ドールスナ(メスイキ編)「今日は少し変わった事がしたいんだ」
そう言って、エンフィールドはベッドに寝かせた俺の仮想性液タンクのパーツを外してしまった。
タンクと言ってもコップ1杯程度の小さなものだが。
とはいえ、常用のパーツを外される事にはわずかながら不安があった。
それがエンフィールド……俺のご主人様の行いであってもだ。
「……射精するなという事か?」
人間のオスには、稀に、射精せずに絶頂を迎える者が居るという。
『ドール』である俺に、その真似事をさせようというのだろうか。
エンフィールドは普段は砂糖を溶かして煮詰めたかのように俺に甘いが、褥ではとても意地悪になる事がある。
今日もそういう気分なのだろうか?
「うーん、少し違うかな……今日はドライオーガズムを試してみようと思って」
「なんだそれは」
聞いたことがない単語だった。
ドライ……は、乾燥や割り切った等の意味で、
オーガズム……は、確か絶頂の事だった筈だ。
しかしドライオーガズムとは何だ?
「まあ、簡単に言えばメスイキの事だね」
「メス……?」
エンフィールドが何を言っているのか全く分からない。
人間と違って、俺たち『ドール』には生殖機能が無い。
故に、人間の性欲のはけ口として作られた特別な『ドール』以外は、性交をしない。
性に関する知識は、関わりのある人間から教えられるか、『人形師』によってデータとして与えられるものだけだ。
俺の生みの親である『人形師』ジョージからは、そのようなデータは与えられていなかった。
「えっと……射精しないで、女の子みたいにイッちゃうこと……かな?」
意味が分からなかった。
「それなら最初から、俺に男性器パーツを付けなければ良かっただろう……」
エンフィールドの元へ引き取られた後、俺は、『エンフィールドが俺をたくさん愛せるように』と、ボディを改造された。
具体的には、全身の防水、防塵加工と乳首、男性器、肛門パーツの追加だ。
これにより俺はエンフィールドとセックスが可能になった。
俺は「入れられる方なのだから男性器パーツは必要ない」と言ったのだが、エンフィールドは「ペニスも性感帯なんだから、スナイダーには必要だよ」と頑として譲らなかったのだ。
余談だが、追加されたパーツはすべて、『ド淫乱仕様』とかいう設定になっている。
そしてエンフィールドは俺の体にセックスの快楽を教え込んだ。
……なのに今更、射精をするなとはどういうことだ?
「うん……そうなんだけどさ……でもほら、たまには新しい刺激もいいかなって!」
エンフィールドは、いつも通りの笑顔を浮かべた。
どうせろくでもないことを考えているに違いない……。
そう思ったが、『ドール』はよほどの事がない限りご主人様の言葉には逆らえない。
「はあ……好きにしろ……」
俺は諦めて目を閉じた。
「じゃあ、始めるね」
「んっ……♡」
温かくやわらかいものが唇に触れる。キスをされたようだ。
エンフィールドはキスが好きらしく、よくこうしてキスをして来る。
この行為自体は嫌いではない。
むしろ好きだ。
だから大人しく受け入れる。
「んちゅ……んむぅ……ふぁ……」
舌を絡められ、唾液を流し込まれる。
防水加工によってキスができるようになったおかげで、こういう事もできるようになったのは嬉しい。
「ぷはあっ……!はあ……はあ……」
長い時間口づけをされ、息苦しくなってきたところでようやく解放された。
頭がぼうっとする。気持ちいい。
もっとしてほしいと思ったその時、胸元に鋭い快感を感じた。
「ひゃう!?」
見ると、いつの間にかシャツの前を開かれていて、胸に直接触れられていた。
エンフィールドの手が、両方の突起を同時に摘まんでくりくりとこね回す。
少し触られただけで赤く色付くのがなんだか恥ずかしい。
恥ずかしいはずなのに、もっとして欲しいと思う自分もいる。
「あんっ……んぅ……ふああっ♡♡♡」
今度は両方同時に強くつねられて、思わず大きな声が出てしまった。
痛かった筈なのに、じんわりとした甘い感覚が広がる。
恐らくこれは『ド淫乱仕様』のパーツの効果だろう。
痛みさえも快楽に変えてしまう。
こんな体になったのは全てこいつのせいだ。
