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    wnshn1010

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    wnshn1010

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    結構前に呟いてた、年齢操作ものです。
    このあと普通にカクにばれるかパウリーの記憶戻るかして、めちゃくちゃ怒られます。

    #ルチパウ
    lucipau
    #年齢操作
    ageManipulation

    (今世も)獣の男決して大きくはないが良く通る声が自分の名前を呼んだことに気づいた男は、帰り支度の途中の手を止め、声の主を探すべく顔をあげる。教室の扉からこちらにひらひらと手をふる青年のいかにもなにか企んでいそうな胡散臭い笑みに、男は僅かに顔をしかめた。

    「そんな顔をするな、分かりやすい奴じゃ」

    ゆったりとした動きで教室に入ってくるカクは、男の失礼な態度に軽く笑う。下校に部活にと教室を出ていく生徒たちのほとんどと軽く挨拶をかわすカクはカバンを肩にかけ逃げようとする男の前に立ちふさがると、ふん、と鼻息を鳴らした。

    「さて、今日こそ約束のものを渡してもらうぞ、ルッチ!」

    そう告げられた男―ルッチはなんの話だ、とのど元まで出かかったところで、随分前にかわされた何気ない会話を思い出す。

    「……なんの話だ」
    「おい、今思い出したって顔してたぞちゃんと。わしをだまそうとするなんて非情な男じゃ」
    「ちっ」

    体がずらされ、あけられた道を歩き出すと同じく隣を歩き始めたカはじとりとこちらをねめつける。「今回」は一般人ではあるものの、一年中無表情威圧感付きともなればルッチに気安く絡んでくる者は皆無なのだが、隣を歩くひょうきんな男は「前回」と変わらない温度で接してくる。
    こちらを見ようともせず真っ直ぐ前のみを見つめるルッチに、カクはわざとらしくため息を一つ吐いた。

    「のらりくらりと逃げてくれよって…貸してくれる約束じゃったろう」
    「約束をした覚えはねえ。お前があまりにもしつこいから仕方なくだ」
    「まあな。言ったじゃろ?もう絶版になっておるし、どこの古本屋だのなんだのに行っても見つからんかったんじゃ」

    カクが求めてやまないそれは、ルッチらが生まれるよりずっと昔に映画化された洋画の原作小説である。
    排気ガスと腐臭に包まれた工業都市で生まれ幼いころから靴磨きの仕事をしていた主人公の少年が、都市外れの廃工場で一人の偏屈な中年男性と出会う。若い頃に故郷を飛び出し、夢に敗れた男と錆びれた町であらゆる悪意に囲まれながらも夢を失わない少年が、もう一度夢を叶えるためにとあるものを造り始める…といった、ありがちな物語だった。
    母親が海外で入手したらしいそれはルッチによって全く興味のない品であったが、ある人物のために読まざるを得なかった。しかしルッチとは違い、カクは映画を見てたいそう気に入ったらしい。聞いてもいないのに映画の感想をしみじみと語るカクに、原作小説ではと話に乗ったしまったが最後、原作を持っているのかと飛びつかれ、貸してくれとせがまれ、どこで出会っても手を差し出して原作をねだる『妖怪』原作小説貸してくれと化してしまったのだ。
    あまりにも酷かった(ウザかったともいう)ので、一週間ほど校内で出会わないように立ち回り、そのままテスト期間に入ってしまったのでカクも流石に妖怪原作ねだりをしていられなくなったのだろう。かく言うルッチもその流れで頭から離れていたのである。

    「とにかく今日こそは貸してもらう!今日バイト帰りに寄らせてもらうわい」
    「…いや、その必要はねぇ。バイトの前に寄っていけ」

    ルッチがそう告げると、普段から真ん丸な目をさらに丸くして、カクはその無表情な横顔を見つめた。二人の青年の間で奇妙な沈黙がおり、周りの雑音だけがやたらと耳につく。何も答えない相手に訝しげな目線だけ向けると、カクは小さく首を傾げた。

