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    🥗/swr

    らくがきとSSと進捗/R18含
    ゲーム8割/創作2割くらい
    ⚠️軽度の怪我・出血/子供化/ケモノ
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    2018/09/14 過去作投稿
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    7話中盤ごろ。
    モルスの断崖へ向かう途中の巨神獣船で会話するレックスとメレフの話です。
    ※カップリング要素はありません。

    ##SS
    ##Xb2
    ##Xenoblade

    Elpis太古の時からアルストの中心にそびえ立つ世界樹は、その日も変わることなく清廉なる翠玉色の光輪を纏っていた。千切れた雲の切れ間から煌々と輝く月は白い。それと共に満天の星が空を彩っていたある真夜中、死の名を持つ断崖へと向け進路を進めるスペルビアの巨神獣船のデッキの上には、黙したまま世界樹を見つめている少年の姿があった。
    「――レックス?どうした、こんな時間に」
    ぬるい微風に吹かれているその少年の名を呼んだのは、祖国の皇帝から勅命を受け彼の旅に同道していたスペルビア特別執権官、メレフ・ラハットだった。
    「メレフ……?」
    名を呼ばれたレックスは、声のする方へと体を振り向けた。金の瞳が空を彩る淡い光を映して僅かに煌めいた。
    「いや、ちょっと寝つけなくて。そういうメレフこそ、何かあった?」
    メレフは問い返してきたレックスの元へと静かに歩み寄ってゆく。
    「まあ、君と似たようなものだ。目が覚めてしまったのでな、夜風に当たろうと思っただけだ」
    「そっか……」
    メレフの返答を聞いたレックスは再び黙り、世界樹へと目を向けた。アルストでも高度な技術で生み出されたスペルビア軍所有の巨神獣船は、安定した速度で雲海の上を進んでいる。その彼方には、命ある者は滅多に訪れる事がない世界樹の麓――大空洞の姿が見え始めていた。メレフはその遠くに霞む雲海の岸壁を一瞥すると、どこか緊張を帯びた横顔で佇んでいる少年に優しく呼びかけた。
    「レックス」
    レックスは世界樹の方を向いたままだった。返答はなかったが、彼はメレフを邪険に思っているのではなく、ただ胸中に交錯する想いに集中していたのだろう。瞬いた金の瞳がそれを物語っていた。
    「まだ……落ち着きそうにないか?」
    穏やかな声が風に流れていった。その言葉を聞いたレックスが、再びメレフの顔を見やる。よく見てみると、向き直った彼の手の中には白い剣の柄が握られていた。レックスは少しだけ眉を潜め、黙ったままゆっくりと頷いた。
    「……どうにも気持ちが先走ってるんだ。この船に乗ってからも、早くモルスの断崖にたどり着けばいいって……そんなことばっかり考えてる」
    少年が小さく笑う。白い剣――だったものの柄が、もう少しばかり強く握りしめられるのが見えた。柄の先にある翠玉色のクリスタルが淡い光を揺らめかせた。メレフはもう半歩彼に近づき、一つ息を吸い込んだ。
    「大丈夫だ、レックス」
    凛とした声が真夜中の静かなデッキに響いた。メレフの右手が、まだ彼女より小さな少年の肩に触れた。
    「案ずることはない、君の側には私がついている。私だけではない、ニアも、ジークも、トラも……皆が」
    「……メレフ」
    レックスは小さく息を呑んだ。その丸く大きな金の瞳が瞬いて、メレフを捉えた。メレフは微笑し、言葉を続けた。
    「今は不安で、逸る気持ちもあるだろう。だが、心配は要らない。ホムラとヒカリ……今の君と私達が力を合わせれば必ず救い出せるはずだ」

    ――メレフは信じた。彼が再び立ち上がることを。数奇なる運命に導かれ、天の聖杯のドライバーとなった少年。まだ年若く、けれども仲間想いで、己の信じたもののためならばひたむきに進むことができる少年。彼はシン達になすすべなくホムラを連れ去られ、己の無力さに打ちひしがれた。そして全てを投げ出して、道を共にする仲間達の前から姿を消そうとすらした。
    けれども彼はアデルが遺した試練を乗り超え、そして彼にだけ分かる「何か」を得た。メレフはその正体を知り得なかった。だが「何か」を得た少年の瞳には、確固たる信念の光が映し出されていた。故に英霊の間で皆に向け言葉を紡いだ彼の姿に、メレフはある一つの確信を得たのだ。

    「――メレフの言葉は、いつも力強いね」
    真剣な眼差しでメレフを見つめていたレックスの顔が少しだけ綻んだ。瞳に揺らいでいた微かな不安は徐々に姿を消し、普段の彼らしい希望の色へと変わっていった。レックスは瞳を閉じて一つ深呼吸するとメレフに手を差し伸べ、言った。
    「ありがとう、メレフ。……俺、必ずホムラとヒカリを取り戻してみせる。そして、皆と一緒に楽園に行ってみせる。だから改めて言わせて。力を、貸してくれるかな」

    ――眩しい。勇敢で希望に満ちたその少年の姿は誰よりも眩しかった。メレフはその瞳に強く惹きつけられた。

    「ああ」
    メレフはレックスの手を取った。真白の雲海の上を渡る微風が二人の髪を揺らしていった。メレフはまっすぐと彼を見つめ、深く頷いてみせた。

    「レックス。私は、君が願うことをやり遂げられると信じている。そのためなら私は君に力を貸すことを厭いはしない。……だから見届けさせてくれ、君のその行く末を」
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