妙な体にされてしまったという怒りと、ご主人様に愛される幸せで頭が混乱してくる。
「ふふ、スナイダー可愛いね……」
「うるさい黙れ」
「はいはい」
「んあああっ♡」
かりかりと爪先で引っかかれて、また情けない声を出してしまった。
「……っ♡く、そ……ッ♡」
睨みつけるが、エンフィールドは楽しそうに笑うだけだった。
「ここ、もう勃ってるね。感じてるんだ」
乳首を弄っていた手が下腹部へと伸び、ゆるくペニスを掴まれる。「あ……あ……♡」
「スナイダーのおちんちん、白くて先っぽだけピンク色ですごく綺麗……」
エンフィールドは熱に浮かされたような表情で俺の性器を見つめている。
羞恥心を感じ、脚を閉じようとするが、「だめだよ」と言って開かされてしまう。
「やめろ……見るな……♡」
「どうして?とっても綺麗なのに……」
「んあああっ!!?」
先端をぐりゅんと指の腹で押し潰されて、目の前がチカチカした。
と同時に、脳内にピーッ、ピーッとエラー音が響いた。
『擬似精液がありません。補充してください。』
そんなアラートが脳内に響く。
疑似精液は、本来であれば体内タンクに貯蔵され、必要に応じて排出される。
だが今は擬似精液の収納タンクを外されているのだ。
このエラーが出るのは当然だろう。
俺は警告を無視した。
「すごい、お尻の穴ヒクヒクしてるよ……期待してる?」
「ちが……違う……そんなんじゃ……!」
「違うの?」
「あうっ……♡」
穴の周りをくるりと撫でられる。それだけで背筋がぞくぞくして、腰が跳ねた。
「ふふ……やっぱり……欲しいんだ?」
エンフィールドがオイルを手に取り、後孔へと塗り込めていく。
そして、指が俺の中に入ってきた。
「ふふ、スナイダーの中すごい……とろとろだね」
「うるさ……ひぃっ♡」
エンフィールドの指が動くたびに、グチュグチュと粘着質な水音が響く。
俺はアナルセックス用のパーツが使われているから、ローションは自動で腸内に充満するようになっているし、多少乱暴に扱っても損傷はしない。
だというのに、エンフィールドは毎回丁寧に慣らそうとする。
そのたびに俺は、本当に大切に扱われているような気分になる。
そして、どうしようもなく幸せな気持ちになった。
「ふあぁっ♡」
不意に、前立腺を押し上げられ、甲高い声を上げてしまう。
エンフィールドは嬉しそうな顔をすると、そこばかり責め始めた。
「あぁ……!やらぁ……そこばっかぁ……♡」
「嫌じゃないよね。だってほら、君の中、僕の指をぎゅーって締め付けて離さないよ」
「んあああっ♡♡♡」
二本目の指が挿入された。
バラバラと動かされると、たまらなく心地いい。
だがこの体は既に、更に強い快感を知っている。
早く、あの刺激がほしい。
もっとめちゃくちゃにして、何も考えられないくらい気持ちよくなりたい。
ちらり、とエンフィールドの股間部に目を走らせる。
スボンの中で硬く張り詰めていて苦しそうだ。
あれで奥まで突かれた時の快感を思い出して、思わずこくんと喉が鳴った。
「ん……?ああ、これかい?」
視線に気付いたエンフィールドは、
俺の中から指を抜き、ズボンの前を寛げ、下着の中から勃起した男性器を取り出した。
赤黒く、太くて長いそれは、何とも凶悪だ。
見てはいけない、と思うのに、目が引き付けられてしまう。
「これが欲しいのかな?」
「……っ♡」
耳元で囁かれて、顔が熱くなる。
恥ずかしいのに、体が疼いて仕方がない。
「……はやく、しろ♡」
俺は元々セックス用の『ドール』ではない。
男の誘い方など知らない。
だから、こんな言い方しかできない。
でも、こいつは分かってくれる。
「ふふ、分かったよ」
「あっ……」
両足を抱えられ、一気に貫かれる。
「あ"あぁああっ♡♡♡」
脳天を突き抜けるような衝撃に、視界が真っ白に染まる。
同時に、ピーッ、ピーッというエラー音と共に、脳内にメッセージが表示された。
『擬似精液がありません。補充してください』
またか。
俺が警告を無視しようとした時。
再度ピーッ、ピーッっとアラートが鳴った。
『精液の反応を確認。性液回収シーケンスへ移行します』
性液……回収……?
