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    camellia_nagomu

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    camellia_nagomu

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    人形師ジョージとドールスナと宝石商エンフィ。
    (エンスナ)
    ※眼球舐め表現があります

    ドールスナ(パライバトルマリン)「スナイダー……僕のわがままを聞いてもらえるかな?」
    手のひらに乗るほど小さな小箱を大事そうに両手で包んで、草色の髪の男は言った。

    俺は内心ため息をつく。
    もう何度この問答をしただろう。

    「……またか。お前、俺の目玉を何度交換したか、覚えていないのか?」
    そう返すと、男は眉尻を下げて困ったように笑った。
    「うぐっ……それは……そうなんだけど……」
    その笑顔は出会った頃と同じだ。
    まだこの男が、俺の腰関節くらいの身長だった頃と。
    今ではすっかり大人の男の顔つきになったが、それでも時折見せる無邪気な表情は変わらない。

    「とても貴重な、ブラジルのバターリャ地方のパライバ・トルマリンが手に入ったんだ。
    パライバ・トルマリンはブラジルのバターリャ鉱山で最初に発掘されたんだけど、わずか数年で取り尽くされてしまって閉鉱した」
    エンフィールドは手のひらの小箱を片手に乗せ、もう片方の手で優しく撫でる。
    「……きっとこれは、君には似合わない色だと思う」
    眉根を寄せ、切なげに目を細めてエンフィールドは呟いた。

    「けど……実物を見たらどうしても、君の目に填めてみたくなって……いいかな?」
    その声は少し震えているように感じる。
    俺は今度こそ大きなため息をついた。

    この男……エンフィールドは宝石商である。
    様々な土地に出かけては宝石を売り買いしているのだと聞く。
    そして、珍しいものや美しいものを手に入れては、こうして『ドール』である俺の目に填めようとするのだ。
    昔からそうだ。
    赤、青、緑、黄、紫、黒、白、ピンク、オレンジ……
    いろいろな宝石を手に入れては、俺の所へ運び、俺の目に填めて遊んでいた。
    そして、毎回
    「絶対に、スナイダーに1番似合う宝石を見つけてみせるよ」
    と言って、微笑むのだ。

