「ゆーさくー!」
と、休日の朝に Ai が起こしに飛び込んでくる時にはロクなことが起こらない。昨日の体育祭で疲れきっているから、申し訳ないが今日は無視を決め込みたい。
しかし続く言葉は予想外のものだった。
「だらだらしよーぜ!」
「……わざわざするものなのか、それは」
「わざわざするんだよ。作業禁止! スマホ禁止! 勉強も禁止! お出かけも禁止!」
「何もすることがないな」
そうだよ何もしないんだよ、と言いながら Ai は SOLtis を脱ぎ捨てた。デュエルディスクからにょっきり出てきて俺の枕元で大の字になる。
窓の向こうで鳥がチヨチヨ鳴いていた。車や自転車が走ってゆき、徒歩で出かけていく親子の話し声がした。
どうせ何もするつもりがなかったから、予定通りといえば予定通りだ。
だが、 Ai まで俺に付き合ってだらけているのは、とてももったいないような気がする。俺だって、体は疲れているが、頭は別に疲れていない。退屈だ。
「Ai 、やっぱり何かしないか? これでは、だらだらしているというより惰眠を貪っているだけだ」
「うーん。まあ、そうかも? じゃあオレの積みドラマ一緒に見る?」
「ど、どれ見るんです!?」
Ai の提案に、床掃除中のロボッピが食いついた。気になる作品があるんだろう。 Ai としては気になるリストに入っているものならなんでも良かったらしく、しばし話し合いが行われた末に一本のドラマが選出されたようだ。
掃除が終わるまで待つことになり、俺たちは再び天井のひび割れを数える作業に戻る。ニュースから隔絶され、勉強も作業も進まないが、こんな休日もたまにはいいだろう。