『回収開始』
次の瞬間、俺の身体は勝手に動き出した。
「んああっ!?」
自分の意思に反して、腰が揺れ始める。
「は……?な、なんだ、これ……っ!?♡」
股間部をエンフィールドに擦り付けるように、体が勝手に動いてしまう。
『精液回収』――あのアラートはそう言っていた。
つまり、足りない精液を、エンフィールドから搾り取ろうという事か?
「やめろぉっ♡止まれぇっ♡」
必死に抵抗するが、体は言うことを聞かない。
「スナイダー?どうしたんだい?」
エンフィールドが不思議そうな表情でこちらを見下ろしている。
見られたくないのに、恥ずかしくて死にそうなのに、それでも動くのをやめられない。
「エンフィールド…!精液タンクを返してくれ…っ!精液が足りないんだ!」
「え?」
「擬似精液がないから、こんな変なエラーが出るんだ……早く戻さないと……!」
「ふぅん……?」
エンフィールドは何か考える素振りを見せると、俺の腰を掴み、勢い良く打ち付けた。
「お"っ……♡♡♡」
あまりの衝撃に、一瞬意識が飛びかける。
「だから僕の精液が欲しいの?ふふ、いいよ、スナイダーが可愛くメスイキ出来たら、いっぱい注いであげる」
ここにね、とエンフィールドは俺の腹をさすりながら言った。
その仕草だけで、ぞくりと背筋に甘い痺れが広がる。
「あ、あぁ……♡」
『ドール』は活動を続ける為に、ご主人様の愛情を必要とする。
愛情にもいろいろあるが……精液の中出しは特に分かりやすい愛情表現だろう。
――エンフィールドの精液が貰える……♡
期待感に胸が高鳴る。
けれど、俺はメスイキが何なのか、どうすればメスイキできるのか、分からないままだ。
「ふふ、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ。ちゃんと教えてあげるからね」
エンフィールドは俺の頭を撫でると、再びピストンを始めた。
「あぁっ♡♡♡」
「ほら、ここをこうやって押されると気持ち良いだろう?」
エンフィールドの太い部分が前立腺パーツをグリグリと押す。
その度に、ビクビクと体が震えた。
「あっ♡そこだめ……!んん……♡」
「乳首での性感も大事な要素だね」
両方の突起を指で摘まれ、くりゅんと転がされる。
ビリリとした刺激に、背中を仰け反らせた。
「あああっ♡♡♡」
「ほら、アナルと乳首気持ち良いだろう?スナイダーはもうメスになってるんだよ?」
「な、何を馬鹿な……っ♡ひぃっ♡」
反論しようとするが、エンフィールドが奥まで挿入してきたせいで言葉にならない。
「君は僕だけのメスドール
だ。分かるかい?」
「あっ♡ああ……っ♡」
『ドール』にとってご主人様の言葉は絶対だ。
「は、い……俺は……エンフィールドの……メスドール……♡」
そう口にしたとたん、脳内でピーッとアラートが鳴った。
続けてメッセージが再生される。
『性別を『男性型メス』にしますか?(Y/N)』
なんだこれは?訳が分からないまま、気付けば自動的にYESが選択されていた。
『性別を『男性型メス』に設定完了』
『快楽値上限を更新』
『メスイキ機能が解放されました』
『メスイキ機能解放により擬似精液不足時の回収が不要となりました』
『精液回収シーケンスを終了します』
メッセージが次々と流れていく。
メスイキ機能……
どうやらこれで、エンフィールドのやりたかった事ができるようになったらしい。
「スナイダー……?どうかした?」
エンフィールドが動きを止め、心配そうな顔でこちらを見ている。
「あ、あぁ……なんでもない……」
「本当に?なんだか様子がおかしいけど」
「…………」
メスイキは可能になったらしいが、それをエンフィールドに伝えるのは恥ずかしい。
「スナイダー?どうして黙っているんだい?やっぱりどこか具合が悪いんじゃ……」
