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    らくがきとSSと進捗/R18含
    ゲーム8割/創作2割くらい
    ⚠️軽度の怪我・出血/子供化/ケモノ
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    ※性的な要素を連想させる描写(ごく軽度)
    ダークソウル3 ロザレオ
    普段通りに捧げ物しに行ったレオナールに普段と違うことが起きる話(2024/04/08)
    ※2024/04/14 後半を加筆修正

    ##ゲーム
    ##SS
    ##DS3

    揺らぎ 寝台の前にある篝火が小さくはぜる。それは篝火を寄る辺とする不死が、その火を頼りに渡り歩いてきた印だ。
     ゆらめいた火から現れた足が、すとんと床につく。篝火から現れたのは、「薬指」の二つ名を持つ不死――レオナールだった。
     ここへは幾度やって来ただろうか。その回数など最早覚えてはいなかったが、やることは一つである。彼は「指」としての務めを果たしに、ロザリアの元へと訪れたのだった。
     生まれ変わりの母、ロザリア。深みの聖堂の、通路らしい通路のない奥まった一室に彼女はいる。
     
     レオナールは寝台近くへと歩み寄った。ロザリアは相変わらずで、現れたレオナールに対しても反応はしなかった。何も言わず、寝台の上で虚ろに座り込んでいる。だがそれが彼女というものなので、レオナールは特に気にすることはなかった。
    「ロザリア」
     名を呼び、跪く。しばしののち顔を上げ、彼は道具入れにしまっていた捧げ物を取り出し、ロザリアの前に差し出した。
    「――――……」
     それを認めたロザリアが、俯いていた顔をレオナールのほうへと向けた。緩慢な動作で手を伸ばし、彼の差し出したものに触れる。すると、青ざめた色のそれらは淡い光となって彼女の中へと消えてしまった。
     今回の捧げ物もまた、彼女のお気に召すものであったようだ。レオナールはそれを確認し、束の間の満足感を得た。
     〝青ざめた舌〟。人の口から切り取られ、粗布を巻いて簡単に処理をされたそれらは、どう繕っても「美しいもの」ではない。しかし彼女はそれを受け取る時、時折ほんの僅かに口元を緩ませる――少なくともレオナールには、そのように見えることがあった。
     
     さて、もう用事は済んだ。そう考えたレオナールは、跪いていた体を起こして立ち上がった。ここでなすことといえばいつもこれだけのことで、長居など無用なのである。欲に塗れた獣どもとは違い、彼はロザリアに擦り寄るためにここに来ているわけではない。
     また捧げ物を集めに行かなくてはならない。彼女の騎士として。彼女の苦しみを、ほんの僅かでも癒せるように。
     彼はそのために、その不死の――火の無き灰としての時間を費やしてきた。火の無き灰には「使命」とやらがあると言われているが、彼は誓約者としての務めを果たすこと以外には興味がなかった。
     
