クロディ最終話③ 水音で目が覚めた。屋根を水滴が跳ねる音だ。傾いた視界に映る窓を、雨垂れが伝って流れ落ちていく。豪雨と言うには控えめで、小雨と言うには存在を主張する、中途半端な雨足だ。
空はまだ薄暗く、雨のせいで時間の感覚がない。深夜ではないが、夜明けにはまだ少し早いくらいだろうと当たりを付けて、上体を起こす。身体が軋む。頬にも、ささくれだった堅い木目の跡が付いている。
久しぶりの我が家とはいえ床で眠るものではないな、とディアスは手近な壁にもたれ掛かりながら思った。
レナの家で夕食を取り、思い出話に適当な相槌を打っていたのは数時間前のことだ。久しぶりの団欒は懐かしさと共に言い知れない喪失感をディアスにもたらした。だが、レナが嬉しそうに思い出話をするので悪い気はしなかった。それに、クロードもレナやその母親の話に楽しそうに聞いているように見える。出会った頃の彼なら疎外感を感じて拗ね出しそうな話題も、興味深げに耳を傾けていた。まるでこの一家の一員だ。ぼろぼろと崩れるブラウニーを頬張りながらディアスは思った。
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