エンフィールドが俺の頬を両手で包み、じっと見つめてくる。その真剣な眼差しに、何故か胸が苦しくなる。
「今日はもう終わりにしようか?」
「え?」
そんな。
今日はまだ、中出しされていないどころか、エンフィールドは1度もイッていないのに。
エンフィールドが腰を引く。
ずろぉっと粘着質な水分と俺のアナルが擦れ、音を立てた。
「やぁぁぁっ♡」
体が勝手に、行かないで、と言わんばかりにきゅううとエンフィールドのペニスを締め付ける。
「え?スナイダー……?」
エンフィールドが驚いたような表情を浮かべた。
「ちが……違うんだ……!」
咄嵯に出た自分の声に自分で驚く。
まるで甘えた子犬のような情けない声だった。
恥ずかしくて死にそうだ。
「スナイダー、今のは何だい?まさか僕の事を引き留めようとしたのかな……?」
エンフィールドがにこにこと笑いながら、再び腰を押し進めてきた。
「あ"っ♡」
「ふふ、可愛いねスナイダー。そんなに欲しいのなら、いっぱいあげるよ」
エンフィールドは俺の両足を抱え込むと、一気にピストンを始めた。
「あぁぁぁぁっ♡♡♡」
「ほら、どうして欲しいのか言ってごらん?」
エンフィールドの言葉が、ご主人様からの命令として脳に届く。
「っ……!お、奥まで……突いて……♡精液、注いでくれ……っ♡」
そんな事言いたくないのに。
口が勝手に動いてしまう。
「よくできました」
エンフィールドは俺を褒めると、ぐいっと更に深く挿入してきた。
「あぁぁっ♡♡♡」
最奥まで突き上げられて、目の前が白くちらつく。
「ああっ……!おく……すご……♡あっ……あっ……♡」
びく、びくと痙攣する体をエンフィールドの太い腕で押さえ込まれ、身動きが取れなくなる。
そのまま、激しいピストンが続いた。
どちゅん、どちゅん、と肉同士がぶつかり合う音が響く。
「あっ♡ああーっ♡ああっ♡♡♡」
「ふっ……!スナイダー、出すよ……っ!!」
エンフィールドが俺の最奥で射精した瞬間――
「~っ♡♡♡あああああ―――っ♡♡♡♡♡♡」
俺は頭脳回路が焼け付きそうな程の
快感に襲われ、絶頂を迎えた。
「どうやら、ちゃんとメスイキできたようだね」
エンフィールドが満足げに微笑み、
よしよし、と優しく頭を撫でられる。
俺はエンフィールドの腕の中で、放心状態になっていた。
「は……♡は……♡」
体中が熱を持って、うまく動かない。
アナルには、まだエンフィールドのモノが挿入されたままだ。
エンフィールドが少しだけ動く度に、甘い刺激が走る。
「スナイダー?大丈夫かい?」
エンフィールドがちゅっ、ちゅっと顔中にキスを落とす。
「あっ……♡んんぅっ♡」
そのたびに、ぴくん、と反応してしまう。
おかしい。
いつもなら絶頂すれば快楽値が減少するのに
、一向に下がる気配がない。
「エンフィールド……何か、変だ……っ♡」
「何がだい?」
エンフィールドが不思議そうに首を傾げる。
「……快楽値が、減らない……」
「それはまあ……メスイキはそういうものらしいから……」
「は?」思わず間の抜けた声が出てしまう。
「メスイキすると、ずっと気持ちいいままなんだってさ」
「な……!?」
なんだそれは。
聞いていないぞ。
「だから、ほら……っ」
エンフィールドがばちゅッと強く腰を打ち付ける。
「ひぃぃぃッッッ♡♡♡」
「イッたのに、またすぐイキそうな位気持ち良くなれるんだよ?」
「そ、そんなの……っ♡だめだ……っ♡」
こんな状態で敏感な内壁を擦られたら、またすぐにメスイキしてしまいそうだ。
だが、エンフィールドは容赦なく抽挿を再開した。
「やっ♡あぁーっ♡ダメだって……♡言ってるだろう……っ♡あーーーッ♡」
いつまでも引かない快楽の上に、更に快楽を上乗せされる。
「やぁぁっ♡エンフィ……っ♡もぉ……っ♡おかしくなる……っ♡」
エンフィールドに必死に訴えるが、彼は嬉しそうに笑うだけだった。