    ……俺には、そんな事はどうでもよく、目が見えさえすれば何でも構わないのだが。

    「いいかな?も何もない。どうせ目に填めて見せるまで帰るつもりはないのだろう?」
    そう言うとエンフィールドはわずかに頬を染めた。
    「うん……。ごめんね……」
    俺は再びため息をついた。
    「それで?……今度のはどんな石なんだ?」
    石には興味はないが……先程エンフィールドが口にした
    「君には似合わない色だと思う」という言葉が少し気になっていた。
    今まで、エンフィールドは「この色が、この輝きが、君に似合うと思う!」という主張と共に石を持って来ていた。
    それなのに今回はどうした事だろう。
    「それは……っ」
    瞬間、エンフィールドの顔が真っ赤に染まる。
    「ん……?なんだ?」
    「えっと……」
    何か言いづらそうだ。
    「どうした?」
    「……実物が、これなんだけど……」
    ぱかり、と手にしていた箱を開いてみせる。
    そこには同じ大きさの、同じ形をした石が2つ並んでいる。
    発光するようなネオンブルーに、ほんのわずかにグリーンが溶けたような、鮮やかな碧の輝き。
    その色に、見覚えがあった。
    「お前の瞳の色だな」
    「……ッ!」
    エンフィールドの顔がますます赤くなる。
    首も耳も真っ赤だ。
    「お揃いにしたかったのか?」
    「~~~~!!」
    ついに顔を覆って俯いてしまった。
    ふむ、図星か。
    「それならそう言えば良いだろう」
    「言えるわけないじゃないか!恥ずかしくて死にそうなんだよ!?」
    涙目になって顔を上げる。
    相変わらず顔は赤いままだ。
    相手と同じになりたい、というのは、人間の愛情表現の一種だと聞いたことがある。
    昔、『エンフィールドはスナイダーのことを特別に好きみたいなんだ』とジョージが言っていたが……そういうことだろうか。
    「もちろん、君が嫌だと言うなら無理強いはしないよ?」
    泣きそうな表情で言うな。
    まったく、面倒な奴だ。
    「嫌ではない。それに、既に加工済みなのだろう?さっさとしろ」
    そう言って、作業台の前に置かれた椅子に座り、瞼を閉じる。
    「あ、ありがとう……じゃあ失礼するね?」
    この作業台は、この家の主人であり『人形師』のジョージのものだが……俺もエンフィールドも、すっかり
    自分の物のように扱っている。
    「…………」
    「…………」
    カチャカチャと僅かな金属音が響き、温かいものがそう…っと頬に触れた。
    恐らく、エンフィールドの手だろう。
    カチャカチャ、カチャリ。
    キュッキュッ。
    ぬとっ。ぺたぺた。
    カチリ。カチリ。
    ぐりゅぐりゅ。
    キュルキュル。
    何度も繰り返され、聞き慣れた音。
    作業は淀みなく行われていく。
    「はい、おしまいだよ」
    しばらくしてから、そう言われた。
    閉じていた瞼を開く。
    視界は良好で、特に問題はないようだ。
    「どうだ?ん?」
    「うん……綺麗だよ、スナイダー……」
    熱に蕩けたような、恍惚とした表情でエンフィールドが俺を見つめる。
    「スナイダー……もっとよく見せて?君の顔に触れても良いかい?」
    「さっき目を交換する時に触れただろう。今更気にするな」
    エンフィールドは俺に触れる時、大抵の場合俺かジョージに確認を取る。
    もう長年の付き合いなのだから、
    いちいち聞く必要はないと思うのだが。
    「ああ……本当に美しいよスナイダー……」
    惚けた顔で、エンフィールドは俺の頬を撫でる。
    「やっぱり君は素敵だなぁ……」
    今度は髪に手を伸ばし、指先で前髪をゆっくりと払うように玩ぶ。
    「スナイダー……キス、したい……良いかい?」
    「は……?」
    その言葉を聞いてようやく俺は、エンフィールドの瞳が先程目にしたパライバ・トルマリンのごとくギラギラと輝いている事に気が付いた。
    「っ……、唾液が付くのは、部品が傷むから、やめろ」
    つい、そんな言葉が零れた。
    いや。冷静な判断だった筈だ。
    だが……エンフィールドの願いを正面切って拒否したのはこれが初めてだった。
    『ドール』は基本的に愛され、望まれた存在として生きる事しか出来ない。
    人間の言葉に逆らったり、拒否する事など有り得ないのだ。
    「……ごめん。そうだよね、分かったよ」
    しゅん、とうなだれて手が離される。
    傷ついたような顔をしたエンフィールドを見ると、胸が苦しくなった。
    「待て。……瞳なら、良い」
    「スナイダー?」
    「……俺の体はジョージのものだから汚されるのは困るが、この瞳はお前のものだ。汚そうが何をしようが構わない」
    エンフィールドはしばらくぽかんとしていたが、やがて
    輝く宝石のような笑顔を浮かべた。