     と、レオナールが踵を返した時だった。
    「……む?」
     くっ、と、羽織っていた外套が後ろに引かれたのだ。寝台の端にでも引っ掛けたのか、そう思って振り返ったが、違った。
     外套の端を引いていたのは、ロザリアの手だった。
    「――ロザリア?」
     レオナールの胸中に戸惑いが生じる。彼女がこのような行動をしたのは初めてだった。
     彼女はいつも、まったくと言っているほど無反応なのだ。反応するものといえば、目の前に差し出された捧げ物――「青ざめた舌」くらいのもので、それを誰が捧げたか、そもそも誰が近くにいるのか、そういったことにはおよそ無頓着であるのだと、レオナールは考えていた。
     そのはず、なのに。
    「…………」
     無理に振りほどくのも憚られ、彼は再びロザリアのほうへと体を向けた。ロザリアは何も言わず――舌がないのだから当然ではあったが――彼の外套の裾をやんわりと掴んだままだった。
    「……ロザリアよ、離してはくれないか。俺はもう行かねばならんのだ」
     今まで一度も見せたことがなかった行動。それに対してレオナールの心中に困惑が生じたのは確かだった。それでも彼は努めて冷静に振る舞おうとした。
     しかしやはりロザリアはその手を離そうとしなかった。何か伝えたいことでもあるのだろうか。もしかすると、何かしらの苦痛を感じているのではないか。たとえば、もう舌のないその口が。もしくは、幾千幾万の生まれ変わりの負債を享受して爛れ切った肉体が。
     彼が心を捧げているのは目の前の「器」ではなかったが、けれどもそこに「彼女」が存在するのは事実であるはずだった。であれば、彼女の騎士として。何か出来ることがあるのかもしれない。そう思ったレオナールは、一歩寝台のほうへと近づき――
    「っ……!?」
     ロザリアの手で、寝台の上に引き寄せられた。
     驚きのあまり、引き上げられたレオナールの体が硬直する。人間のそれより大きな、しかしたおやかなロザリアの手が、そっとレオナールの肩に触れる。
    「ロザリア、……一体どうしたというのだ?」
     普段よりも距離が近づいたせいで、ロザリアの大きさがより顕著になる。彼女が人間ではないことは見るからに明らかだが、しかしこのように間近にその姿を眺める機会など今までなく、そもそもそのようなことをしようと思ったこともなく、それが余計にレオナールに焦燥感を抱かせた。
     彼女の指が、手のひらが、レオナールの上をそっと滑る。気まぐれな戯れだろうか。払いのける気はなかったが、しかし寝台からは早く降りて立ち去ってしまいたかった。
     ロザリアに仕える指は自分一人ではない。むしろ、生まれ変わりを求めて舌を捧げに来る者は後を絶たない。つまり、舌を捧げに来た他人にこのような状況を目撃される可能性があるということだ。
     他人のことなどどうでもよかったが、女神の騎士を自負する自分が恥知らずにも寝台に上がっているさまを晒すのは、己の中の矜持が崩れてしまいかねなかった。
    「ロザリア、どうか離してはくれないか」
     レオナールは出来るだけ丁重に彼女に願った。耳は聞こえ、言葉も通じているはず――本人の反応こそほぼないようなものだが、普段の様子からはそう考えられた。にもかかわらず、ロザリアはやはりレオナールを離そうとはしなかった。
     ロザリアの指が再びゆっくりと動き、彼女の顔がレオナールのすぐそばまで近づく。長い黒髪で半ば見えることがなかった彼女の顔が、銀仮面に覆われたレオナールを捉える。
    「ろ、ロザリア――」
     戸惑いを隠しきれなくなってきたレオナールの目が、彼女に釘付けられる。こんなに間近でロザリアを眺めたのは初めてのことで。彼は思わずロザリアの顔をじっと見入ってしまった。
     彼女の指がゆっくりと動き、僅かにレオナールの帽子に触れた。それに合わせて帽子が少しずれ――
     厚く冷たい銀色の仮面に、生まれ変わりの母の唇が口付けられた。
    「なッ――……」
     レオナールの動きが完全に止まる。その硬直した不死人の肢体を、ロザリアの手が慈しむように撫でる。灰の男はひどく混乱したが、しかし逃げ出すことも突き放すこともできなかった。
     ――何故、このようなことを?
     彼は必死に思い巡らせたが、自分が納得できる答えは出なかった。
     そう、気まぐれ。こんなものは気まぐれなのだ。捧げ物を持って来た誓約者への、気まぐれ――ただそれだけに違いない。
     ロザリアの指が、髪が、唇が、厚い外套に包まれたレオナールの体にやわく触れる。
     薄汚れていながらもどこか高貴な意匠の見える外套には、皮膚の露出する箇所がどこにもない。しかし、装束越しに感じ取れる「生まれ変わりの母」の感触は、不死人である彼がとうの昔に忘却していたはずの感覚を燻らせるのに十分だった。
     