    「……ええのか?」
    「なにがだ」
    「おぬし、いつもは嫌がるじゃろ。学校帰りに人が来るの」
    「まぁ…、今日はいい」
    「なんじゃ。今日は誰も連れ込む予定がないということか」
    「…なんだと?どういう意味だ」
    「おぉ、怒るな。いやこの間帰りに寄るって言ったら断ってきたじゃろ。その時ふと思ったんじゃ。親御さんがおらんのをいいことに学校帰りにその辺の美人でも引っ掛けて夕方に一発しけこみ、やることやったらささっと帰らせて、夜にはしっかり一人で寝とるんかと」
    「は、くだらねぇ…………」
    「あぁ、わしもそう思っとった。だいいち、おぬしやるとして自分の家に呼ばなさそうじゃし」
    「問題はそこじゃねぇだろ」

    冗談じゃ、とくつくつ笑うカクは1年前に偶然再会した隣を歩く男が、「前回」と違い大きな秘密を抱えていることにまだ気が付いていないようだった。下校の後、人を自宅に入れないことに対してそれほど違和感を感じていない。退屈な授業をサボるべく、教科書をはるか先まで予習しているとでも思っているのだろう。

    先程カクが言った言葉に、少し、ほんの少しだけ焦った。なぜならその内容はあまがち間違いではないからだ。
    ロブ・ルッチは夕刻、毎日とある人物を自宅に連れ込んでいる。




    「おぉ、相変わらずでかい家じゃ…モデルハウス顔負けじゃ…」
    「わけのわからねぇことを言うな。そこで待ってろ」
    「おじゃましま~す」
    「おい聞け」

    カクはといえば、どうやら「今回」は本当に普通の一般家庭に生まれたらしく、3人家族が住むには大きすぎる家の廊下を物珍しそうに眺めながらルッチのあとをふらふらとついて歩く。後ろ目に余計なことをしないか確認しながら階段を上り、廊下の突き当りの部屋を目指すルッチの後ろで、同じくひょこひょこと階段を上ってきたカクは、廊下の途中の部屋で足を止めた。

    「な~ルッチ。ここお前の部屋か?」
    「そうだが…、お前が妖怪になりかけてまで欲してるものはそこにはねぇ。親父の書斎だ」
    「ほ~ん…………」

    扉にはルッチやカクの目線の場所に小さな白い鳩のキーホルダーが取り付けられている。キーホルダーのつぶらな瞳をしばらく見つめていたカクは、ルッチを振り返るとにやりと悪い笑みを浮かべる。平和な世界で多少は年相応に生きているのであろうその笑みに、ルッチは非常にげんなりとした顔を浮かべた。

    「おい、やめろよ」
    「そうじゃな、わかっとるわかっとる。ここは男子高校生らしく……エロ本探しじゃ!!」
    待ってろルッチのおかず!弄り倒してやるわい!!

    意気揚々と開け放った扉の先、必要最低限の家具が置かれた広々とした部屋にはベランダに続く大きめの窓から赤い夕陽が差し込んでいる。
    その空間で真っ先に目に入るダブルベットには、


    下を履いているのかいないのか、ワンピースのようになった白い大きめのTシャツから柔らかそうなふとももを晒し、少し長めの金色の髪をキラキラと反射させた――――齢8歳ほどの男児が寝息をたてて横たわっていた。




    バン!!!!!!!!!!

    勢いよく閉められた衝撃でぶらぶらと揺れるキーホルダーは「前回」と違い、なにも語らない。
    どちらも動くことなく沈黙がおりた数秒後。

    「110」を打ち込むべく音もなく取り出したスマートフォンをルッチが手刀で叩き落とし、廊下に落ちる寸前に足で蹴り上げたカクの反対の手に持ち替えた先で通話ボタンが押される前に、親指を折らんばかりの勢いで反対へと反らしてルッチが阻止するまで、およそ一般人では追えない動きを繰り広げた二人は、一気に押し寄せた様々な情報量に息を切らせながらも、お互い譲れないもののために力を緩めずにらみ合った。

    「ぃ……なにしてやがる馬鹿野郎…………!!」
    「今までありがとうルッチ月一で面会には行ってやる……!!」
    「やめろ押したらてめえを三枚おろしにしてやる……!!」
    「それしたらどっちにしろおぬしはお縄につくわい…!!うおぉ指折れる……!!!」

    一つのスマートフォンを取り合う二人の前で、いつの間にかゆっくりと先程閉まったはずの扉が開かれる。しばらくお互いの顔や頭を押し合い格闘を続けていた二人は、一人の少年が顔をしかめてその光景を見つけていることに気が付くことができなかった。