    「……ありがとう!スナイダー!」
    ぎゅっと抱き締められる。……エンフィールドの体温は、とても高い。
    「ねぇスナイダー……僕を見て?」
    顎を掴まれ上を向かされる。
    「っ……!」
    「うん、そのまま、僕を見てて……」
    ゆっくりと、エンフィールドの唇が俺の瞳に近付いてくる。吐息が触れる距離まで来ると、ぴたりと動きを止め、またじっと見つめてきた。
    「スナイダー……君を愛してるよ」
    「っ……!?」
    突然の愛の告白に、動揺して体が硬直してしまう。
    直後。
    ぬろぉっ。
    「ひぁ…っ!?」
    瞳を舐められた。
    ちゅっ、ちゅぷ、ぺちゃ、ぬちゃっ。
    「んぅ……ふ、ぅんん……!!!」
    ぞくぞくとした感覚が背筋を走り抜ける。
    熱い舌先が眼球の表面をなぞる度に、言いようのない快感が脳天を突き抜けた。
    思わず妙な声が出てしまう。
    ぐちゅ、くちゅ……。
    粘着質な音が響く。
    「ふ、は……っ、ちゅっ……」
    「あ……エンフィールド……っ」
    「スナイダー……綺麗だ……大好きだよ……」
    「あ……あ……、あ……!」
    駄目だ。頭がおかしくなる。
    こんなのは知らない。怖い。
    「ひっ!?あっ、あぁっ……!?」
    視界がぼやける。
    きっとエンフィールドの唾液のせいだ。
    「スナイダー……かわいい……こっちも……」
    今度は左目を舐められる。「あぁっ……あ……!!」
    ゾクッ、ゾクッと背中が痺れる。
    気持ちいい。気持ち良すぎておかしくなりそうだ。
    これが人間に愛されるという事なのか?
    体が、全身が、あつい。
    幸福感で体が爆発しそうだ。
    『ドール』が人間の愛を望むのも、人間に逆らえないのも、ずっと理解できずに居たが、今なら分かる気がする。
    (俺は……今、幸せだ)
    瞳を舐められただけでこれなのだ。もっと深く繋がったら……どうなってしまうのだろう?
    想像すると怖くて、でも期待している自分もいる。
    「スナイダー……好きだよ……スナイダー……」
    ちゅっ……ちゅっ……れろぉっ。
    「あ……ッ♡あー……っ♡」
    エンフィールドの声を聞きながら、ただひたすらに快楽に身を震わせた。
    やがて満足したらしいエンフィールドは、最後にもう一度だけ、軽く俺の瞼に口付けを落としてから作業台を離れた。
    「はぁっ、は……っ、はっ……」
    「あ……あっ……あー……っ♡♡♡」
    全身がビクビクと痙攣する。
    まるで自分のものとは思えない甘ったるい声が漏れる。
    体が動かない。
    故障してしまったのだろうか?
    「スナイダー?大丈夫かい?」
    「ぁ……う……♡」
    返事をする余裕もない。
    視界はまだ滲んでいるし、思考もぼんやりとしている。
    まばたきをすると、目の端から、とろみのある透明な液体が流れ落ちた。
    「あ……ちょっと待ってね。今拭いてあげるから……」
    そう言って、エンフィールドはポケットからハンカチを取り出す。
    だが。
    「ま、待て、拭けば良いというものではない。油膜が落ちる。ジョージを呼べ」
    「えっ……あ、ごめん……!すぐに呼んでくるから……!」
    慌てて俺から離れ、部屋を出て行くエンフィールド。
    その足音を聞いているうちに、少しずつ冷静さが戻ってきた。
    「……何だったんだ、一体……」
    目蓋を閉じる。
    ぬるりとした舌の感触を思い出し、体温が上がるような錯覚を覚えた。
    「…………」
    俺は、『人形師』のジョージの手によって、ジョージの仕事のサポート役の『ドール』として生まれた。
    ジョージの仕事を手伝う事が俺の生き甲斐であり存在理由だ。
    ジョージは仕事仲間として、また生みの親の『人形師』としてちゃんと俺を愛してくれていると思う。
    ……けれど。
    先程の、エンフィールドに瞳を舐められた、わすか数分間は。
    俺が『ドール』として生まれてきて以来、最も幸せな時間だった。
    あの感覚を思い出すだけで、体の奥が熱くなる。
    「…………」
    ……このままジョージが戻ってこなければ良いのに。
    ……エンフィールドの唾液が乾いて、陶器の肌にシミとして残ってしまえば良いのに。
    「……っ!?俺は……何を考えて……!?」
    馬鹿な事を考えている自分に気付いて愕然とする。
    主人たる『人形師』が戻ってこなければ良いのに、なんて。
    そんな恐ろしい考えを、一瞬とはいえ抱いてしまった。
    やはり俺は、どこか壊れてしまっているのかも知れない。
    「……」
    胸に手を当てる。
    鼓動を打つ臓器など無いはずなのに、何故だか妙に落ち着かない気分になった。
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