     ――穢らわしい。
     
     それは当然、目の前の彼女に対してではなかった。自分自身にだった。女神の「気まぐれ」に動揺し、そのようなものが自分の底でちらつきかけたことに、彼はひどく自己嫌悪を覚えた。
     いつか心を失い腐り果てる不死人とて、思考はする。感情もある。切り掛かられれば痛みを感じるし、血も流す。
     燻ったものはそれらとさして変わらぬものであり、それを行使する器官が壊れて使い物にならなくなっていようが、湧き出る可能性のある感情ではあった。
     ゆえにレオナールは、そういった「生きた人間」のような衝動をしっかりと持ち続けている不死を見ても、心中で軽蔑こそすれど直接糾弾するような真似はしなかった。
     だが、それは他人であればの話だ。他の人間が許しても、いま彼女から与えられているものが純粋な慈愛だったとしても。彼自身の信念が、彼の中に湧きかけた「何か」を抹消したがった。
    「――ロザ……、」
     はく、と息が詰まる。うまく言葉が出てこなかった。女神の白い手指が銀仮面の表面を撫でるように伝い、その仮面越しの感触によってレオナールの思考に僅かな冷静さが取り戻された。
    「……ッ!」
     彼は逃げ出すかのように寝台から転がり出ると、そのままロザリアから距離を取った。動転したせいで浅くなった呼吸のまま、彼は少し離れた鉄格子まで身を引いた。そしてしばし呆然とロザリアを見つめたあと、そばの篝火を使って脱兎の如く寝所をあとにした。
     
     ◆◆◆
     
     暗転していた視界が、「普段の空気」のある世界のものへと変わってゆく。
     重なる他世界への侵入を終えたレオナールは、「元の世界」の地に戻ってきたことを確認して一つため息をついた。
     今回もうまくいった。
     全てが歪んだこのロスリックにおいて、世界は一つではない。存在するものたちそれぞれが、僅かずつ異なる世界を持っている。そしてそのずれて重なり合った世界を渡り歩くことは、自分の「目的」を果たすのに最適であるということを、レオナールは長い不死の時間の中で知っていった。
     その場に腰を下ろし、手にした略奪品に目を落とす。彼の手の中にあったのは、滅多に手に入らない「二枚舌」だった。どうも今回侵入した先にいた「世界の主」は〝騙り屋〟であったらしい。成果は上々と言えるだろう。
     しかし――あの日以来、彼はロザリアの寝室へと訪れていなかった。
     一体どんな顔でもう一度ロザリアの元へ行けばいいというのだ、という考えが、レオナールの中では澱み続けていた。
     今まで起きたことがなかったことに混乱した。それは確かだ。とはいえ、どのような理由であれ彼女を振り切るように立ち去ってしまったことには変わりがない。
     ――自分は女神の騎士、ロザリアの薬指であるというのに。
     何とはなしに、彼は道具入れを開けて眺めた。けっこうな数の「舌」が収まっている。
     寝室にこそ赴かなくとも、最早習慣に等しくなった侵入と略奪によって、それらは集まっていた。
     普段ならこまめに捧げに行くため、今現在のように大量の舌が道具入れの中に収まっていることはまずない。
    「……どうしたものか……」
     彼は小さく呟き、ため息をついた。
     ロザリアの指でありながら、彼女の元に向かうのを憚っている。彼女に仕えるという誓いは微塵も揺らいでいなかったが、どうしても躊躇いを消すことができなかった。いや、臆病になっていたと言うほうが正しいだろうか。
     しかしそれらの「舌」は、あくまでロザリアが必要としているものだ。レオナールが手元に持ち続けていたところで、何の意味もなかった。
     改めて、先日の出来事を思い返してみる。
     ――そもそも彼女は、なぜあのようなことをしたのだろうか。
     正直なところ、彼は思い出したくはなかった。しかしロザリアに仕える身である以上、それについて全く考えないというのは無理があった。
     なぜ、自分を引き留めたのか。なぜ、そばに引き寄せたのか。なぜ、自分に触れようとしたのか――
    「…………」
     レオナールは声もなくため息をついた。考えていても一向に分からなかった。
     彼女は言葉を発することはない。自ら動くこともほとんどないと言ってよかった。受動的で、静謐で、そして神聖な、「母」。そうあるだけの存在だ。
     そうであり続けさせられてきた。
     聖堂から遠く離れた地で一人で考えていたところで、おそらく納得できる理由など見つかることはないのだろう。それに、女神の騎士としての責務をいつまでも放棄していたくはなかった。
     ――ならば、いつまでも時間を無駄にしている場合ではいはずなのだ。
     レオナールは道具入れをしまい、そして立ち上がった。そして、あの暗い聖堂の奥を思い返しながら、彼は小さな骨片――帰還の骨片――をその手で砕いた。
     頭に思い描いたその場所に、その体が送り出されてゆく。
     ――そう、自分はロザリアの指。不死の、火の無き灰としての時間の全てを、彼女のために費やす。
     そう決めたのだから。
     