    「……ルッチ、なにやってんだ?」

    はっとした二人が目線を下に下げると、まだ柔らかさが残る手を丸めて眠そうに目を擦る──カクの記憶の中の人物と確かに面影のある──金髪の少年がそこに立っていた。

    「パッ………」
    「ぱ?」
    「パ、パウリー!!!!!!おお会いたかっグベェッッ!!!」
    「ああぁ!おおおい大丈夫か!?」
    「………………」

    少年を抱きしめようと広げた腕は温もりを包むことなく横から飛んできた足蹴りに、呆気なく空をかき、長身が長い廊下を転がっていく。訳も分からないままとりあえず腕を広げて待っていた少年は人間が目の前で吹っ飛んでいく光景に叫び、慌てて駆け寄った。卑劣極まりない行為をした当本人は思わず出てしまった足に流石に少し焦った表情を見せて固まったままだ。

    「お、おのれなんてやつじゃ…。人の心ないんか…」
    「なぁ、お前大丈夫…ってあれ……?なぁ、お前もしかして…」
    「パウリー!おぬしやはり…!」
    「おいカ…」
    「もしかしてお前!!!!」

    「ルッチの友達か!?」




    いやー、ルッチはさー?いっつも顔怖いし全然笑わないだろ?だからぜーったい友達居ないと思ってたんだよ俺は!だから俺ぐらいは友達で居てやらないとなーって思ってたんだけどまさかちゃんと高校で友達作ってたなんてびっくりだぜ!そういえばなんで俺の名前知ってたんだ?ルッチから俺の話とか聞いてた?でもま、改めまして俺はパウリーな。10歳!そんで、あんたの名前は?

    「……カクじゃ」
    「カクって言うのか!よろしく!不思議な鼻してるな?触っていい?」
    「おお、ええぞ」
    「ふおお、意外とやらかい」
    「普通の鼻じゃからな」

    矢継ぎ早に話していたかと思えば、もう既に他の事に関心がそれでいく姿は年相応で、つんつんと鼻をつつき続ける短い指を食べるフリをしてやると、わあぁぁっと叫び後ろに転がっていく姿にカクは大きく笑い声をあげた。起き上がり、怒ったように口を開こうとしたタイミングで、扉を開けて入ってきたルッチがパウリーにリビングからお菓子を持ってくるよう告げると小さな影は嬉しそうに廊下へと消えていった。
    父親の書斎からとってきたのであろう、手元にある書籍をカクに差し出す。

    「………………これだ」
    「おぉ、ありがとう。……ルッチ、なにか言うことがあるんじゃないか?」
    「…汚すなよ」
    「おい」
    「…蹴ったことは謝る」
    「それはそう。…じゃなくて!分かっておるじゃろ?」
    「……パウリーか」
    「まったく……1度たりとも話に出さんから、てっきりお前の中の記憶から消えてしまっておるのかと思っとったわい」

    ローテーブルの前で胡座をかき、すぐ近くの勉強机の椅子で足を組んで黙り込む男が話し出すのを粘り強く待つ。パウリーがいつ戻ってきてもおかしくない状況だが、真相を明らかにするためにはこの男が自ら話し出すのを待つ他ないと踏んだカクは先程まで小さい少年が寝ていたベッドを見つめる横顔を見ている他なかった。

    「…………あいつと出会ったのは5年前…、俺が13の時だ。隣りに引っ越してきた夫婦の一人息子があいつだった。俺は覚えていたが……あいつは覚えていなかった」
    「…そうか」
    「だがまぁ、パウリーもたったの5歳。俺は元々断片的覚えていて、完全に思い出したのは12の時だったから個体差がある可能性もあるが…」
    「…………」
    「あいつの両親は共働きで飲食店を経営してて、帰ってくるのはほとんど深夜だった。翌年から学校に通うようになる息子が一人で心配だとでも言っちまったんだろう。意気投合したらしい俺の両親がだったらうちに部活もせずに夕方で帰ってくる暇な奴がいるから、そいつに面倒見させればいいとかなんとかで、学校帰りにパウリーがうちに来るようになった」




