見ていない気がする。店長の南海はレジに入ったり備品や洗車機械の洗剤補充、地下タンクの残量を気にしたりと色々な雑務を抱えて忙しそうだった。
    (あ〜…腹減った…寒いし手は荒れるし…
    早く帰りてぇ…)
    ハッキリ言って肥前は疲れていた。いや、肥前だけではない、何故だかガソリンスタンドは12月が忙しく、25日を過ぎると更に忙しい為皆疲れ切っていた。
    7200

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