     ◆◆◆
     
     寝台の前にある篝火が小さくはぜる。それは篝火を寄る辺とする不死が、その火を頼りに渡り歩いてきた印だ。
     ゆらめいた火から現れた足が、すとんと床につく。
     レオナールは閉じていた目を開き、たどり着いた場所を確認した。
     深みの聖堂、「ロザリアの寝室」。
     暗く、しかし静謐なその部屋は、確かに頭の中に思い浮かべた場所だった。
     レオナールは立ち止まったまま、部屋の内部を見まわした。傷んで所々破れた紗のヴェールが彼の目に入る。薄汚れているとはいえ、それは神聖の証しである。レオナールはそれが、とても久しぶりに見るものであるように感じられた。
     いや、何をぼんやりとしているのか。こんなことをしにここに来たわけではなかっただろう。レオナールは小さく首を振ると、やや歪んだ鉄格子の奥へと進んでいった。
     傷跡を知られぬための厚い仮面と装束は、彼の緊張を覆い隠すのに少しばかり役に立った。
    「――――……」
     果たしてロザリアはそこにいた。
     以前と何も変わりなく、何も話すこともなく、ただ寝台の上に虚ろに座ったままだった。
     レオナールに対しての反応も特に見られない。それもまた、以前の彼女と同じだった。
    「……ロザリア」
     レオナールは彼女の名を呼び、跪いた。しばしののち顔を上げ、道具入れにしまっていた捧げ物を取り出し、ロザリアの前に差し出した。
    「――――……」
     それを認めたロザリアが、俯いていた顔をレオナールのほうへと向けた。緩慢な動作で手を伸ばし、彼の差し出したものに触れる。すると、青ざめた色のそれらは淡い光となって彼女の中へと消えていって――それから。
     