    扉を開けた先に小さな背中からはみ出るランドセルを背負い、おずおずとこちらを伺う少年を見た時はどうしようかと思った。こんにちは…と呟く小さな声を無視して背を向けて中に戻ると、小さな影は慌てて玄関に入ってくる。何も言わず先を歩くルッチはリビングに続く扉の前で自分以外の足音が聞こえないことに気が付き振り返ると、そこにはまだ靴も脱がず途方に暮れた表情でこちらを見つめる少年がいた。
    「前回」は、突然ルッチの家に来る無遠慮な男は招待もしていないにも関わらず家主の許可も得ずにズカズカと入り込んでは好き放題していた。人の酒の趣味にとやかく口を出し、給料日に奢るからと飯を強請る。少し目を離した隙にベッドを占領して眠っていた時は本当に殺してやろうかと思ったが、殺さなかった。
    殺せなかった、の間違いかもしれないが。

    「…お前、本当に覚えていないのか?」
    「……?あの…おれ…」
    「………いや、いい。さっさと入れ」
    「あ、うん…。お邪魔します…」

    戸惑った表情を見て思った。
    もう、あの男はいないのか。
    かつて己の感情を揺さぶり、唯一その人生において心残りとなった男と同じ顔の子供と長くいるのは、自分の心が死んでいく気がした。

    リビングに通し、大人10人は余裕で座れそうなソファセットの端にちんまりと座るパウリーの前に、コースターと冷えた麦茶が注がれたコップを置いてやる。
    ソワソワと広い部屋を見渡していたパウリーは置かれた麦茶とルッチを交互に見ると、ありがと…とまた小さく呟いた。

    「親が迎えに来るまで、好きにしてろ。ただし物は壊すな。俺は2階の部屋にいる。学校の宿題でもやっとけ」
    「う、うん!」

    要件だけ伝え、コクコクと首を振るパウリーに一瞥くれるとすぐに踵を返してリビングを出る。階段を上がって自分の部屋に戻ると、そのままベッドに身を投げ出し大きく息を吐いた。落ちていく瞼の裏には、太陽の光を浴びて髪を白く反射させた男が笑っていた。


    目が覚めた時、部屋は真っ暗で日が完全に落ちたのだと分かる。おかしな時間に寝たためか少し痛む頭を抑えながら部屋の電気を付けると、ふと階下の状況が気になった。相手は7歳のガキ。大人しそうに見えてはいたが、一体何をしでかすかわかったものでは無い。とばっちりを食らうのはごめんだった。
    廊下や階段の電気を付けながら階下へ降りると、リビングの電気は付けられていないことが確認できる。もしや帰ったのかと玄関を見てみれば、不格好に揃えられた小さな運動靴が並べられている。リビングの扉を開けソファを見遣れば、ほとんど飲まれていない麦茶に、最初座った場所から変わらぬ位置でソファに横になる少年がそこにいた。
    カーテンが閉められていない窓から差し込む街灯の光に照らされた少年に近づいても寝息は穏やかなまま起きる気配がない。ふと、寝入る直前まで見ていたのか、パウリーの手元から落ちて床に転がっている物を拾い上げたルッチは、小さく瞠目した。

    「ぅん…?…あ、ご、ごめんなさいっ」
    「…これは?」
    「あ…そ、それ買って貰ってお父さんに…」
    「好きなのか?…船が」

    人の気配で目が覚めたのか、慌てて体を起こすパウリーの隣に座り、拾い上げた本を渡す。
    本は表紙に『船大図鑑』と書かれた各国の様々な船の図鑑だった。
    本を受け取ったパウリーはルッチの質問に顔を輝かせると、大きく頷いた。
    昔から車や電車より船が好きだったこと。乗るのはもちろんだが、いつかは自分で作ってみたいこと。誕生日に簡単なボトルシップを買ってもらいたいこと。
    最初の口下手が嘘のように小さな口を動かし、短い腕を使って大きな身振り手振りで話す姿にルッチはかつての後悔を思い出す。好きな物の話になると、途端に喧しくなる男だった。昔から。
    自分はどうやら大きな思い違いをしていたらしい。記憶がなくともこの少年は間違いなく、パウリーだった。
    自分はなんて運がいいのか。「今回」おそらくパウリーに初めて出会うことが出来たのは自分が最初だろう。
    だったら、そう。