     ロザリアの口元が、僅かに緩んだ。
     
    「……っ!」
     ――笑った。
     少なくとも、彼にはそう見えた。レオナールはそのことに、思わず息を呑み、しばし彼女の顔をじっと見た。
     そうして彼女の顔を眺めていると、ロザリアがゆっくりと手を伸ばしてきた――レオナールのほうへ。レオナールはそれに気づくと再び警戒し、身構えた。しかし、彼女がそうしようとしたことは制止せず、ただ彼女の様子をうかがった。そっと伸ばされたロザリアの白い手の先が、彼の仮面に僅かに触れる。彼は跪いたまま、女神の接触を甘んじて受け入れた。
     今度は、彼女に体を引き寄せられることはなかった。だが仮面に触れた指先は離されることはなく、そのままつい、と表面をなぞってゆく。その動きはあくまで穏やかで、あたかも子を愛おしむ母のようだった。
     レオナールの中の警戒が徐々に溶けてゆく。そして、解けることのなかった疑問が少しずつ別のものへと変わってゆく。
     ――もしや彼女は、自分の体の古傷を気にかけている?
     仮面に触れていた指先が、レオナールの首筋を伝ってゆっくりと降りてゆく。白く華奢な手のひらはレオナールの肩で止まり、そのまま彼の肩を柔らかく包んだ。
     長い髪に覆われて見えない、しかし確かに存在する女神の眼差しが、レオナールをじっと捉える。彼女はそこで動きを止めた。
    「……ロザリア」
     その見えない視線は、何かを問うているようにも感じられた。そう、まるで――「何も望みはないのか」と。
     レオナールは自身の肩を包んでいるロザリアの手に自分の手を重ね、小さく首を振った。
    「違うんだ、ロザリア。俺は……」
     女神は動かない。だが、見えない視線も外されなかった。何の反応もないが、少なくとも自分の言葉に耳を傾けているのだと、レオナールには思えた。
     レオナールは彼女に舌を捧げ続けてきた。何十、あるいは何百かもしれない。いずれにせよその数はもはや数えていない。だがそれを捧げる時、彼は決して女神に望みを告げることはなかった。自分の望みを告げるよりも、他にやるべきことがあるからだ。
     だがきっと、それは「異常」なのだろう。今まで彼と出会ったことのある「ロザリアの指」は、そのことごとくが望みを持っていた。生まれを呪う者。自身の醜さを受け入れられない者。他者を嫉み、その上に立つことだけに腐心する者。皆、穢らわしい俗物でしかなく、……そしてロザリアにとっては、それが「普通」なのだ。
     だが、だからこそ。
    「俺は貴女に何も望んでいない。俺はただ、……貴女の騎士であるだけだ」
     そう言うと彼は、見えない視線の先をまっすぐ見つめ返した。言葉に嘘偽りはなかった。少なくとも彼は心からそう思っていた。彼は口を閉じ、女神の審判を待った。
     するとしばらくのち、ロザリアは彼に触れていた手をゆっくりと元の場所に戻した。そして、いつものようなやや俯いた姿勢へと戻った。
     ……それ以上、何もなかった。
     普段と同じ、彼女だった。
     それを認めたレオナールは、自分の中に燻り続けていた感情がようやく落ち着きを取り戻していくのを感じた。
     
     ――結局、先の出来事は「なかったこと」にはならない。そして、あの時燻った感情も。
     しかし、それを無理矢理忘れ去る必要はもうなかった。
     彼の抱いた忠義は、そのようなことで壊れてしまうほど脆いものではなかった。
     なぜならロザリアは「女神」で。そしてレオナールは彼女の「指」で。何があろうと、それが変わることなどないのだった。
     ならば、それだけで十分だった。そう安堵したレオナールは、銀色の仮面の下で小さく笑みを浮かべた。
     
    「ロザリア」
     名を呼ぶ。生涯仕えると誓ったその女神の名を。
     それに応じるかのように、彼女がかすかに顔を上げた。レオナールは手を伸ばし、女神の白い手を取った。彼女はそれ以上動く様子はなく、虚ろに座ったままだったが、レオナールはそのまま彼女の手を自分の元に寄せた。
     決して外されることのない銀の仮面が、ロザリアの手の甲に触れる。
     そして数秒ののち、レオナールは顔を上げ、持ち上げていたロザリアの手を肉塊の上に戻した。
     ロザリアの反応は、なかった。けれど、それでよかった。
     尋常ならざる力を宿すゆえに、あらゆるものから欲望を、負債を、業を、押し付けられた女神。けれども仮面の不死は、彼女の騎士となることを誓った。
     何の労いの言葉もなくとも。他の誰も、彼の誓いに賛同しなくとも。そして女神を救うための術が、他者には決して許しがたいものであったとしても。
     その誓いだけであったのだ。灰である彼が、心から「自らの『使命』だ」と認めることができたのは。
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