    「俺は決めんだ、カク」



    やるしかねぇ、光源氏計画!!!!ドン



    「えっ……、いや待て待て待て!!!!」
    「なんだ」
    「なんだ、じゃないわ!!!!なにをドンしとるんじゃ!!!!おかしいじゃろ、さっきまでしんみりした感じだったろうに!!」
    「声がデケェな」
    「誰のせいじゃ誰の!!!無駄に長い過去編やってそれか!色々言いたいことはあるが一言言わせてくれ、最悪じゃ!クズじゃ!」
    「一言じゃねぇぞ」
    「んんぎぎぎ………揚げ足ばっかりとりよってこの…!」
    「カク、ルッチ!お菓子持ってきた!」

    行儀悪く足で扉を開けて両手いっぱいにお菓子の袋を抱えたパウリーはローテーブルにそれらを落とすと、カクとルッチを交互に見る。何か言って欲しげな表情にカクがお礼を言うと、嬉しそうにはにかみ、そのまま椅子に座るルッチの手を引いて胡座をかかせ、自分もその間に収まった。
    ずっと昔からの定位置感溢れ出るその光景にカクの笑顔は思わず引き攣り、ルッチの優越感丸出しの表情にテーブルの下でこっそり膝を蹴ってやる。

    記憶が無いのは残念だが、パウリーが「前回」と変わらないのだとしたら、自分はきっといい友人になれるとカクは確信していた。「前回」は任務が邪魔をしたが、「今回」はそんな気兼ねもない。自分の方が少し年上になってしまったが、それでも今度こそは隣で嘘偽りない笑顔で笑い合いたい。
    パウリーの存在を黙っていたルッチにはまだまだ言いたいことが山ほどあったが、目の前に座る存在の奇跡に、カクが信じてもいない神に感謝をしたのはここだけの話である。

    パウリーもやはりカクをすぐに気に入りたくさん話を───特に例の映画の話をしたがったが、カクのアルバイトの時間が迫っていた。名残惜しいが、今日はここまでじゃなと頭を撫でてやるとパウリーがまた来てくれる?と不安げな表情を見せるので、今度こそその小さな体をぎゅっと抱き締める。少し驚いたようなパウリーはハグが好きなのか?と嬉しそうに言うと短い腕を背中に回し、自分よりも大きな背中を叩いてやった。
    今度こそ、ルッチも黙って見ていた。

    「それじゃあパウリー、絶対また会いにくるからの」
    「うん、待ってるぜ!」
    「ルッチに変な事されたらすぐワシに言うんじゃぞ」
    「変な事?」
    「早く行けカク」
    「おぬしには色々と言ってやりたいことがあるから、また明日学校で会おうなルッチ」
    「断る」
    「冷てえなルッチ…会ってやれよ。友達少ないんだから」
    「ほれ、パウリーもこう言うとる」
    「いいからさっさと行け!」
    「うわっ」
    「怒った!こわっ」

    パウリーに手を振り、逃げるように飛び出して行ったカクを追いかけて玄関を出ると、もう姿は見えなかった。はーっと感心したように大きく息を吐いたパウリーは嬉しそうにルッチを見上げる。

    「なんか、変な感じだ。初めて会った感じがしねぇや」
    「……そうか。ところでパウリー、今日は来ないと聞いていたが?」
    「あー、うん。おんなじクラスのヨサクがな、おつかいたのまれちゃって遊べなくなったんだよ」
    「そうか。来るならちゃんと連絡入れとけ」
    「ごめんごめん。な、カクが言ってた変な事ってなに?」
    「気にするな。それよりパウリー」

    リビングに戻ってソファに座り、飲み物を用意しようとしていたパウリーの名前を呼ぶ。それだけで察したパウリーはああ、と頷くと小走りでルッチの元まで来ると、膝に乗り上げた。

    小さな手でルッチの頬を包み、上を向かせると唇と自分の唇を重ね合わせる。啄むようなキスを2、3度送り、ゆっくりと顔を離したパウリーの額にキスをすると、その小さな体を腕の中にすっぽりと包み込む。

    「おかえりのちゅー、まだだったな」
    「あぁ…」
    「舌入れるやつはしねぇの?」
    「それはまた、明日な」

    カクの言う変な事って、なんなんだろ。
    ルッチはいつも怖いし何考えるか分かんねぇ奴だけど、たくさん話聞いてくれるし、意外と優しいし、それに俺の知らないことをたくさん教えてくれる。カクにもっと、ルッチのいい所を教えてあげて、2人の友情がもっと深まるといいな。

    カク、はやく来ねぇかな。



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    小さな温もりを腕の中に閉じ込め、獣は音もなく笑った。
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